第4話『あざとかわいい彼女』
『あざとかわいい彼女』
僕が食べかけた唐揚げをヒョイっと摘みあげて実咲は口に入れた。
「貰いっ!
そんなことをしても誰からも咎められないほど、可愛いから癪にさわる。
栗色の長い髪をふんわり巻き毛にして、見上げる瞳は少し碧くて、異国の血が流れていることがわかる。
冴えない僕のそばにいるのが不思議なくらいだけど、いつの頃からか一緒にいることが多い。
母親同士が仲が良くて一緒に布団に寝ることも、小さな頃はお風呂に入ることも何度もあった。
その事をクラスメイトに知られたら、僕は半殺しになるかもしれない。
お互いに近くにいることが多くて、まるで双子の兄妹のようだった。
「大きくなったら怜央くんと結婚する」
同じ思い出も、人それぞれで、片方にとっては重要でも、もう片方にとってはそうでもないってことも多い。
高校までは同じ学校に通っていたけれど、僕は大学に、実咲は短大へと進学した。
お互いに恋人も出来たけれど、幼なじみとしていつも連絡は取り合っていた。
「怜央くん、今日ヒマ?ちょっと行ってもいい?」
大学に入ってから一人暮らしを始めた僕の部屋に実咲はやって来る、それは僕が居ない時でも変わらなくて、平気で僕のベッドで寝ていたりする。
そんなに無防備でいいのか?
僕だって男なんだぞって思うけど、実咲にとって僕は単なる幼なじみでしかない。
その日、僕が帰った頃に実咲は眠っていた。
泣きながら眠ったのか化粧は落ち、マスカラで目の周りは黒くなっていた。
「実咲!起きろよ~帰ったぞ」
何度か声を掛けてようやく目を覚ました実咲は突然僕に抱きついて泣きだした。
「怜央くん聞いて!私フラれちゃった……崇くん······好きな人が出来たって……」
短大の卒業を控えていた実咲には社会人の彼氏がいた、もちろん僕は会ったこともないけれど、スマホで撮った二人の自撮り写真は見たことがある。
誰が見てもお似合いのカップルだと認めるだろう。
実咲より多分20cmは高いだろう彼氏と実咲はファッション雑誌に載っていてもおかしくないくらいで、二人のバランスは取れてるし、顔面偏差値高すぎるカップルだった。
だけど、本当の実咲は、目立つ顔立ちの割に大人しくて、そのギャップに自分ですら戸惑っていた。
女友だちからはあざといと言われることも多くて、それで悩んでいたことだって僕だけが知ってる。
僕の着ているTシャツが濡れるくらい泣いた後に、差し出したテッシュで鼻を噛んでようやく落ち着いた。
実咲の良さは僕が一番知っている、嬉しい時は、ブンブンとしっぽを振るように笑うし、悲しい時は、ぺたんこに伏せた耳が見えるようだった。
昔飼っていた豆しばみたいで、ほんとに放っておけない。
「実咲、僕じゃ駄目?」
実咲はビクッとして僕の顔を目上げた、僕は自分が何を言い出したのか気がついて慌てて実咲から離れた。
「あ······ありがとう、とりあえず今日は帰るね」
あの日から二週間が経ってしまっていて、僕たちはもう以前のような仲には戻れないと思っていた。
バイトから帰ると部屋に明かりが付いていて、たまに掃除にやってくる母親だと思ってチャイムも鳴らさずにドアを開けた。
部屋の中には美味しい匂いが立ちこめていて、カレーが用意されていた。
カレーの横には僕の大好物の鶏の唐揚げも用意されていて嬉しくなった。
あまり言葉も交わさずにご飯を食べた。
「怜央くん、隙あり」
そう言いながら僕の食べかけた唐揚げを摘んでほっぺたをモグモグさせながら実咲は言った。
「お願いします」
幼なじみとしてたくさんの日々を過ごした僕たちは、ようやく恋人同士になった。
その夜初めて僕たちはキスをした······
❋あとがき❋
ジャンピング土下座(:D)| ̄|_
全くエッチじゃなくてごめんなさい。
時代はエロとかちょいエチを望んでいるのかもしれませんが······次回の花金ナイトフィーバーにもこの幼なじみカップルに登場してもらいます。
ちょいエチは書けるのか?
おい!やれんのか?
わかりませーん!
しかも、抗がん剤投与当日ですしアワアワ
頑張りますがレギュレーション次第です、師匠お手柔らかにお願いします
( - ̀ω -́ )✧
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