11.里香からみた二人(ヒロイン視点)
大和ってあんな顔をするんだなぁ……私は軽い衝撃とともに涼風さんと話している彼の照れたような笑みを見ていた。私に見せるのはいつも皮肉に満ちた笑みだというのに、涼風さんにはあんな風に笑うのか……
私と撫子ちゃんは涼風ちゃんが大和に話があると聞いていたので少し席を外させてもらったのだ。涼風ちゃんの表情を見ると鈍感な私でもさすがに察してしまう。彼女の気持ちは痛いほどわかってしまう。
「あの……里香さんすいません、実は夏色に二人にしてほしいって頼まれて……どうしても話したいことがあるって言うから……」
「別に撫子ちゃんが謝ることじゃないだろう? 君も板挟みで大変だろうし、それに私と大和はただの幼馴染だ。別に止める権利はないよ」
「里香さん……」
あの二人は何を話しているのだろう、どんな話をしているのだろう。涼風さんの笑顔はまるで太陽の様だった。私とは違う笑みだ。私もあんなふうに笑えば彼は可愛いと言ってくれるのだろうか? 私としては撫子ちゃんを責める気持ちはない。彼女は私にも聞いてくれたのだ。「夏色が大和と二人で話してもいいですか?」と……
そもそもこうなっているのだって、素直になれない自分が悪いのだから。もしも私が大和の彼女だったら涼風さんを止める権利はある。でも、私はただの幼馴染だから……大和が誰を好きになるかなんて大和が決めるべき事なのだから……
でも、二人をみていると私の胸が苦しくなるのを感じた。ああ、わかっているさ、この気持ちは嫉妬だ。中学、高校と時間はあったのに、ただの幼馴染で甘んじていた私が悪いのだから仕方ない。でも……もう嫌だな……このままじゃ、やっぱり嫌だな……私は彼の幼馴染ではなく彼女になりたいのだ。
「ねえ、撫子ちゃん……私はどうすれば大和に可愛いって思ってもらえるかな? 甘えたりすればいいのだろうか?」
「いやいやいや、今のも十分可愛いですよ? そういう風にギャップで攻めればバカ大和なんてすぐに堕ちますよ!! でも、そうですね……いきなりが難しいんだったら少しずつでも、いいから甘えてみたらどうでしょうか?」
「そうだね。少しずつか……ちょっとがんばってみるよ」
ギャップというのはよくわからないが、確かに練習は必要なのかもしれない。だが、うかつなことを言えばあの男は私の事をからかってくるに違いない。どうすればいいのだろう……甘えるというのはどうすればいいのだろうか? 私がなんとなく、ポケットを触っていると何やら固いものがあたった。ああ、そうだ。私には催眠術がある。
そして、涼風ちゃんから合図がきたので、私たちは合流をすることにした。
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