第56話 [勉強会②]
「最神くん!もう二十分ぐらい経ったと思うんだけど!!」
「む、本当か?」
スマホで時間を見てみるとまだ十分ぐらいしか経っていなかった。
まあそろそろ美疾が限界そうだったのでおやつ休憩にするのとにした。
おやつは俺が糖に飢えて暴れるのを防ぐ用に買いためてあるからたくさんあるのだ。
ちなみに前世で糖が思うように取れなくて暴れた日があり、その日は“災厄の日”と呼ばれるようになった。
様々な国々から大量の甘味が送られて俺は正気を取り戻した。懐かしいなぁ。
「おやつを持ってきたぞ」
「おおお!!!」
皿の上にビスケットやチョコなどの多種多様のおやつを乗っけ、机の上まで持ってきた。
机に置くや否や、美疾がバッとおやつを素早く奪い、口の中に放り込んでいた。
「美味し〜♡やっぱ甘いものイズ
「ほう…!わかっているてはないか」
「ムシャムシャ……同士よ……」
俺たちは握手し合った。ここに甘党同盟が生まれたようだ。
「………」
「ん?シズどしたの?難しい顔して」
「……?わからない……なんだかモヤモヤ……」
俺も美疾に続いておやつをどんどんと口へ放り込んだ。
頭を使った後に食べる甘味は最高だな……。特にチョコは前世にはなかったから新鮮味があってたまらないのだ……!
皆もりもりとおやつを食べていたが、朔だけあまり食べていなかった。
そしてなぜか気まずそうに俺を呼んだ。
「な、なぁ強也……」
「どうした?朔」
「さっき家の探索してる時に部屋の中入ったんだけどさぁ……」
朔は視線をあちらこちらにやり、言いづらそうだったがとうとう言葉を放った。
「お前の両親ってもしかして……もう……」
「ああ、仏壇を見たのか。そうだ、俺の両親は死んでいる。今年の夏休み中にな」
俺がそう言うとおやつを食べるのをやめ、あたりは静寂に包まれた。
「その……悪いな、どうしても気になっちまって……」
「別に大丈夫だ。もう受け入れたからな」
俺はおやつを食べるのを再開したが、俺以外はもうおやつに手を伸ばさなくなった。
「強也……」
静音のアホ毛が垂れ下がっていた。俺の心配をしているようだ。
他も俺をジッと見つめていた。
「そう心配するな。形あるものはいずれなくなる。いつか崩れる。だからと言って両親が死んでも俺は崩れるわけにはいかない。せっかく親からもらった生を、親の消失で
だが最神強也は耐えられなかった。
もし学校でいじめられていなかったら。
もし頼れる仲間がいれば。
もし誰かが助けてくれたら。
もし……俺ことフォルディ・オースがあと少し早く転生していれば。
俺が早く転生していれば親の死も防げていたかもしれない。最神強也という魂が抜けるのを防げたかもしれない。
例えばの話しはいくらでもできる。
だが前に進むしかない。後ろには戻れない。戻ってはいけない。
後ろへ戻れるのならば戻れる者を中心に世界が回ってしまう。
だがそれはダメなのだ。一度戻ってしまえば何度でも戻って最善の道を歩もうとしてしまう。
だが自分にとっての最善の道はもしかしたら最善ではないのかもしれない。
まぁこのように色々と並べたのだが……一番は———
「お前らに会えなくなってしまうからな」
前世で俺は強かったし敵なしであった。
だがそれ故に仲間がいなかった。俺を恐れて俺から離れ、いつからか俺も自然と人に近づかなくなった。
だから今、この縦の関係でない横の関係が心地いいと思っている。
今の俺はそれを失うのが一番怖い。
「だから俺は死なん、安心しろ。お前たちが今一番大切だからな」
俺は再びおやつを食べ始めた。
俺以外はおやつは食べなかったが、先ほどまでの重い空気は無くなっていた。
そしてなぜか顔を赤くしたり、ぽりぽりと頰を掻いたり、うつむいて顔を隠したりしていた。
「強也よぉ……恥ずかしくないのか?」
朔が目線をそらしながらも俺に話しかけてきた。
「恥ずかしい?なぜだ?」
「いや……なんで本人が恥ずかしくないのに俺たちが………」
最後の方はゴニョゴニョと何をいっているのかわからなかった。
「………」
静音は珍しく少しだけ頰を赤らめており、アホ毛はぐねぐねの形になっていた。
「難しい話はよくわからなかったけど……最後のは恥ずいよ……あたしらが……」
美疾はごくごくと緑茶を飲んでおやつを食べ始めた。
「ししょ〜〜!僕も師匠が大事です!」
「そうかそうか、それは良かった。だが暑い、離れろ」
唯咲が俺にダイブしてきたが暑かったので引っ剥がした。
「と、とりあえず勉強再開しようぜ!」
朔がそう言ったので俺たちは勉強を再開することにした。
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