第20話 剣からビーム:突破

「気休めかもしれないけど……"広げた魔力のヴェールにて、我らに仇なす攻撃を食い止めよ。魔力障壁マジックウォール”!!」


 エレジアが俺たちの周囲に、守りのための壁を展開する。

 ありがたい。

 中級魔法は、下級以下に比べると複雑でいろいろな事ができそうだな。


 今度教えてもらおう。

 今は、オヤジさんから受け取った剣と、そして手持ちのビームで戦うのみだ。


「行くぜ!!」


 魔王アレクライスめがけて、飛び降りる俺。

 ブリーズビームによる姿勢制御も万全だ。


『命を捧げよーっ!!』


 魔王が叫びながら、俺に光をぶっ放してきた。

 おお、魔力障壁がちゃんと防いでるぜ。


 これ、どういう仕組で人間を分解するんだろうな?

 というか、もしかしてそれが、この魔王とやらの能力か。


「まあいい! 行くぜ! ソード!! ファイアーボール! ビーム!!」


 空中で、縦横に剣を振り回す。

 切っ先の走る動きがそのままビームになり、魔王にぶつかると爆発した。


『ウグワーッ!! おのれーっ!!』


「あっ、普通に効いてる!!」


 ピカピカ輝く魔王アレクライスは、表情を怒りに染めて俺を睨んだ。


『食ってやる! 貴様を食ってやるぞおおおおおっ!!』


「食われねえよ! って、やべえ、魔力障壁がなんかパリパリ言ってる」


「オービター!! 魔力障壁にも守れる限度があるから! 魔王っていうのがどれだけ強いか、私もわかんないからねー!!」


「なんだとう!?」


 エレジアがとんでもない事を言う。

 ええい、これはやばいではないか。


「死ね! さっさと死ね! ビーム! ビーム!!」


 剣を振り回してビームをぶっ放すが、俺の焦りが反映されているのか、さっきほどの威力がない。

 魔王の表面に傷はつくが、ダメージまでは行ってないような……!


「待たせたな」


「おめえ空飛ぶとかずるいんだよぉぉぉぉ!!」


 ストークとレンジが到着だ。


「待ってましたァ!」


「それで、こいつは何だ?」


「魔王スキルの成れの果てだ」


「ほう」


 ストークが目を細める。

 既に、レーダーのスキルを使っているようだ。


「奴から不可視の手が僕たちに向かって伸びている。一歩下がれ」


「お、おう!」


 すると、目の前の地面がゴリッとえぐれた。

 魔王が悔しそうな顔をする。


 なーるほど。

 あいつ、見えない手を伸ばして相手を拘束し、食ってたのか。

 その力の一部が、あの光なんだ。


「よくわかんねえけどよ! ロケットでぶっ飛ばしゃあいいんだろ!!」


「レンジは分かりやすくていいなあ」


「おらあっ! ファイアボールロケット!!」


 いきなりぶっ放す、レンジが今一番お気に入りの一撃。

 生まれでたロケットが、魔王めがけて突き進む。


 だが、魔王も馬鹿ではない。


『見え見えなり!! かーっ!!』


 口から光を放って、ロケットを空中で撃破した。


 さて、この光る卵の姿をした魔王だが……。

 どうやら、現状では動けないらしい。


 これはどうとでも攻められるだろうか……?


「うわ、化け物がいる!!」


「帝国の手の者だな!」


「やっつけろー!!」


 あ、バカ!

 村の連中が、武器を持って魔王に襲いかかっていった。

 魔王アレクライスが、にんまりと笑う。


『来たァ! 我の食事が来たァ! いただきまあーす!!』


 いただきますを言うとはお行儀がいいな!

 だが、向かってきた村人は、次々とアレクライスの見えない腕に掴み取られる。

 そして、光に分解されると吸い込まれていく。


「う、うわー! なんだこいつ!」


「撤退、撤退!!」


『もう遅いぞ! 我、進化せりぃぃぃぃぃぃ!!』


 卵の形をした胴体から、蜘蛛のような八本の足が突き出した。

 卵蜘蛛だ!


 アレクライスが移動能力を手にしたぞ。


『これで動き回れる! ここにいる全ての命を食らいつくせる! わはははは! わははははは! 我はハングリーなりぃぃぃぃぃ!!』


「どうしようもねえ魔王だこいつ!!」


「うおおお! ロケットロケットロケット!」


「レンジ、さっきの俺とおんなじことするな!? ほら、焦ってぶっぱなしたから全弾避けられてるじゃねえか!」


「回避能力があるな。奴め、僕たちを無視して、村の人間を食い尽くすつもりだぞ。人間を食うほどに進化するのか? ならば、まずいことになるな」


「冷静すぎるだろストーク」


 冷静に、まずいな……なんて言ってても何も解決しない。

 やれることを探さねば!


「オービター! 何かあれに追いつく方法はねえのか!?」


「飛んで追いかけたらー!」


 オヤジさんとエレジアの声が聞こえる。

 いや、飛んでも、ブラストビームでは一分しか持たないし、俺しか飛べない。

 集団で飛べる手段なんか……。


 ……。

 じっとレンジを見る。


「お、な、なんだよ?」


「ブラストロケット、出してくれ!!」


「な、なんだとお!? 俺に命令するつもりか!」


「レンジのブラストロケットしか、この状況を解決できないんだ! 頼むぜ!!」


「えっ、俺しか……!? そ、そいつは仕方ねえなあ! ブラストロケットォォォォォッ!!」


 レンジが生み出す、風のロケット。

 俺はこいつに飛び乗った。


「レンジ、ストーク、乗れ!!」


「僕もか……?」


「お前のレーダーがなけりゃ、あいつの攻撃が見えねえ!」


「そうか。そうだな……!」


 ストークが後ろに乗った。

 そして、レンジを引っ掛けてぶら下げていく。


「うおおおおお!? なんで俺はぶら下げられてーっ!!」


 乗れるスペースが三人ぶん無いからだな。


 そして、誘導は俺がブリーズビームで行う!


「ブリーズビーム! こっちだ!」


 俺が指し示す方向へ、飛翔するブラストロケット。


「気付かれた。来るぞ。前方、道を覆い尽くす範囲で不可視の腕が飛んでくる!」


「おっしゃ、なら上空だな! ブリーズビーム!」


 空にめがけてビームをぶっ放す。

 ロケットはそれを追って急上昇した。

 体に、すげえ重圧がかかる。


 魔王の腕はこれについてこれない。

 俺たちのさっきいた場所を破壊しながら、見えない腕がのたうち回っている。


「レンジ! 適当に下にロケットばらまけ!」


「おうよ! ファイアボールロケット! ロケット! ロケット!!」


 落下していくロケットが、道で連続して爆発する。


『ウグワーッ!! 我の腕がーっ!!』


 離れたところから、魔王の叫び声が響いた。


『おのれ、おのれーっ!!』


「次、腕の数は三本! 上空に伸ばされてくるぞ!」


「よしきた!」


「右!」


「おう!」


「左!」


「よし!」


「正面!」


「レンジ、ぶちかませ!!」


「アイシクルロケットッ!! 死ねええええ!」


 不可視のはずの腕は、凍りついた瞬間にその姿を現した。

 こいつは、魔王と同じ顔がついた触手みたいなもんだ。

 大変おぞましい。


 こいつを、ソードビームで叩き切りながら俺たちは直進。


『お前ら、お前らはあああああっ!! 我は、我は人間を食ってもっと、もっと大きく育たねばならないのに!! お前らはあああああっ!!』


 卵の蜘蛛となった魔王が、叫びながら俺たちを睨んでいる。


 なおも、見えない腕が何本も伸ばされてくるようだ。


「ストーク!」


「周囲全面が腕だ! どうする?」


「頭、引っ込めろ!」


「無茶苦茶をする男だ」


 ストークが笑いながら、ロケットの上に伏せた。

 俺は立ち上がって、剣を振りかぶる。


「薙ぎ払え!! ソード・ブラストウインド・ビームッ!!」


 ロケット上で一回転しながら、剣を振り回す。

 俺の周囲全てに、強烈な風のビームがぶっ放された。

 それが、魔王の腕を連続で切断していく。


『ウグワワーッ!!』


「そして行くぜ! ファイアボールビームッ!!」


 放った真っ赤なビームが、魔王の表面で爆発をする。

 そして爆発し続けるビームめがけて、ブラストロケットが突っ込んでいくのだ。


「レンジ、ありったけを出せ! アイシクルもファイアボールもブラストも全部だ! ここなら、何をぶっ放しても全部当たる!」


「おうよーっ!! ロケットロケットロケット!! 全部まとめて、持ってけロケットーッ!!」


『ウグワワワワワワワーッ!?』


 魔王の表面で、連続して爆発、氷結、粉砕!

 衝撃のあまり、金色の卵の殻にヒビが入った。


「終わりだぜ、魔王!! ソード・ブラストウインド・ビーム!!」


 縦一文字に振り下ろした一撃が、剣閃がビームになる。

 それは割れかけた魔王の表面に炸裂すると……。


 パリーンッ!!


 魔王を粉々に砕いたのだ!


『ウグワワワーッ!! 我がこんなところでーっ! 生まれることもできずに! ウグワーッ!!』


 魔王の胴体に突っ込む、ブラストロケット。

 そのまま貫通して、突き抜けた。


 俺たちの背後で、魔王が大爆発を起こす。


 さらばだ、魔王アレクライス!


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