第59話 [テストと賭け事]
「ふー…なんとか間に合ったな」
朔と唯咲は教室で息を切らしていた。
ちなみに俺は全く息を切らしていなかった。
「はぁ…はぁ…疲れたぜ…」
「全く…あなたが全く起きないからこうなったんですよ?」
「いや、お前も寝てたって強也から聞いたんだが?」
学校に着いた時刻は八時二十分を少し過ぎたぐらいであった。
俺はあと少しでも勉強するために机に数学の教科書を広げた。
「何か忘れているような……はっ!?」
「どうしたんだ?朔」
「ちょっと来てくれ!」
「何するんですかー!?」
朔が何かを思い出したような反応をすると、唯咲を廊下に連れ出した。
「ちょっと!いきなりなんなんですか?」
「単刀直入に言おう……」
朔は汗をたらりと垂らしたあと、喉に詰まりそうな言葉を出した。
「お前……強也のこと好きか……?」
「ん?そりゃぁもちろんですよ!!」
「ひぇぇぇ!!」
朔は畏怖していた。
静音に言ったらあのアホ毛に刺されるんじゃね?と思っているのだ。
だが朔は最後の希望を込めて次の質問をした。
「そ…それは…あれか?結婚したいとか思ってる……?」
「は?何言ってるんですか?師匠は男ですよ?勉強のしすぎで頭いかれたんですか?」
「あり?じゃあ“好きって”…ドーユー好き?」
「そりゃ師匠として大好きですよ!あんなに強い人は初めてですしぃ、それに———」
唯咲は強也の強さに着いて語り始めた。
一方朔は心の底から喜ぶ、と言うよりは安堵した。
寡黙で未知の存在の静音、それに重大な任務を渡されたが、それを最高の形で達成できたからだ。
「おーい何やってるんだー?もうチャイムなるぞー」
担任の先生八木林が後ろに立っていて教室に戻るように言われた。
そして二人は教室に戻った。
「唯咲、朔となんの話をしていたんだ?」
「なんかあの人が“師匠と結婚したいか”とか聞いてきたんですよ」
「ブァァァカ!何言ってんじゃボケェェ!!」
朔が慌てて大声を上げたが、周りには聞かれていなかったようだった。
「朔、勉強のしすぎで頭がいかれたのか?」
確か日本では同性の結婚はできなかったはずだ。
朔は昨日勉強して途中でおかしな言動をしていたからなぁ。その時からおかしくなったのか?
「師弟揃って同じ反応どーも…。ともかく俺は大丈夫!ハハハ!」
「ならいいのだが」
チャイムが鳴ったので、俺たちは各々の席へ着いた。
さて…国語、英語は全く問題ないのだが数学……まあやれることはやったから取り込んだ分をただ吐き出すだけだ。
「えー、テストが終わったら普通に授業があります。テストの結果は四時間目終了後にすぐに出るので楽しみにね〜」
他の高校では後日結果が出ることが多いらしいが、この高校ではテスト終了直後にAI技術などを駆使し採点をし、一瞬で結果がわかるらしい。
流石“入学したら勝ち組”と言われている高校だけあるな。
「さて、バッグを置いて……と」
「おい…!」
先生の話が終わったので机の中の教科書を全て取り出して廊下にバッグを置いていると、目の下にクマができており、フラフラとしている狂吾が話しかけてきた。
「何か用か」
「勝負しろよ…!」
「勝負?」
今この状況だったらデコピン一発で俺が勝利できそうだが……。
「やるなら容赦はしないぞ」
俺は腰を低くし、戦闘体制についた。
「ちげぇよ!テストの点数で勝負だ!」
「なんだそっちか」
内容は単純に国語、数学、英語のテスト全てを合わせ、どちらが高いかを競うものであった。
「別にいいぞ。何か賭け事はするのか?」
ニヤリと笑みを浮かべ、こう言ってきた。
「ああ!もちろんするさ…。“負けた方は勝った方の言うことなんでも聞く”でやるぞ」
「まあいいだろう。後から変更するのは無しだからな」
「お前こそ、あとからな言っても無駄だからな!少し強くて顔がいいくらいで調子乗るんじゃねぇぞ!」
狂吾は教室へと戻っていった。
まあ数学を頑張ろう。数学…よし、頑張ろう…。
〜〜
テストが終わった。
一時間目は国語、二時間目は英語、そして最後の数学が三時間目だった。
数学はまあまあだな。
「あ〜やっと終わった〜!どうだった?」
「朔、おつかれ。数学はイマイチだな」
まあ英語と国語は凡ミスが無ければ百点だろう。
あいつの様子は……。
俺は狂吾の姿を見たが、まあまあ満足しているような顔だった。
どうなるかは四時間目が終わったらだな。
「む?四時間目は体育か」
「えぇ!?俺体操服持ってねぇよ……」
「あ、間違えてもう一式持ってきてしまっていたな。貸してやろう」
「まじ!?ご都合展開かよ〜!助かるぜ!」
また新しい単語が出たな……。
“ゴッツ・ゴー展開”か。時間があったら調べてみるか。
「師匠!卓球場へ行きましょー!」
この高校には卓球場という卓球をするだけの場所がある。
俺たち三人はそこへと向かった。
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