15 Master & Servant
おとこまんこほもられるっ♡ よなちんぽはいってきまひゅっ♡ 言う
今日も今日とて制圧完了。
TENGA、わかる? TENGAのうんち穴、
こんな罰を求めるやつもいるんだ、世の中には。ワタシには全くわからない。あの「解放」によって生き方を狂わされたにしても、ワタシとこいつらとでは箍の外れかたが如何に異なっていることか。
ああ、世界は広いな。としか言いようがない。
揺るがぬ優位、というのも、なかなかどうして退屈ね。あのアイルランド娘も気勢ばかりよくて、一向に
エリザベス、と、背後から呼ぶ声。何かしら。次のリオ・デ・ジャネイロ公演だが、少し変化を加えてみないか。事務的に述べる声の方へ向き直る。変化というのは? このツアーでは、観客および視聴者からの投票で順位を決めているだろう、グループ枠と個人枠、双方の総得票数によって。それがどうかした? 次の公演では、グループ枠を廃して個人枠のみに投票を絞ってみては。と簡潔に切られた声に、個人枠のみに、ね……それはDefiantからの提案かしら? と問い返す。いや、これまでの趨勢を鑑みたうえで、私がここに提案するものだ。個人枠の投票があるにも拘らず最終的にグループの総得票数に還元されてしまうのであれば、今回の参加者の個性が反映されづらいだろう。生硬な説明を並べるウェンダを前にして、しばし沈思する。個性、そうね……公演も回を重ねて、さすがに下位の連中も一定のファン層を獲得したでしょうしね。ウェンダは頷き、よって次の公演のみ、計上の形式を変えてみるのはどうだろうか。と言う。珍しいわね、あなたがInnuendo以外の動向に気を配るなんて。首位を維持しているからには当然のことだ。以上のことをDefiantに提案しようと思うのだが、構わないかな? ええもちろん、好きにしなさい。興行師めいた工夫を凝らすのはあちらの仕事。そんな小細工を弄したところで
ってわけで、今回だけ投票のしかたが特殊だから、一応念頭に置いといてくれ。個人枠のみ、かー。影響あるのかな? イネス、今までの全公演の得票数グラフとかないの? 投票の計上してるのはA-Primeだから詳しくは知らんけど、片方は固定で片方は違う投票先に、ってユーザーが多いとか言ってたな。たとえば、投票するグループは毎回決まってるけど個人枠は今回パフォーマンスが一番良かったやつにとか、特定の一人のファンとしてχορόςを観はじめたけど最近こいつらいいじゃんって思い始めたグループに入れるとか。ふたつの枠それぞれ使い分けるってことか。いわゆる「推し」ってやつっすねー。てことはあれじゃん、
ああ、こういう感じなのか、座るとは。今まで立ち仕事しか許されてはこなかったけれども。これはなかなか、いいな。臀部にふれるクッションの感触を持て余していると、口に合うかどうかはわからないが。と、砂糖とミルクの小瓶をすすめてくれる。紅茶の味などわかるはずもないが、とりあえずティーカップを持ち上げてみる。サーモグラフィ無しでも、鼻先で湯気を立てるこれが
ところで
ふーう、やっぱ
さて、最後はInnuendoかい。談話室のソファに腰掛け、モニタの中継映像を眺める。相変わらずイントロで持ってくなー『RULE BRITANNIA』。あ、お、着信。あーパンゲアか、またA-Primeがらみの何かかねえ。無視するわけにもいかず、ビデオ電話の受話ボタンを押す。Wassup パンゲアー、なに今夜はどうしたん? 言うと、何って、イネス、まだ知らないのか? と相変わらずの早口。なに、そっちの株価でも暴落した? あいにくDefiantは最高のライブやった後だよー。とくすぐってみると、そういうのじゃな……ああいいイネス、これを見てくれ。パンゲアが言うとともに、カメラがラップトップの画面に向けられる。これって何、ライブ配信のコメント欄? 一秒毎に更新される画面に、いつもどおりのハッシュタグ……とは別のものが、何やら混ざっている。おいパンゲア、何それ、
もしかして。
通話を切り、ブラウザを立ち上げ、 #koros2020LatinAmerica で検索する。そこには画像や映像がひしめいていたが、その内容はいずれも、数時間前に発表されたというDark Dukeの新作コンセプトにまつわるものばかりだった。そのなかのひとつ、ファンによる撮影と思しき映像を再生してみると、OMGとかWTHとかの甲高い嬌声を上げるファンたちの姿が収められていた。これ……会場外のブースだよな。まさか、これも予め仕込んでたのか。ロンドンでの新作発表と連動するために。
てことは。
今回のχορόςに公平性があるとしたら、それは臨港地のパフォーマンスだけで勝負するってことだ。どれだけ実力や演目の内容に差があったとしても、出したものを見てもらうって意味では公平。今まではそれだけで勝負してきた。でも、もし、空間的に離れた場所で、同時多発的にアピールできるような、別働隊を有してるやつがいたとしたら?
着信。「Зофии Клоссовска」。受話。あーイネス、とりあえず次のダブリン公演まではだいぶ時間あるから、いま修理出しとけばサン・ルイスの港で受け取れそう。うん。えっどうしたの、何かあったの。いや、ソーニャ、まだ知らないか。知らないって何を? いや……ソーニャ。何? やられた。持ってかれた。
ど、ういうことかしら。目の前のパートナーの背丈が、いつもより高く映る。どうも何も、言葉通りの意味です。
私、グウェンドリン・ウォーターズは、ランキング暫定一位の権限をもって、ここに公演ルールの変更を布告する。Innuendo、Defiant、Shamerock、
以上。
できるからといって、やるかよ……掌で両眼を覆いながらイネスは呻く。初めて見たな、こんなに動揺した彼女の姿は……いやしかし、ウェンダ個人の策略でルールごと変更しようったって、それを発効するにはA-Primeの承認が必要なはず。なんでも好き放題に書き換えられるわけでは……と思ってみても、かねてより私とイネスの差配に不満を表明していたA-Primeにとっては、これはむしろ好餌なのか。勝者が揺るがないグループ単位での興行よりも、今までの前提をテーブルごと覆す展開のほうが。まさか彼女は、そこまで見通して──
船体横に取り付けられたLEDモニタ上で、
よろしい。言いながら、ウェンダは群衆のほうへ向き直る。これよりχορόςは個人戦へと移行する。今までユニットとして勝ち得ていた名声も、以降は関係なくなる。つい先程までパートナーだったエリザベスに一瞥くれ、右手を振りかざすとともに、LED画面上に個人投票ランキングが映し出される。首位に輝くGwendolyn Waters a.k.a.DwrDuの脇に、厳しいブランドロゴが添えられている。
それでは、二位以下の者たちよ。諸君らは今から、自らが単独でも通用する代物であることを証明する必要がある。Dark Dukeは各員が義務を尽くすことを期待する。
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