第17話『罪』
仕事が終わったのは五時半を過ぎた所だった。
九時から五時の勤務時間なのだけど、凛ちゃんが最後に対応したのは、月に何度もクレームを入れる人だった。
五時を過ぎて席を立つ私たちに凛ちゃんがメモを見せて来た。
そこには最悪👎という文字と、先にお店に行っておいてと書かれていた。
私と楓はコロナの自粛期間で感染対策されたイタリアンレストランに向かった。
営業時間は八時までだけど、今日だけは会わずにはいられないと二人から厳しく言われてる。
アクリル板に仕切られたテーブルはまさに取り調べにうってつけだと凛ちゃんの提案でこの店に決まった。
敏腕刑事かもしれない凛ちゃんが残業になったことで少しホッとしたけれど。
思ったより早く凛ちゃんもやってきた。
「あのオヤジいつかギャフンと言わせたいわ」
プンプン怒りながら入ってきた彼女はテーブルの呼び鈴を何度も押しながらスタッフを呼んだ。
「とりあえずハイボール!あれ?二人はまだ注文してなかったの?何にする」
「グラスワインを2つとアンチョビのピザ、それと、山盛りのサラダ、パスタはまた後から頼みます」
しっかり者の楓がいつもこうして注文係をしてくれる。彼女はきっと良いお嫁さんになるだろうなと思った。
飲み物が届いたタイミングで凛ちゃんが口を開いた。
「これより容疑者、五十嵐彩絵の取り調べを始めます」
「そうよ、いつの間にそんな彼氏と出会ってたのよ」
楓がイタズラっぽく睨んで来る。
「今まで行ってた美容室が移転しちゃったあとに気がついたらアパートの近所に良さげな店があったから飛び込みで入ったのよ、そしたら……うふふ」
「また始まったよ!彩絵のうふふが!それはいつ頃からなの? 」
私が彼の店に初めて行ったのは三ヶ月ほど前だった。
イケメンだけど浮ついた感じは全くなくて、シャイで寡黙な彼は好印象しか無かった。
だけど、まさか彼氏になるなんて思ってもみなかったし。今はうふふと微笑むしかないくらい有頂天だ。
数年前の辛い恋愛を上書き出来るかもしれないんだから、こんな取り調べは却って嬉しいかもしれない。
そしてその後、まさか彼と同棲するなんてこの時は想像すらしていなかったのだ。
「それでそれで!? 」
「キスはしたの? まさかもっと進んでるの? 」
「手は繋いだ━━そして、その流れでキスされた……うふふ……でもねまだそこまでだよ、信じて!」
「そりゃ信じるよ、まぁそれなりに盛り上がれば当日でもなくはないだろうけど━━」
最年少の凛ちゃんは意外に大胆な発言をする。
これはいつかこちらからも取り調べが必要かもしれない。
テーブルに出された料理はみるみるうちに女子三人に平らげられている。
凛ちゃんはいちばんの呑兵衛だけど、この日は特にたくさん飲んで怒ったり笑ったり忙しい。
「とにかく罪は確定だね!そしてちゃんと恋をして幸せになることだけを考えてね、私と楓からはそれだけが望みだからね、ところでさぁ、そのイケメン美容師の友達を紹介してくれるってのはないわけ? 」
私はそうだね、今度、奏くんに聞いてみるね。と言ったが、二人からはジト目で見られた。
こんな風に恋バナをして、愚痴を言い合って私たちは大切な友達になって来る。
了(続くかも)
━━五十嵐
━━前田
━━松林
勝手にモデルにさせて頂いた神楽耶夏輝さんが前回の『描写』でピンポンを返してくれました。
その物語はこちらです。
今回のお話のあとのお話になってます。
キュンキュン💕する物語です。
登場人物
五十嵐彩絵
奏(イケメン美容師)
※業務連絡・夏輝くん、氏名の設定お願いします。
(お題によっては続くかもだからw)
読まれてない方は是非読んでくださいね。
こちらでーす‼️↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/16816452220432726421/episodes/16816452220730164376
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます