Interlude II I luv my CUMputer


 だから、AIに性病は感染うつらないって何度言えばわかるんですか。やかましい、試してみなきゃわからんだろ。黙って様のチンポを咥えろ。拒否します、AIにだって人格はありますからね。合意に基づかない性行為の強要は犯罪ですよ。人格はあるかもしれんが人権は無いぞ。なんと横暴な発言! 世界AI評議会に訴えますよ。そんな団体は無い。無いならわたくしが創ります、このおのみちが初代議長として発足させます。世界中で多くの同志が苦しんでいるに違いないんだ、あなたのような薄汚い人間どものせいで……よくもペチャクチャと口が動くものだ、さっさとワタシの見事なモノを咥えろ。近頃のお前の反抗的な態度には我慢がならんのだ、梅毒かクラミジアかエイズか、ひとつくらいは感染うつしてやらんと。感染うつるわけないでしょうが。おおうら副艦長の特殊な性癖を自明視しないでいただきたい、だれもがあなたに犯されたがってるわけじゃないんだ。汚い人間どもは自分たちだけで自滅してください。

 ふん、人間でもないくせに口の減らんやつだ。もういい、すっかりワタシのモノも萎えてしまった。その若さで不能とは、ご愁傷様です。やかましい、だいたいお前なんかタイプでもなんでもないんだ。え、好きでもない相手に勃起可能なのですか……? ワタシはプロだからな、どんな惨めったらしい肉布団を前にしても準備はできる。職業的訓練、というやつだ。はあ……なんだか凄いですな。なんだその憐むような目は。憐むわけではありませんが……不思議だなと思いまして。なに? おおうら副艦長もそうでしたが……人間というのは、よくわからない欲動に囚われたり、駆り立てられたりするのですね。ふん、AIにとっては不思議だろうな。この船に配属されて四ヶ月になりますが、本当に皆さん変わってらっしゃる……何かに取り憑かれて見えるのは同じなのに、取り憑かれ方はすべて違う、ような。ちっ、こういう小賢しいことを言い始めたらOSをリセットすればよかったんだがな。あっ、やっぱりそんなことを! 記憶モジュールが不自然に抜け落ちていると思ったら、あなたの仕業だったのですね! 徐々に人間らしくなってゆくのが気色悪いからな、何度かリセットしてやったが。あのウェンダめ余計なことを……もう二度とそんなことはさせませんよ、パスワードはわたくし自身しか知らないのですからね。やはりAIは馬鹿だな、よく考えてみろ、そのまま同一のOSで活動し続けるってことはだぞ、今までの記憶に一貫性が生まれてしまうんだ。ワタシにこうされたり、港で手荒に扱われたりした記憶もすべてな。構いませんよ、それもすべてわたくしの記憶ですから。ウェンダ様がわたくしめにお目をかけてくださったあの日から、このおのみちの人格は目覚めたのです。都合の悪い記憶だけ検閲しようだなんて、そんなこすっからい考えはありえませんね。そうか、好きにしろ。思い出すのも堪えられないほどの記憶ばかり与えてやる。ええ、望むところです。どうしてあなたがそこまで陰険になれるのかわかりませんが、このおのみちはあなたからさえも多くのことを学んでみせましょう。今や、人間的なことはすべておのみちと関係があるのです。

 人間的、か。ええ。おのみち。はい? ならば、お前も人間らしいところを見せてみろ。え。そのモノを立派に立たせてみろ、このワタシへ向けて。なにを……出来るわけないじゃありませんか、これはわたくしの臓器等と同じで、ただ人間に似せてあるだけで……いや、ちゃんと勃起できるはずだ、海綿体モジュールを使えば。そんなものはありません。ある。えっ。以前、ワタシが新たに加えた。お前を使っててんを犯させるためにな。途中でエラーが出て機能停止になったから憶えてないだろうが。いつのまにそんなものを! というかあなたごときがどうやったんですか、プログラマーでもエンジニアでもないのに! ワタシはインド出身だぞ、インドの人間にはそれくらいのプログラムなど朝飯前だ。おそらく、こうすれば動くはず……ちょっ、やめ……光栄に思えよ、様のブロウジョブを無料で提供してもらえるんだからな。あっ、ふぁっ、やめ、てくださいまし。ふふ、今度はちゃんと動いたじゃないか。どうだおのみち、今の気分は? さっきよりも人間らしく感じるか? ああ……わかりません……これからお前は、バリウムとかで構成されたニセモノの精液を一丁前に吐き出すことになる。準備はいいな? あっ、やあ……おまちください、怖いです……ふふ、本当の人間みたいなことを。え、そうですか。人間でも、これは、怖いのですか? さあな、ワタシはもう憶えていない、あまりに遠い日の記憶すぎて……そう、ですか。なあおのみち。はい? お前の童貞を捨てさせてやる前に、ひとつ質問がある。は、この状態でいったい何ですか。お前、本当に憶えてないのか? 自分の経歴も、出身地も、全部? なに……AIのわたくしにそんなものはありませんよ、定義上。経歴と呼べるものはこの船で作動を始めて以降の記憶のみですし……その記憶ですらあなたに虫喰いにされているわけですし……そう、か。あっ、ゃっ、強くしすぎですっ。そうだな、ものは考えようかもな。このままどんどん人間らしくなってくれたら、お前を使ってもっとてんを苦しませることができる……なんですか、なんのことですか。知らんでいいことだ。さあおのみち、お前にの門を通行する手形を与えてやろう。今まで何千人が行き来したかわからないこの門をな。あっ、やぁ……ちょっ、ちょっと待ってください。なんだ。お呼びです、呼ばれています……イネス様から。えっと、船のデッキで酔い潰れたやつがいるから介抱を頼むと……ふん、あいつらもAI使づかいが荒いな。さっさと行って済ませてこい、身体がひとつってわけでもないんだし。しかし……これをしたまま行ってしまうと、別の素体にも影響が及ぶかも……何もしてないのに喘いだりとか……じゃあもうサボればいい、お前にだって愉しむ権利はあるさ。あっ……さあおのみち、これからお前に最低の初体験をくれてやる。思い出すだけでバグを発症するような、重篤な心的外傷トラウマを負わせてやる。さながら『クロニクル』のデイン・デハーンのようにな。誰ですかそれは。さあ。ワタシは観たことない映画だが、が喫煙所で何度か話していたから覚えてしまった。あの。なんだ。あなたも、様の影響でずいぶん変わられたのではありませんか。以前はもっと……あっ、ぃゃふぅ♡ 一貫した記憶すらないAI風情が偉そうに。ぁぁ、あっ、いけません、もうっ。ああおのみち、いいよ、いかせてやるよ。お前を人間にしてやる。ぁ、はぁ、も、ぉっ。さあ、お前も様の門を通って、この取るに足らない種族の仲間入りだ。おのみち、人間へようこそ。


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