第14話 コンビ:ネーション
「私が壁を作るから……。あんまり喧嘩しないでね……。ソードウォール……!」
抜き放った剣を、ラプサが地面に突き刺す。
すると、周囲から何本もの巨大な剣が飛び出してきて、まさしく壁のようになった。
「すっげえ。なんだそれ!?」
「わははは!! ラプサの魔法剣だよ! オレサマの師匠みたいな女だからな! そりゃあやるに決まってるだろ! おら、俺が仕掛けるぞ!!」
レンジが吠えた。
俺よりも先に、ゴブリンの軍勢目掛けて飛び掛かっていく。
「おらあああああ!! ファイアボールロケットォォォォッ!!」
レンジが振りかぶった腕に、真っ赤な筒状のロケットが出現した。
やつはこいつを、思いっきりぶん投げる。
投げるのかあ!
自分から飛んでいきそうなのにな。
投げられたロケットは、ゴブリンの群れの真ん中に突き刺さると、爆発した。
「よっしゃあ!! 千匹くらい殺したか!?」
「いやあ、こりゃあ十匹がせいぜいだな。お前、狙いが甘いって」
「なんだとお!? おらおらあ! ファイアボールロケット! ロケット! ロケットぉ!!」
次々にロケットが生み出され、飛んでいく。
魔法の力を物質化して飛ばすのは凄い。
凄いんだが……。効率が悪くないか、このスキル。
魔法なり力を、まるごとビームに変えてぶっ放す俺のスキルは、言うなれば破壊の権化みたいなもんだ。
だが、そこにレンジは物質化というワンステップが挟まれる。
「ちっくしょう!! こいつら、動きがいいぞ!? ただのゴブリンじゃねえ!」
「あ、それは俺も思った。なんつうかよ、統制が取れてるよな」
俺たちに向かって槍を投げつけてくるゴブリン。
一斉にだ。
俺はそいつを、ティンダービームを横薙ぎに払って焼き尽くした。
「ゴブリンって、集団で規則正しく動くのか? なんか、もっとバカな奴らだって聞いたことがあるんだけどよ」
「は? 俺が知るか! ゴブリンなんざ見るのも初めてだわ!」
「レンジに聞いた俺がバカだったなー」
俺も、ゴブリンどもにアイシクルビームを叩きつけて氷漬けにしていく。
だがこいつら、凍りついた仲間を盾にしながら進軍してくるな。
異常に統率が取れている。
これがゴブリンロードに率いられているってことか?
「ぜえ、ぜえ、この、ゴブリンどもめ、ちょこまかと」
「うわっ、レンジがもう肩で息してる」
魔法を物質化するだけに、体力の消耗が激しいのか?
まずいなあ。
こいつがぶっ倒れたら俺一人で相手をすることになる。
ゴブリンロードとやらが姿を見せてもいないのに、一人脱落するか?
「レンジ、ここは協力だ。協力。不明スキル持ち同士のよしみってことでだな」
「いーやーだーねーっ!! お前がオレサマにお願いします舎弟になるから手伝ってくださいって言ったら手伝ってやら……ねえ!! それでも手伝ってやらねえーっ!!」
バ、バカだこいつーっ!!
本物のバカだぞ!!
俺たちがそんなやり取りをしている間に、ゴブリンどもは剣の壁に取り付いている。
粗末な武器が、ガンガンと剣の壁を叩いている。
「早くして……。私、一対一と防御以外は苦手なの……」
蚊の鳴くようなラプサの声がする。
うーん、今にも死にそうだ!
だが、レンジの手を借りようにもこいつはバカだしなあ!
どうやって手伝わせる?
俺は考えながら、アイシクルビームを放った。
そこに、レンジがロケットを重ねてくる。
相殺された。
「おおーい!? アホかてめえ!!」
「わははははは!! 好き勝手はさせねえぞ!! オレサマは! お前に勝つんだからなあっ!!」
このひねくれ者め。
……ひねくれ……?
「あー、困ったなあー。次に俺が繰り出すファイアボールビーム、レンジのロケットで邪魔されたら本当に負けちまうぜえー!!」
「ぎゃはははは! てめえの弱点を口にするやつがどこにいるかよー!! 邪魔してやるぜー!!」
「や、やめーろおー。ファイアボールビーム!」
「ファイアボールロケットーっ!!」
ロケットが俺のビームを追っていく。
よし、誘導成功!
俺のめちゃくちゃわざとらしい芝居でも、しっかり引っかかるんだな!
そしてここで、驚くべきことが起きた。
ロケットが炎を纏い、俺のビームが指し示す先へと直進していくのだ。
「これってまさか……!」
俺はビームを動かしながら、ゴブリンが大量にいる場所を指差す。
「重ねがけ……ティンダービーム!!」
真っ赤なビームが、ロケットのケツに突き刺さった。
ファイアボールロケットの尻が、真っ赤に燃え上がる。
ロケットは炎を吐きながら、加速した。
まさに超加速!
ゴブリンが反応する暇もありはしない!
空を切るロケットが、ゴブリンの群れに突き刺さった。
そして、今までにない規模の大爆発を起こす。
「よっしゃ千匹!!」
「千匹はないが、百匹以上巻き込んだな……! ゴブリンども、やっと混乱し始めたぜ! ここからは俺の出番だな! ブラストビーム!!」
足の裏からビームをぶっ放し、俺は飛び上がる。
これで、戦場を一望にできる。
ゴブリンは急速に、その陣形みたいなのを整えていく。
この動きの中心に、何かいるんじゃないか?
いるか、いるか?
いたっ!!
ゴブリンどもを肉壁にして、大柄で鎧を着込んだやつがいる。
あれがゴブリンロードだろう!
「させねえぞオービター!! 俺の手柄だあ! ブラストウインドロケット!!」
レンジが叫びながら、風をまとったロケットを生み出す。
それは、あらぬ方向へと飛んでいこうとするのだが……!
「ブリーズビーム!」
俺のビームがゴブリンロードを指し示すと、急速に方向転換していく。
やっぱりだ。
俺のビームで、こいつのロケットを誘導できる!
さらに、ロケットには物を載せられるとか言ってたな。
俺は飛翔するロケットの上に着地した。
おお、こいつはいい!
「てめえ、オレのロケットを踏み台にしたーっ!?」
レンジの悲鳴は無視だ無視。
ロケットが突き進む先で、ゴブリンの群れとゴブリンロードがパニック状態になっている。
俺は奴ら目掛けて、両手を構えた。
全ての指先から、ビームを放つイメージ!!
「ファイアボールビーム、十倍!!」
十指が真っ赤なビームを放った。
それが、当たるを幸いと周囲を爆発に巻き込んでいく。
「ゴブッ! ゴブゴブゴブゴブゴブーッ!!」
ゴブリンロードが何かを叫んだ。
恐らく、こいつもスキル持ちだったんだろう。
統率とかそういうやつだ。
しかし、お前は一人。
こっちは俺とレンジだ!
「死ねえ!! 合掌・ファイアボールビームッ!!」
組み合わせた手から、ばかでかいファイアボールビームが出た。
そいつは周囲のゴブリンを巻き込みながら突き進み、ゴブリンロードへと炸裂する。
爆発!
「ゴブグワーッ!!」
ゴブリンロードの叫び声が聞こえた。
これでゴブリン討伐完了だ!
いけるじゃねえか、不明スキル同士のコンビネーション!
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