第9話👠「マンホールの蓋の下」
👠マンホールの蓋の下👠
どうやらバチが当たったらしい。
久しぶりに履いたピンヒールのパンプス、道の端の側溝の小さな隙間に挟まりかかとが取れた。
朝からの雨で、側溝の水の流れが早くて、右脚のハイヒールのかかとは流れて行った。
7センチヒールのかかと、片方だけ取れたら、歩けるわけが無い。
しかも、パンプスは買ったばかりで、私にしては高価なものだった。
友達の結婚式に招かれた時にドレスに合わせて奮発して買ったパンプス、まだ元をとってもいないのに。
マンホールの蓋なんて開けられるわけないし。
そう言えば、彼とマンホールに吸い込まれてタイムスリップする青年の韓国ドラマを観たことを不意に思い出した、あの頃の私はいつも笑っていた。
とりあえず、待ち合わせをしていた友達には理由を説明してキャンセルをした、「とにかく家に帰ろう」
タクシーを呼ぼうとアプリを開いた。
今はこんなアプリがあるから便利だけど、近くに空車のタクシーがいないらしい。
雨が降るといつもタクシーの運転手は忙しいらしいのだ。
途方に暮れながら、まだ雨に濡れているガードレールに寄りかかって、スマホに届いたLINEを開いてみる。
昨日の夜に届いた彼からのLINEのメッセージに返事をするのが怖くて既読スルーをしている。
付き合いだして五年、お互いに馴れ合いになってるこの関係にきっと彼は疲れてしまっている。
かといって私も結婚願望が強いわけでもないし、仕事だって楽しいからこれからも続けるつもりだ。
そんな彼から「実家の家業を継ぐことになった、遠距離恋愛になるからその事で話がしたい」なんてメッセージが届いたら別れ話だと思ってしまう。
故郷についてきて欲しいなんて言われたらどうしようと思ってる自分と、別れ話になるのを避けている自分。
私だって自分の気持ちが分からなくなる。
でも、歩き出さないと……
私は「今日の午後に会いましょう」とメッセージを入れて、パンプスを脱いで両手に持った。
きっと新しい自分が始まるのだと雨の匂いの残る道を歩き始めた。
(了)
※あとがき
めっちゃ、ムズすぎるお題でしたKACよりもムズい……こんなふうにしか書けませんでした(笑)
韓国ドラマはほとんど観ません、ジェジュンが主役のドラマがあるとネットに書いてあったので使わせてもらいました。
「マンホール~不思議な国のピル~」というファンタジックラブコメディらしいです。
知らんけど_(┐「ε:)_
そして、次のお題「老婆」
(´口`)↓︎↓︎書けるのか?
てか、水ぎわ師匠早く帰ってきてください!
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