第5話 最初の怪人が出来ました
ついさっき今月分の家賃を払い終えた風斗とカナリアは早速設備を充実させた基地を見回す。
「業務用冷蔵庫。」
「良し!」
「怪人生成器。」
「良し!」
「臨時の寝泊まりで使うテント。」
「室内にですか?」
「別に屋外で使ってもいいぞ。」
「さいですか。」
「防護服とガスマスク。」
「さっき届きました!」
「怪人の材料!」
「廃品を色々くすねて来ました!」
「よし、始めよう。」
2人は防護服とガスマスクを装着して冷蔵庫を開ける。
「生卵に焼き鳥唐揚げって…コンビニの廃棄品か?」
「はい。幻術使って店員になりすまして取ってきました。」
「そっか。何か機械とか持ってきたか?」
「壊れたラジオなら。」
「よろしい。」
2人は材料を怪人製造機の鍋の様になってる部分に入れてから付属の専用液…主成分は不明だが、説明書によれば環境だけには害が無いらしい。
そう、環境には。
言わずもがなこの説明書の一節が2人に防護服とガスマスクの購入を決意させた一因で有る。
「なあカナリア。これ薬入れたら材料全部溶けあってゴボゴボ泡立ってるけど平気なの?」
「説明書に寄ればうまく行ってる証拠見たいなんで離れてて下さい。」
そう言って2人は離れるとパットに必要事項を入力する。
「えーっと、強さは『おまかせ』。知能は『低め』。
体格は『人型』。基本命令は『アニマの戦士及び他の悪の戦士に攻撃』。こんなもんでいいですかね?」
「よし、それでいい。記念すべき1号怪人だ。
ちょっと期待していきましょう!スイッチオン!」
風斗の合図でカナリアが決定ボタンをタップ。
装置が独特の作動音と排熱音と共に怪人を生み出す。
「コケーッ!」
カプセルの中から出てきたのは赤い鶏冠に黄色い嘴のついたまんま鶏な頭に、頭同様白い羽で覆われた身体をした鳥人だった。
「ふむ。概ね成功っぽいが、いくらか確認したい事がある。」
「何でしょう?」
「ラジオ要素何処に消えた?」
鶏怪人を鶏冠の先から爪の先まで見回すが機械らしい部分は全く見当たらない。
「さぁ…一応説明書には機械も使えるって書いてありましたけど、薬品と相性悪かったんでしょうかね?」
「まあいい。それより肩についてる緑色の円柱型の突起は…」
「多分焼き鳥のネギマ要素ですね。」
「持ってる武器レイピアなのも串の要素か。
だとしたら卵要素も何処消えた?
これじゃただの歩くネギマだ。」
「多分鶏肉と同じ括りにされたんでしょうか?」
「ふーむ。不安、不満、不思議は残るが文句ばっか言っても仕方ない。
確か毎週この時間はあの馬鹿女カーマインが暴れてる筈だ。
ちょっとそのレイピアで突いて来い。
邪魔ならあのカラフルな3人娘も突いて来い。」
「コケーッ!」
焼き鳥怪人はレイピアを持ったまま敬礼をして基地を歩いて出て行った。
「元気だしなよいのりん!
きっとパイセンは理由なくアルケーアニマを抜けたりしないよ!」
時間は少し経って取って篠原学園中等部校舎から駅の間の商店街の道をアニマグランドの土浦ほのかとアニマシャインの日宮祈里は歩いていた。
麗那は今日委員会連との会議があっていない。
「うん。……そう、だよね?
ブラストさんも何か理由があるんだよね?」
明らかに空元気というか無理矢理作った笑みを向けられてほのかはバツが悪そうに頭をかいた。
(やっぱりパイセンにほの字っぽいいのりんには堪えるよなー。
まさかの闇堕ちだもん。)
ほのかがアニマになった理由もシャインとブラストだけで対処しきれない数の敵が湧いたからである事からもわかる様に、敵の数さえ少なければアルケーアニマはシャインとブラストだけで成り立つ。
そう後から入った2人が確信できるぐらいにはシャインとブラストはいいコンビだ。
(それだけ親密になれるぐらいに長い時間一緒なら惚れた腫れたもあるって訳で。)
本人誤魔化してるつもりかもしれないが、ほのかと麗那から見れば間違いなく彼女はブラストに惚れていた。
祈里は嘘が紫の玉ねぎの次に苦手だ。
多分誰かに片想い中ぐらいならクラスの皆や生徒会役員にもバレてる。
(どうしたもんかなー…パイセンがまた来たら話聞いてくれるか分かんないし、3人で勝てるかって聞かれたら…)
正直無理だ。
前回ネイビー諸共本気で攻撃してきた事からもわかる様にブラストはこちらに手加減しない。
対してアルケーアニマ達3人は間違いなく手加減してしまう。
「あらあら随分浮かない顔ね。美しくない!」
2人の前に今3番目に会いたくなかった奴らが現れた。
それを見た人々が散り散りに逃げていく。
「カーマイン!」
「引っ込んでろおばさん!
騒音と塗料の垂れ流しなら他所でやれ!」
「ふん、芸術を理解しない奴らが!
やっぱりその発想の乏しい脳なんか全部私達の芸術の一部にしてやる!」
「させない……!」
「行くよシャイン!」
「「聖具解放!エレメントアップ!」」
ほのかは指輪を反対の手の親指で弾いてから掲げ、祈里はカバンに下げていたケースから戦杖を引き抜き、一回転させる。
光に包まれ2人は変身した。
「命を育てる恵の大地!アニマグランド!」
「命を芽吹かす励みの陽光!アニマシャイン!」
「「マジカルスクワット!アルケーアニマ!参上!」」
「半欠けだからって手加減しないわよ?」
「アンタなんか半欠けで充分よ!」
グランドのインファイトをカーマインは目や首を狙った短剣の投擲で妨害する。
幾らかはシャインが撃ち落とすが、上手くグランドと重なる様に立ち回る。
(どうしよう…やっぱり私はブラストさんやほのかちゃんみたいに強くないから…)
「今よ!お前たち!」
カーマインが叫ぶ。
いつの間にか近寄って来た二体のキャンバスが飛びかかってきた。
「シャイン!」
(しまった!防御を…え?)
おかしな物が見えた。
キャンバスの後ろから肩から変な物が生えた鳥人間みたいな怪人がレイピア両手に走ってくる。
(アトリエテンペストはあんな怪人作らない…じゃあ誰が?)
鳥人間が大きく息を吸う。
何か来る。そう思ったシャインは自身をすっぽり覆うバリア、シャインコンクルージョンを発動する。
「コッケェエエーーーーーーーッ!!!」
爆音が突き抜けた。
バリバリと周囲のガラスが砕け、キャンバスに至っては衝撃でズタズタに引き裂かれてしまった。
背後を見るとグランドとカーマインを吹っ飛ばされてしまっていて動かない。
「ほのかちゃん!」
「スゥーーーーーッ!コッケェ「うるさい!」ゲゲェッ!」
口を大きく開けて音波攻撃を放とうとした鳥人間の口の中にシャインの光弾が炸裂する。
発声器官を焼き壊された鳥人間は喉を押さえてうずくまる。
「ほのかちゃん!」
厄介極まる遠距離攻撃を封じたシャインは気絶したグランドを連れて離脱した。
「意外と強いじゃねぇか。」
「ラジオ要素、ぱっと見分からなかったですけど喉奥にあったんですね。」
その様子をやや離れた建物の上から見ていた二人組がいた。
カオスブラストとカナリアだ。
「これは卵要素にも期待して良さそうだな。」
「ですね。カーマインはどうします?」
「泳がせとけ。アイツが暴れないとアニマ達は出てこない。それに…」
「それに?」
「いや、なんでもない。
しばらく焼き鳥は食べない様にしようと思ってな。」
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