第6話 卵要素が思ったよりエグかった。
気絶したほのかを連れた祈里は急いで学校に戻り、今まさに帰ろうとしていた麗那に事情を説明した。
「見たことない怪人、ね。
確かにアトリエテンペストの怪人はカーマインは皆彫刻が動き出したみたいな奴で、ネイビーはでっかいぬいぐるみ。
まともな人型なんて造らない…」
「だから新しい敵なのかな?って…」
祈里としては1つ心当たりがあるのだが、それだけは言いたくないのだ。
それを否定して欲しくて麗那の元に来たというのも否定出来ないからだ。
しかし麗那は
「多分、ブラスト殿が造った怪人なんじゃない?」
「そんな!」
「祈里、信じたいのは私も同じよ。
けど今私達と奴ら両方に敵対する理由のあるのは彼だけ。」
苦い表情をしながら麗那は断じた。
そこに追い討ちをかける様に新たな情報が入って来た。
「カナリアもだ。」
バサバサと羽音を立ててシャインとリキッドの相棒の妖精、スズメとツバメがやって来た。
「カナリアちゃんもブラストと一緒に裏切ってたんだ。」
「ツバメ、理由は?」
「はい。つい先程、聖神様から、カナリアが怪人を造る機械を天界から持ち出したとの情報が。」
「ブラストさん…カナリアちゃんまで…」
「イノリ、信じよう。
カナリアは根性なしだけど悪い奴じゃねえ。
正直裏切った理由は皆目検討つかねえけど、きっとなんかあんだよ。」
「スズくん…そう、だよね?
信じて大丈夫だよね?」
「ハックション!」
「風邪ですかブラスト様?」
「エレメント風の奴が病気するか。
多分噂されてんだよ。アニマ達あたりに…。」
「やっぱ罪悪感あります?」
「ああ。けど今更戻った所で神サマに何されるか分かったもんじゃねぇし。
焼き鳥野郎の修理終わったか?」
「はい。後はアトリエテンペストの奴らが来るのを待つだけです。」
「よし、明日は一応俺も行くから変身出来る様に頼む。」
「了解です!」
そして翌日。
またいつもの様に街の破壊を始めたアトリエテンペスト達。
今日来た幹部はネイビーで、まだ雑兵のキャンバスしか展開していないが、手には自作らしきボタンの目の牛のぬいぐるみと怪人化に使う絵の具をもって余談なく辺りを見渡している。
(何処から来るの?
流石にこの子を大きくしてもアルケーアニマ、カオスブラストと三つ巴になったら簡単に押し切られるの…)
ネイビーはアトリエテンペストの幹部内では一番弱い。
個人の戦闘力は逃げに徹すればブラスト以外のアニマ3人からなんとか逃げ切れる、まともにブラストレベルの敵と戦えばまず負けるレベルである。
だからこそ彼女が用意する怪人はアニマ達の5倍近い体躯を誇るぬいぐるみ型なのだ。
「さーて、じゃそろそろやらせますか。」
その様子を近くの建物から双眼鏡で見ていた風斗は合図を送って焼き鳥怪人をけしかけた。
「コッケー!」
「き、来たの!お前たち!」
「「「キャンバー!」」」
レイピア両手に真っ直ぐ突っ込んで行く焼き鳥怪人にキャンバス達が立ち塞がる。
「コケケケー!」
レイピアを絶対本来の用途では無い様なラリアット気味の刺突でキャンバーを串刺しにすると焼き鳥怪人はそのまま猛進した。
両手にどんどん連なるキャンバーをぶら下げたまま、ネイビーに迫って行く。
「く、来るなぁ!来るななのぉー!」
ぬいぐるみに絵の具をぶちまけてぶん投げる。
みるみる巨大化したぬいぐるみは巨大な猛牛となり、焼き鳥怪人をカチあげる。
動かなくなったキャンバス達諸共吹っ飛ばされ、ボトボトと地に落ちた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
もはやなの!口調がでる余裕すら失ったネイビーは半泣きになりながら地面に座り込む。
やっと終わった。
そう思った瞬間、彼女の耳にパリパリと乾いた何かが割れる様な音が聞こえた。
「え?」
動かなくなったキャンバス達から聞こえたその音は次第に大きくなり、それに比例する様にキャンバス達の身体は歪に膨らんで行き
「ピーッ!」
「ピーッ!ピーッ!」
黄色い体毛に鶏冠の無い頭の無数の焼き鳥怪人ヒナがキャンバスを食い破って現れた。
「卵要素エグ過ぎだろ。」
思わず風斗は呟いた。
あれが成長したらと考えると恐ろしい。
バイバイゲームで増え続ければキャンバスの様な使い捨ての人造生命体含め、生きとし生けるもの全てがあれに変えられる。
「そんな…」
見た目な反して聡いネイビーはそれを感じ取ったらしく、完全に戦意を喪失している。
(始末しろ。)
風に声を乗せてヒナ達に指示を送る。
さあ、散々手こずらせてくれたお礼をたっぷりしてやろうじゃ…
「シャインクラスタ!」
聞き覚えのある可愛らしい声と共に無数の光弾がヒナ達に降り注ぐ。
「来たか…」
「あーあ、来ちゃったか。」
「ちょっとシャイン!全く、仕方ない子ね!
グランド!撃ち洩らしはお願い!リキッドダンス!」
続いて鉄扇の刃を展開したリキッドが舞う様な動きでヒナの頸や首など切り裂いて行き、ステップの都合上余った敵を
「グランドアッパー!グランドストライク!」
グランドの鉄拳がぶっ飛ばす。
息つく間もない見事すぎる連撃。
「流石、今まで物量なんかものともせずアトリエテンペストと戦って来たアルケーアニマだ。」
「次の怪人を用意しないとな。」
誰にも気付かれる事なく風斗はその場を後にした。
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