第34話 塔の下:登り始め
おほー!
塔にウォールロケットが突き刺さってしまった。
近づいてみたら、めちゃくちゃでかいな、塔。
この中に、皇帝や魔王もどきたちや、魔王スキル持った奴らの教育施設みたいなのも一緒にあるらしい。
ならばでかくて当たり前だ。
「うっ」
「どうしたレンジ」
「ロケットが消える!!」
「な、なんだとおーっ!!」
その通り、ウォールロケットが薄くなって消えていく。
お前は良い働きをしてくれたなあ……。
かくして、俺たちはバラバラと落ちた。
「ぬうおおおお!! ハリケーンビーム!!」
下方に、思いっきり風のビームをぶっ放す。
身に纏わずに拡大すれば、人間数人なら軽々と浮かせるほどの威力だ。
「この間に、レンジ、新しいロケットを作れ! 穴から塔の中に突っ込むぞ!」
「おう!! ブラストロケット!!」
レンジが連続で生み出すロケットが、魔女たちを乗せて塔の中へと突っ込んだ。
俺とストークも、すぐさま続く。
だが、ここでやはりというか、妨害だ。
「させんぞ、アストロノーツ!」
「よもや、塔にまで貴様らの侵入を許すとは!」
「グスタフ、ベヘモス、イフリースがやられたというのか! 信じられん! たかが魔女の騎士ごときに!!」
帝国の魔王もどきどもだ。
ここは、何人こういうのがいるんだ?
というか、こいつら全員がかつて魔王スキルを得て、帝都に集められた連中だとしたら……。
それなりに、挫折して地上に残った奴がいておかしくないんだよな。
今回のお相手は、青い揃いのスーツに身を包んだ連中が三人だ。
背格好はそれぞれ違うみたいだが、さっきの連中にも言えるが、魔王もどきは全員、見た目が十代だ。
これって、魔王スキルに目覚めた時から年を取らなくなるってことか。
まあ、どうでもいいな!
「我は刃の魔王ソーディアン! アストロノーツ、貴様らをここで分断する!」
剣を携えたその男の宣言通り、三人の魔王もどきに邪魔され、俺たちは別々の穴に飛び込まざるをえなかった。
まさかここでバラバラになってしまうとは。
「さっさと合流しないとな!」
「そうだねえ。でも、偽物の魔王とは言え、一人でやれる? オービター」
「ああ。なんかこいつらの癖みたいなのは分かってきた。こいつらさ、人間なんだよ」
塔の中に着地した俺は、エレジアと言葉を交わす。
そうしながら、思考を纏めて行った。
人間らしさを捨てれば、キャロラインみたいに暴れるだけの怪物になる。
人間らしさを残したままなら、さっき倒した三人の魔王もどきみたいな、中途半端な強さになる。
なるほどな、どっちにせよ、使い勝手が悪そうだ。
こいつはどうなんだ?
目の前に滑り込んできた、剣を構えた男を見据えて考える。
「私は他のロイヤルガードとは違うぞ! 最初から全力で行く! 刃の魔王、戦闘形態!!」
刃の魔王ソーディアンが叫ぶと、奴の全身が刃物でできた鎧に覆われていく。
こいつはどうやら、完全に人型になるタイプらしい。
「行くぞ、アストロノーツ!!」
「そのアストロノーツってのは何なんだ……よっ!」
凄まじい速度で斬りかかってくるソーディアンを、真っ向から炎のビームで迎え撃つ俺。
俺の言葉に、奴は答えない。
「問答無用!! お前の戦い方はその熱線か! ならば接近戦は不得手だろう! 私の勝利だ!!」
「お前ら、情報を共有してないのな!? 遠距離タイプはレンジだっつーの!」
炎のビームを弾きながら襲いかかる刃に、俺は剣を抜きながら応戦した。
剣の全身に、雷のビームを走らせる。
「ぬおあーっ!?」
刃がぶつかりあった瞬間、バチバチと電流が走る。
慌てて、刃の魔王は距離を取った。
「おのれ、ならばこうだ! 刃は遠距離からでも届くのだ!」
ソーディアンはそこから、全身の刃を射出してくる。
おお、超小型のロケットみたいな感じだな!
「なんの! 俺も全身からビームが出るんでな!」
体中から、雷のビームを放ちながら、刃のロケットを次々に撃ち落としていく。
しかし、敵の攻撃をこうして受け止めていると、前進ができんな!
「オービター。敵のやり方を盗むの、君の得意技でしょ!」
そこに投げかけられたエレジアの言葉で、俺はハッとした。
そうだった。
俺は、相手のやり方を見て、体感すると、なんとなく使えるようになるのだ!
俺のポケットから、ビームを纏ったロープが飛び出す。
それが地面に飛び散った刃を巻き取りながら起き上がる。
「な、何をするつもりだ! なんだ、何なのだその力は!!」
「俺のスキルはビーム! ビームを纏わせれば何でも動かせる。そして……!」
巻き取った刃にビームを込める。
あいつの、刃のロケットを再現するイメージだ。
「何でもビームにできるんだよ! おら、いけえ刃ビーム!!」
次の瞬間、刃が真っ白なビームになった。
それが、何本も続けて、ソーディアン目掛けて奔っていく。
「ぐおおおおっ!?」
ソーディアンの両腕から巨大な剣が生え、これを防ぎ止める。
だが、その表面には亀裂が走る。
こいつ、ソードウォールと同じタイプの技も使うか。
だが、どこにも目新しい要素はない!
既に、俺はソードウォールを見下ろす高さまで、ブラストビームで跳び上がっていた。
「連続ビーム……! フレアソードビーム! ブリザードソードビーム! ライトニングソードビーム! ハリケーンソードビーム! メタルソードビーム!」
五つの属性を持つ中級魔法ビームを、立て続けに叩き込む!
この全てに、ガイドとして同属性の下級魔法ビームを放っている。
しっかりガイドしてやれば、中級以上のビームは百発百中。
「ぬうううわああああああっ! わたっ、私がこんなところでっ! こんな、こんなっ、ウグワーッ!?」
全てのビームを浴びたソーディアンは、天を仰ぐような姿勢を取ると、次の瞬間には粉々に砕けて消えた。
キラキラ輝く粉末が飛び散り、やがて空気に溶けて消えていく。
「やったねえ、オービター!」
「おう! こいつら、実戦経験が浅いっぽいからな! 戦い方が拙いから隙だらけだ」
あれ?
塔に俺らみたいな不明スキル持ちが飛び込んでくるのは初めてなんだっけ?
前代未聞とか言ってたもんな。
なら、これって最大のチャンスじゃないか。
魔王もどきを全部ぶっ倒して、この塔をへし折ってやる。
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