22.撫子と催眠術

「で、里香はなにをやったんだよ」

「いや、私は撫子ちゃんに自己催眠の話をして、「何を言ってるんですか、催眠術何てかかるはずないじゃないですか? 本当だっていうなら素直になれる暗示をかけてみてくださいよ」といわれたからやっただけなんだが……?」

「俺の妹を即堕ち2コマのエロ同人の登場キャラみたいな事言ってるな……」

「どうしたの? お兄ちゃん? 即堕ち2コマってお兄ちゃんのパソコンにある『国語の課題』っていうファイルにほぞんされているやつだよね、私知ってるよ。ちゃんと分けてて偉い。さすがはお兄様です!!」

「なんで知ってんだよ!! 俺のパソコン一応パスワードかけてるんだけどな、こんな、さすおにはいやなんだが!!」



 俺のプライバシーなさすぎないか? ちなみに英語の課題には洋モノが、家庭科の課題にはコスプレものが入っており、理科の課題には里香との思い出の写真が入っている(健全な写真です

 俺達の会話を聞いていた撫子が、俺に膝枕されながら、きょとんとした顔で聞いてくる。なんか昔を思い出して懐かしいな。中学あたりまで、撫子は俺にべったりだったのだが、周りから「兄にべったりすぎてやばい」という風にからかわれたからか、次第にツンツンし始めたのだ。まあ、兄離れは覚悟していたので、ダメージは少ないと思っていたのだが、やはり俺もさびしかったみたいだ。頭を撫でると気持ちよさそうに撫子が満面の笑みを浮かべた。ああ、可愛らしい。



「なあ、二人とも近すぎないか? 普通の兄妹はそんなにイチャイチャしないと思うんだけど……」



 そんな俺達の様子をみていた里香が唇を尖らせて言った。なんかすごい不機嫌そうなんだけどどうしたんだろう。そんな里香を見ていた撫子が、一言。



「里香さん、嫉妬してるんですか? なら里香さんも甘えればいいのに……」

「なっ……あ……う……」



 撫子の言葉になぜかいいよどんだ里香は俺の方をみて顔を真っ赤にした。そして視線が合うと顔をそらされた。何この雰囲気!? 

 俺達の様子を見ていた撫子は俺の膝から頭をあげてにこっと笑って言った。



「お兄ちゃん、メイド服好きだよね、私も着てあげるね。確かもう三着あるでしょ」

「だから俺のプライバシー!! 部屋の物の配置すら完全に把握されているだと……」



 そういうと撫子は一切の迷いもなく俺のクローゼットからメイド服を取り出した。待って? なんでそんなに迷いなく見つけれるんだよ? おかしくないか。カメラとかしかけられてないよな?



「じゃあ、着替えてくるね。里香さんと二人っきりだからって変な事したらだめだよ」

「するか!!」



 俺の言葉を聞かずに撫子が去っていった。そして部屋にとりのこされる俺と里香。いきなりの状況に頭がついてこないので、俺はルーティーンをして落ち着かせる。なんか勉強どころじゃなくなってきたな。



「大和のシスコン……実は血のつながっていない妹ってオチはないよな?」

「そんなラノベみたいな人生は送っていないんだが……てか今回の件は俺は悪くないだろう。撫子のやつなんであんな風に……」

「多分だけど、撫子ちゃんはずっと、大和に甘えたかったんじゃないかな? 思春期だからね、恥ずかしくて甘えれなかったのが催眠術で解放されたのかな。気持ちは……わかるかな」

「ツンデレかよ!! まあ、俺も素直になれないって気持ちはわかるが……」



 本当に痛いほどわかる。俺達はお互いをみつめあいながらため息をつく。関係を一歩進めたいと思いながらも、俺はまだ、きちんと踏み出せないでいる。もっと素直に里香を可愛いとかさ、好きだとかさ言えたらどんなに楽だろうと思う。里香はどうなんだろうかとおもって彼女をみるとこちらを上目遣いでみつめながら口を開いた。



「大和……私もあんな風に……」

「お兄ちゃんどうかな? 似合ってる?」



 里香のその言葉は扉を開ける音に中断されてしまう。声の方を見るとメイド服を着た撫子が鼻歌を歌いながら入ってきた。うおおおお、可愛い!!



「おお、いいな。普段のボーイッシュな撫子が、フリフリのメイド服を着ているギャップ!! そしてバレーで鍛えた健康美に素敵な生足!! やはり健康美を主張するには靴下やニーソックスなど邪道!! 里香とはちがう魅力があるな!!」

「大和はメイドならなんでもいいのかよ!!」

「いってぇ!! いや、普段ツンツンしている妹がデレデレなってしかもメイド服をきてたら冷静でいれるはずないだろ。ラノベみたいでテンションあがるだろ」

「ふん、そんなにメイド服がいいなら、大和はメイド服とでも結婚してればいいんじゃないか」



 俺が興奮のあまり叫ぶと、なぜか里香に殴られた。つい撫子のメイド姿が可愛すぎて夢中になってしまったのは悪いけど仕方ないではないか。そんな俺達を見て撫子が一言。



「お兄ちゃんも里香さんも素直にならないとだめだよ」



 お前がいうなよと思ったが、その言葉に俺と里香は目を見合わせる。でも、言葉はなかったけれど、何かが通じ合った気がして……結局その日はバタバタしていて勉強できなかったけれど楽しかった。ちなみに撫子は一晩寝たら元に戻っており、このことはおぼえていないようだった。朝にあいさつしたときに顔が赤かったのはきのせいだよな。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る