41.映画デート2
俺と里香が映画館に入ると、映画関係のグッズが目に入った。俺達の観る映画のグッズも売っており懐かしさを感じる。里香も同様みたいで、彼女も目を輝かしていた。
「ふふ、懐かしいな……ほら大和と私がいたよ」
そういって満面の笑みを浮かべて彼女が手に取ったのは主人公と白衣のライバルキャラだ。俺と里香がライバルになったきっかけの二人である。子供に混じって嬉しそうに主人公のぬいぐるみに「大和」と声をかけている姿はすごい可愛い。
ちなみに主人公の名前は大和ではない。だからか子供たちがきょとんとした顔で里香を見ている。まあ、そうなるよな……それとさ、そいつはヒロインじゃなくてライバルなんだよな……あれ、俺選択肢ミスった? これはやっぱりヒロインじゃなくてライバルでいたいなって言う里香の答えだったりする? いやいや、それはないだろ。
でも、いざとなると不安になってしまう。両想いであろうはずなのに確定はしていないこの状況はすごい不安だ。くっそ、今なら里香の気持ちがわかる。彼女の気持ちを知りたい。そのためならば催眠術だろうがなんだろうが頼りたくなるものだ。
「ちょっと飲みものとポップコーン買ってくるわ」
「ありがとう……ポップコーンはキャラメルで……」
「飲み物はファンタグレープだろ?」
「流石大和だね、あれは知的飲料なのさ」
少しもやっとした俺は冷静になるために、買い物をすることにした。カップルメニューか……これで、多少は俺を意識してくれるだろうか。でも、カフェでも映画館でもカップルメニューって露骨すぎるか? いやいや、何を考えているんだ。俺は今回告白するんだろ? それにカフェでは結構いい感じだったじゃないか!! 俺は自分に喝を入れる。ここでヘタレて告白何てできるかよ!! 俺は元気よくカップルメニューを買って合流する。そこには上機嫌にグッズの入った袋を持って鼻歌を歌っている里香がいた。
「里香買い物は済んだか?」
「ああ、すごいな。古い作品なのにこんなにグッズがあるなんてびっくりしたよ。ていうか、大和それ……」
里香は俺が持っているカップルメニューを指さして、顔を真っ赤にして何やらもごもごと言った。これは大きな箱にポップコーンと大きなドリンクのあるカップにストローが二本ささっている。つまりポップコーンはともかく、ドリンクを飲むには一緒のドリンクを飲まないといけないのだ。
「嫌だったか? なら他のを買ってくるけど……」
「別に嫌じゃない。びっくりしただけだよ。全く大和はこういうのが好きなんだな」
「おい、ちょっと……」
そういって彼女は顔を真っ赤にして、席へと向かった。早足になった彼女を俺は慌てて追いかける。
そして俺が席に座りカップルメニューを置くと、同時に里香はドリンクに口をつけた。俺が何かを言う間もなく飲んだ彼女は決め顔でこういった。
「ふふ、これを飲むってことは大和は私と間接キスをするってことになるよ。ヘタレな大和にこれが飲めるかな……んな!?」
いつものように意地の悪い笑みを浮かべる彼女を横目に俺は躊躇なく口をつける。こいつ何を言ってやがる俺はもう告白するつもりなんだよ。今更この程度で恥じてたまるか!!
「ふーん、やるじゃないか、まあいいや。ほら大和だよ。オタクの中にはぬいぐるみと一緒に観る人もいるみたいだぜ」
そういって彼女は俺の方に主人公のぬいぐるみを渡す。そして彼女の方には白衣を着たぬいぐるみとヒロインのぬいぐるみがいた。俺の視線に気づいた里香が顔を真っ赤にして逃げるように画面を見ながら言った。
「この二人が私だよ。何か文句あるかよ? 映画が始まるよ。集中するんだね」
俺が紡ごうとした言葉は映画泥棒達の茶番によって中断されてしまう。でもさ、これってそういう事だよな。くっそ、こいつとんだ爆弾を落としやがって……おかげで映画に集中できないじゃないかよ。俺はドキドキとした胸を落ち着かせようと深呼吸をするのであった。
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