第6話💠小さな恋のはじまり💠

 


 同じクラスの松本くんに私は恋をしている。


 地味な私に振り向いてくれるなんて絶対にありえない。


「ねぇ、知ってる?噂だけどさ、松本くんって、アニメ好きでバーチャルユーチューバーの夢ちゃんに夢中なんだってよ、なんかキモくない、コスプレが好きなんだってよ」


 私はビクッとした。


「そうなんだ、別にキモくはないと思うけど?」


 私はこの気持ちを気付かれないように「てか、今度のテストの範囲で分からないところがあるんだけど」と話題を変えた。


 黒髪で地味で度のキツい眼鏡の私だって恋をしたい、優しい恋人だって欲しい。


 そして、誰にも言ったことないけどアニメが大好き。


 今年は長年楽しみにしていたエヴァの新作の公開、真希波・マリ・イラストリアスのコスプレで参戦するつもり。


 公開日当日、地毛でコスプレするのは初めてでドキドキしたけど、コスプレ仲間には似合うと絶賛されて凄く嬉しかった。


 ネットで知り合ったコスプレ仲間とはスマホでやり取りして現場で会うだけ、話題の映画だからギャラリーも多くてたくさん写真を撮られた。


 まさか、松本くんがその写真を見ていたなんて知らなかった。


 私は夢ちゃんみたいに可愛くないけど。



 休み明けの月曜日、いつも挨拶程度だった松本くんが初めて声をかけてきた。

「もしかして、川内ってコスプレしてなかった?マリの……」


「えっ?えっ?」


 突然の言葉にしどろもどろになる私に松本くんは言った、「眼鏡っ子も可愛いと思うけど、川内はかけない方がいい気がする、ずっと前からそう思ってたんだ」



 えー?ずっと前から?

 私なんか眼中にないと思ってたのに、授業のチャイムが鳴ったので、コクリと頷いて席に座った。


 自分の鼓動で先生の声なんて全く聞こえないけど、心の中でふんわりとした気持ちが生まれたのを知った。


 貯めていたお年玉を今度はコスプレに使うのではなくて、コンタクトレンズに使おうと心に誓った。


(おしまい)






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