21.催眠術の正しい使い方

 そう言って彼女が出してきたのは「自己催眠による学習」という本だった。あれ、いつものやつではないようだ?



「催眠術なんて本当にかかるのかって思っているだろ? 意外と効果があるもんなんだよ」

「そうなのか、それにしてもやけに言い切るな。まさか俺にかけたことがあるとか?」

「そっ、そんなわけないだろ、いいからリラックスしてみなよ」



 俺の言葉に里香が冷や汗を垂らして目をそらしながら言った。こいつ嘘が下手すぎるな。しかし、リラックスしてみてよって気楽に言うけど、好きな人が目の前でメイド服なのにリラックスできるわけないだろう。とはいえ里香が真剣なので俺はルーティーンをして精神を落ち着かせた。



「まあ、これは自己暗示の一種だよ、以前教えたルーティーンと同じ要領さ。大和は何をしている時が一番集中できたり、楽しい時間を過ごせるかな?」

「ああ、バスケだな、試合中とかはあっという間に時間があっという間に進むしな」



 里香の言葉に俺は考えながら答える。そこはやはりバスケだろう。でもまあ、一番は里香と話している時間なんだけどなとは思ったが、言うのは無茶苦茶恥ずかしいからやめた。



「なら、自分に俺はバスケが好き。楽しいから好き。好きだから凄く集中できる。勉強も好き。楽しいから好き。好きだから凄く集中できる。っていう風に何回も言い聞かせてみるといい。私も言うから一緒に繰り返すんだ」



 俺と里香がそれぞれ復唱する。なんか子供のころにやったごっこ遊びみたいで楽しいな。そして、心なしかなんか勉強をするのが楽しくなってきた気がする。すごいな、催眠術ってエッチな事以外にも使えるんだな。



「バカ大和……里香さん……何をやっているの? 邪教の儀式? なんで里香さんはメイド姿なの……?」

「撫子ちゃんまったぁ!! ここはなんとかするから大和は勉強をしているんだ」



 つい、夢中になりすぎたようだ。様子を見にきた撫子が、ドン引いた顔で俺達を見つめている。確かに幼馴染にメイド服を着せて二人してぶつぶつ何か言っている光景はやばいな。俺が立ち上がる前に里香がはしって撫子を追いかけて行った。急いでいたからか、スカートがめくれて何かみてはいけないものがみえそうになったいだが気にしないでおこう。なるほど……白か……

 まあ、催眠術でなんとかするんだろうと思っていると、しばらくして扉が開けれ里香と撫子が入ってきた。そして撫子は俺を見つめると一言。



「お兄ちゃん、大好き」



 といって抱き着いてきた。待って、何がおきているんだ? こんなの中学の時以来だぞ。里香に説明を求めるように視線を送ると彼女も困惑した表情で首をふった。一体どんな催眠術をつかったんだ? キャラ変わってるんだが? 俺の妹がこんなに素直なはずがない。




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