第2話:本当の家族
「私は末っ子だが、両親からはあまり愛情を注がれた記憶がない。」これが菜芽の本心だった。当時、父親は仕事をしていたが、夜は遊び歩き、休みの日は友人たちと出かけてしまい、母親は夜の仕事と昼の仕事を兼業していて、年齢が年齢だったこともあるが、彼女たちとの時間を取るために可能なら昼の仕事だけで暮らしていきたいと思っていた。しかし、彼女が本当にこの兄弟で良いのか分からなくなっていた。というのは、父親とは交際を始めて約2年経っていたが、関係を持った事実はなく、結婚する1年前には父親の浮気が原因で破局した時期もあった。そこで、遺伝子検査を行い、2人の子供であるのかを調べてもらうことになった。すると、父親と遺伝子が一致しなかった。つまり、菜芽だけ父親が違うということになる。
では、誰が父親なのだろうか?父親だと思っていた人が全く違うとするならば、母親は誰と関係を持ったかさえ分からない。
姉は3人とも口をそろえて「お母さんが誰と付き合っていたかまでは分からないし、付き合っていたどうかも知らない」というのだ。お母さんには今まで、付き合った彼氏はいたが、どこまで関係があったのかも子供たちでさえ不確かな状態だ。
しかし、なぜ姉たちは私のことを受け入れてくれたのだろうか?理由は定かではないが、少なくともお母さんから「この子はあんたたちの妹だ」と言われたからだという。
母親は分かっていても父親は分からない。
上の姉3人は血がつながっていないことが分かっているため、お父さんは違うことは言うまでもない。母親の交友関係に関しても全て既婚者しかいないため、不倫していたと仮定して、隠し子状態だったことになるのだろうか?
一番上の姉だけは母親とそりが合わないことが多く、今でも母親と会うつもりはないという。なぜなら、彼女は当時中学生だったが、部活動も十分に参加することが出来ず、当時小学生だった妹と幼稚園に通っていた妹の面倒をみることを全て引き受けていた。つまり、彼女にしてみると母親は悪魔のような存在だったのだろうか?そして、その悪魔のような存在と認識するようになってから生まれた菜芽は悪魔の子という認識になってしまったのか?だからだろうか、彼女が家を出たときも姉二人は普通に接していたが、自分に対しては態度が違っていたという態度の差はこのことが発端になったのだろうか?今でもこのことは考えてしまう。
数年後、自分の子供かもしれないと名乗り出た男性がいた。年齢的には母親よりも10歳ほど若いが、当時昼の仕事をしていた時に一緒だった勤務先の後輩だった。この二人が何を思ったのかは分からないが、検査をしてみるとDNAの型も遺伝子配列も一致しており、この男性が父親ということが分かった。彼が菜芽の出生の事を教えてくれた。お父さんの名前は俊範と言って、当時はまだ学生だった。そんな彼が当時彼女とうまくいっていなかったこともあり、相談していたのが菜芽の母親だった。そして、自分がシングルマザーであることを打ち明け、彼も彼女の優しさに惹かれてしまい俊範の彼女に内緒で付き合っていた。そして、関係性が構築できた頃に関係を持って生まれたのが菜芽だった。しかし、母親も当時はまだ30代前半だったこと、父親とはまだ離婚が成立していない状態だったこともあり、俊範も彼女との結婚が決まっており、どうしたらよいのか分からなくなっていた。そこで、母親は菜芽の出生届の父親の記入欄には父親の名前を入れていない状態で戸籍に登録した。それは、父親との別居も関係していたが、一番はこの子を不幸な思いをさせずに自分の子供として育てたいという母親の決心が後押ししたのだろう。
今の家の中は異父姉妹という状態になっている。これは、決してネガティブに考えてしまうほど悪い印象を持つことはない。ただ、彼らにとっては一番の触れたくない事柄であることは間違いない。
ただ、姉3人と菜芽にとっては本当の姉妹としてお互いに助け合って生きて欲しいという願いは一番上の姉以外は通じたようだった。
本当の家族になるためにはどのようなことが重要なのだろうか?これからの長い人生の中に答えとなるヒントにたくさん出会うことだろう。
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