第8話 盗賊無惨:ビーム

 説明しよう。

 盗賊とは!


 一般的に不明スキルを持って生まれてきて、村を追い出されて、そして寄り集まって悪事を働くようになった集団だ。

 つまり、エレジアに会えなかった俺だな……!


 そう考えると同情心も湧いてくる……。


「あそこに女がいるぜ! 隣の男は邪魔だ、殺せ! 女は捕まえていいことしようぜ!!」


「死ね、隣の男ーっ!!」


「死ぬのはお前らだマッドビームっ!!」


 前言撤回!!

 死ね、盗賊ども!!


 俺はぶん回した鍋となまくら剣から、泥のビームをぶっ放す。

 そいつは襲ってきた盗賊にぶち当たると、奴らを吹き飛ばしながら高速で乾燥し、真っ黒な泥の束縛になる。


「ウグワーッ!?」


「ウグワワーッ!? 動けねええええ!!」


 マッドビームは致命傷は与えないが、固まって相手を動けなくさせるのだ。

 人道的ビーム。

 まだ俺の心にも優しさが残っていたようだ……。


「すげえ上物の女だ!」


「捕まえろー!!」


「オービター、私が標的にされてるんだけどっ!? ええい、ファイアボール!!」


「ウグワーッ!」


 ぶっ飛ばされる盗賊たち。

 だが、中にはスキルを使って攻めてくるやつもいる。


 一人は空中をすいすい泳いでくる。なんだあのスキル。


「見たか俺のスキル、エアスイム!! 空中を泳ぐだけのスキルだが、空の上からこうして鉄の玉を降り注がせて相手を殺すのよ!!」


 危ねえ!

 さっきまで俺がいたところに鉄球が降ってきた。

 わはははと笑う盗賊。


「どうだ、ここまでは剣は届くまい!」


「ビームなら届く! 剣ビーム!!」


 ばこーんと剣閃と化したブリーズビームをぶっ放したら、空を泳ぐ盗賊が真っ二つになった。


「ウグワーッ!!」


「やべえ。まともに人体に当たったら一撃必殺じゃねえか」


「ただの風なのに、収束されるとエアカッターの魔法みたいになるのね。だけど、風の密度も威力も段違い」


 エレジアの説明を聞いて、俺は納得した。

 俺のビームは、一般人相手にするにはちょっと強過ぎる。


 魔女狩りとかあのレベルの相手用だな。

 ならばここは……。


 俺はロープを握りしめ、振り回した。

 ロープにビームが宿り、先端に結わえた手袋へと向かっていく。


「行くぞ、盗賊ども! 薙ぎ払え!! マッドビームッ!!」


 泥のビームが放たれる。

 それは盗賊の群れに炸裂すると、俺がロープを振り回す動きに合わせて、右から左へ薙ぎ払っていく。


「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」

「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」

「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」

「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」

「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」

「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」


 十八人くらいがふっ飛ばされ、泥で拘束されて倒れた。

 結構な数がいたな。


 残りは命からがら、アジトへと逃げ帰ったようである。


「うおー……。俺、すげー」


 泥だらけになって転がる盗賊の山を見て、俺はしみじみと呟く。


 すっかり辺りは静かになり、ゴウゴウ、パチパチと音を立てて宿場が燃えているだけになる。

 って、燃えてるじゃん!!


「うおお! ウォータービーム!! 薙ぎ払え―っ!!」


 俺は燃えている家に向かって、水のビームをぶっ放した。

 あまりの勢いに、家々の一部が壊れるが、圧倒的な水の力とビームに伴うらしき衝撃波で、炎は消し飛ばされていく。


 宿場町の半分は瓦礫になってしまったが、あと半分はどうにか焼け残ったようだった。


「これは……ギリギリ泊まれるか……?」


「泊まれるかもね?」


 エレジアとそんな話をしつつ、宿場町に近づいていく。

 ああ、盗賊は全部、マッドビームで泥の中に埋めておいた。

 これで後腐れはない。


「思い切ったわねえ」


「よく考えてみたんだ。盗賊、生かしておいても、人間ってのは反省も改心もしないもんだろ? 俺だったらしないし、恨みを募らせる。それに宿場町に引き渡しても、恨んでる町の人間が盗賊を殺しちゃうだろ? ならばここで埋めておいたほうが、後々誰も傷つかなくて済むかなって」


「そうかも。優しいねオービターは」


「うへへ」


 俺は照れつつ、宿場町の生き残りを救出する作業に移った。

 とは言っても、瓦礫の中から人を探し出すのは一苦労である。


「生きてる奴いるかー!」


 一軒ずつ呼びかけていって、反応があったところで小刻みにブリーズビームを使って瓦礫を切断、ちょっとずつどけていって助け出す。


 これは夜明けまでかかりそうだ……!


「オービター、これこれ。襲われた時に食べかけだったみたい」


 瓦礫の中から、ソーセージを発見。

 これをもぐもぐやりながら、救出作業を続行することにした。


 家々を掘り進めると、食べ物が出てくるな。

 ちょうど夕食時だったのだろう。


 食べられる場所はいただきつつ、俺たちの空腹を満たす。

 そしてついでに人を助ける。


 幸いなことに、俺が速攻で火を消したのと、瓦礫もビームの勢いで半ば吹き飛ばされていたため、多くの住人が生き残った。


 助け出した人たちが、俺に礼を言ってくる。


「ありがとう! 盗賊まで退治してくれたのかい?」


「風の魔法を使ってたな。魔法使いさんだな? ありがとう!」


 そういうことにしておこう。

 不明スキルを持っているというのは、知られてもいいことがあまりないからな。


 ともかく人助けはしておくものだ。

 俺とエレジアはタダ飯にありつき、一泊まで無料にしてもらったのだった。

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