6.撫子と大和
「ねえ、バカ大和。里香さんやたら機嫌いいんだけどなんか知ってる?」
「バカとは失礼だな。親しみを込めて、さすがです。お兄様って呼べよ」
「うわきもっ、そんな風に呼ぶ妹なんて二次元だけだよ。あ、うどんだけじゃ足りないと思ってコロッケ買ってあるよ。バカ大和の好きなお肉屋さんのやつ。それに。今日のお昼購買部だったでしょ。そんなんじゃ部活の時元気でないよ」
「あそこの肉屋に寄ると遠回りだというのに……ふっ、なんというツンデレ妹よ。ついでに、別におにいちゃんのためなんかじゃないんだからねって言ってくれないか? そうすれば部活も頑張れるんだが」
「あたしは別にツンデレじゃないっての。だいたいバカ大和のためじゃないの。レギュラーのあんたが倒れたら、部のみんなに迷惑がかかるでしょ」
そう言いながら俺と妹の撫子は一緒に里香の家のキッチンで料理をしていた。体調不良の里香のためにかったうどんだけでは少し物足りないかなと思っていたので、正直お肉はありがたい。
体を動かすたびに動くポニーテールが騒がしい。バレーをしているため適度に筋肉がついた体に、気の強そうな少女だ。身内びいきかもしれないが、可愛いと思う。妹の撫子は俺や里香の一つ下で、同じ高校に通っている。そして涼風ちゃんとは親友である。ちなみに、俺と違ってまあまあモテるのだこの妹は……もっとも俺をバスケで倒さない限り交際は認めないんだけどな!!
「何か手伝うことはないかな? 私だけ何もしないっていうのは申し訳ない気分になるんだが……」
「里香さんはいいんですよ、今日早退したんですよね。ゆっくり休んでてください」
「そうだぞー、さっきも寝てたんだからさ。それにお前の料理は……」
「なんだよ……私だって、少しくらいならできるんだからな」
里香を休ませようとしている撫子に俺は援護射撃を送る。撫子がきたとわかった彼女の行動は早かった。寝ぼけ半分の撫子を追い出して、再度、俺に5円玉をみせて、「私は眠っていて、大和はそれを見守った」という暗示をかけてきたのだ。だから俺はそれに従っただけである。でも、夢のような出来事だったけれどあれは現実だったんだよな……ちなみに里香は料理はまったくできないわけないが手際が悪いのだ。
「ふふ、こうしているとなんか家族みたいだねぇ」
「そうですか、里香さんがお姉さんになってくれるんですか? 私は歓迎しますよ。てか……はやくくっつけばいいのに……」
「だってさ、どう思う大和?」
彼女はいつものように飄々とした顔で、俺に意地の悪い笑みを浮かべてくる、その姿は本当にいつもどおりで、まるで先ほどまでの出来事が嘘みたいだった。こいつ、さっきまで甘えた顔で抱き着いてきたくせに!! と思うが怪しまれるわけにわけにはいかないのだ。ぶっちゃけプロポーズをしたいくらいだけど、催眠術にかかっていないとばれるわけにはいかないからな。俺はいつものように返事をする。
「俺達は家族じゃなくて、ただの幼馴染だろ」
「ふふ、そうだね」
「もう……バカ大和」
飄々としている里香に、なぜか俺に対して不満そうにため息をついている撫子いつもの風景だ。まあ、家族になったら結婚できないしな。てかさ、なんでこんな飄々としてるんだ? こいつさっき、無茶苦茶甘えてきたよな? 俺はさっきの事を思い出して、色々必死に抑えてんだけど!!
「そういえば、里香さん明日って暇ですか? バカ大和と映画にいくんだけど良かったら一緒にどうかなと思いまして」
「そうそう、前二人で見に行ったやつあるじゃん。あれの続編が上映しているからどうかなって」
「大和が構ってくれないから、明日は暇だけど、デートのじゃまをして大丈夫かな?」
「デートじゃないです、なんでバカ大和とデートしなけばいけないんですか。もう一人の友達もいっしょなんだけどよかったらどうですか?」
「二人が良いなら私もいいよ。それに私もアピールしないといけないしね。あの子にも負けてはいられないし……」
里香は何かを考えて、俺をみながら少し顔を赤らめながら言った。アピールってなんだかわからないけれどそういう彼女は何かを考えているようだった。いつもとは違う表情と、さっきの出来事のせいで俺は不覚にもドキリとしてしまった。
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