第10話👵『老婆』

 ある日目が覚めると老婆になっていた。


 そう言えば、昨日の寝る前に、鏡の前で「もう嫌だ、違う自分になりたい」って言ったんだった。


 でも、老婆なんて……

 今年28歳だ、若くはないかもしれないけど、まだ二十代に踏みとどまってる。


 仕事も行き詰まってるし、変なウイルスのおかげで、気晴らしにも行けない毎日、遠距離恋愛している彼にも会えない週末。


 部屋を見渡しても今までと何一つ変わっていない。


 ジェラートピケのパジャマも、大好きな観葉植物も、お気に入りの北欧雑貨も昨日と全く同じ。




 でも、鏡に映る自分の顔を見ていたら、懐かしさが込み上げて来た。


 おばあちゃんにそっくりだった。


 二年前に亡くなった大好きなおばあちゃんと瓜二つの顔を見ていると泣けて来た。



 しわくちゃになった両手を眺めてみる、左手の薬指には去年彼氏に贈られた小さいけれどキラキラ光るダイヤモンドが光っている。


 鏡の中から声が聞こえた、「真奈ちゃん、聞こえる?ばあちゃんやで」


 大阪に住んでいたおばあちゃんの関西弁の懐かしい声。


 鏡に映っているはずの顔はやっぱりおばあちゃんだったのだ。


「おばあちゃん、会いたかった」


 信じられないことが起きているのに、会いたかったおばあちゃんにあえて嬉しかった。


 あの日、母さんと駆けつけたけれど死に目に会えなかった。


 白いシーツの上で眠るおばあちゃんにちゃんとお別れ出来なかったことは私にとっても大きな心残りだった。


 母さんと喧嘩して家出したことがあったよね、夏休みだったからしばらくおばあちゃんの家に逃げ込んだ。


 早起きして庭の草むしりをしたり、枝豆を茹でるのを教えてもらったり。

 夏祭りにも連れて行ってもらったね。


 母さんがおばあちゃんみたいに優しかったらいいのになと思ってそう言ったとき。初めて叱られた気がする。


「お母さんがどれだけ、真奈ちゃんを大事に思っているかわからへんの? 」


 それは、私にも分かっているのにいつも素直になれない、素っ気ない態度で接してしまうから喧嘩になってしまう。


「お母さんは、私ともいっぱい喧嘩してたんやで、真奈ちゃんと同じやで、でもね、あんたも母親になったら分かるからね、そして、お腹の赤ちゃんを大切に育ててあげや、ひ孫が生まれるんやからね……」


 誰にも話していなかった、その事を言われて私は産むことを決めた。


「ありがとう、おばあちゃん、私頑張るね」



 気がつくと、鏡の中の私は母さんにそっくりのいつもの私になっていた。

(1,000文字超えちゃった💦)



 ~おしまい~


 ※あとがき

 こんなんになりました~!

 読んで頂きありがとうございました。


 何とか午前中に書けました。



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