第54話 [勉強会グループと弁当]
そのまま次々と授業が終わり、弁当の時間になった。
「師匠!弁当を食べましょう!」
「そうだな」
俺は弁当を持ち教室を出ようとしていた。
そういえば…田辺なんとかは最近嫌がらせがなくなっているな。目の下にクマができている。
まあ気にすることじゃないだろうと思い、教室の外に出た。すると案の定、静音が弁当を持って向かってきていた。
だが今日はもう一人いるようだった。
「あれ!?シズが一緒に弁当食べてる人ってこの人だったの!?」
茶髪の女子だ。この前ひったくりからバッグを取り返してやった美疾だ。
「強也のこと…知ってるの……?」
「あ、強也って言うんだ……。名前は知らなかったけどこの前あたしのバッグをひったくりから取り返してくれたんだ」
静音と美疾はどうやら知り合い同士のようだ。だが意外な組み合わせだと思った。
「で、美疾はなぜここにいるんだ?」
「いきなり名前呼び……コミュ力お化けじゃん……」
お化け?俺は死んでいないぞ、失礼な。
「私も今日シズと一緒に食べようかなーって思ってて……ホントダヨ?」
「……嘘。私に勉強教えてもらおうと頼むつもり……でしょ?」
「なっ……なぜそれを……!!」
静音に見え透いた嘘を暴かれてワタワタとして焦っていた。
「というか……私は、強也と一緒に勉強する。ミトもそれでいいなら教えてあげる」
「全然オッケー!じゃあよろしく!」
「よろしく」
美疾がニカッと笑いながら親指を立てていたので、俺もそれをやり返した。
美疾も一緒に弁当を食べようと屋上に向かおうとしていたが、教室から誰かがでてきた。
「その勉強会!俺も参加させてくれ!!」
「朔、お前は勉強ができないのか?」
「……まあまあできない。あと面白そうだったから」
俺と静音、唯咲、美疾にプラス朔となると五人になるな…。リビングにある机だったらギリギリ大丈夫か……。
「俺はいいぞ。お前らは?」
「私は、別に構わない……」
「師匠がいいならば僕も構いません!」
「あたしも問題ないよ〜」
「じゃあ決まりだな。朔も弁当食いに行くか?」
「おう!」
俺たち五人は屋上へと向かった。
〜〜
「それじゃあ早速食べるか」
俺たち五人は屋上へ着くと、フェンスにもたれて座った。
ちなみに配置は俺がなぜか真ん中で左が唯咲、その左が朔。右が静音、そしてその右が美疾である。
「さて、いただきます」
「………」
俺が弁当を開けて白米を食べていると、静音がアホ毛をゆらゆらと揺らしながら俺の弁当を見つめていた。
「……なんだ?」
「いや……タコさんウィンナー……」
「タコだな。それがどうしたんだ?」
どこかおかしな部分でもあったのか?いや、完璧に作れたはずだが……。
「美味しそう……」
「そうか?なら一つ———」
「お!本当に美味そうじゃん!一つもーらい!」
朔がウィンナーに刺さっていた爪楊枝をつまみ、そのまま食べてしまった。
「………」
静音がアホ毛をギザギザにしながら朔をただジィ…っと見つめていた。
「ちょっと!それは師匠の弁当だ!!」
「えー!いいじゃんかよ別に!強也も一つって言ってたしぃ!!」
朔と唯咲はギャアギャアと騒ぎ出し、朔をただ冷たい視線で見つめる静音。そしてその隣でバクバクと弁当を食べる美疾。
なんだこの状況。
「ほれ、残り一つだがお前にやろう」
「…!いいの……?」
「ああ」
俺はあと一つのウィンナーを持ち、静音のほうへと向けた。
「えっ……でも、これ……」
静音の頰が少しだけ赤くなっているように見えた。俺は気にせず静音にウィンナーをあげた。
「むぐっ………美味しい………」
「それならばよかった」
静音はその後、ただ黙々と自分の弁当を食べていた。
俺も弁当を食べたいのだが、左がすごくうるさい状況であった。
「だーかーらー!!」
「なぁにがだからじゃボケェ!!」
唯咲と朔がまだ何かを言い争っていた。最初よりも声量がでかく、耳に響いた。
そろそろやめさせることにした。
「おいお前ら、喧嘩する暇があったら弁当を食え……」
「はっ!?師匠すいません!!」
唯咲はすぐにこちらへ向き、その場に座った。
だが朔は納得いっていないようだった。だが俺も弁当を食べたいので少し黙らせることにした。
「朔、卵焼きをやるから黙れ」
「………仰せのままに」
俺の弁当からスッと卵焼きを一つ取り、美味しそうに食っていた。
「ぐぬぬ……師匠の具材を取りやがって……」
朔と唯咲の組み合わせは危険だな……。今後は控えるとしよう。
組み合わせて言えば……。
「そういえば静音と美疾とは意外な組み合わせだな。友達なのか?」
「……?友達……なのかな?」
「ん!?
「ちゃんと飲み込んでから喋れ……」
リスのように口に頬張りながら喋っていたので聞き取りずらかった。
「そうなの……?」
「シズひどいよっ!!」
二人はじゃあっているのでまあ友達なのだろう。
さて……ようやく落ち着いたから弁当を食べるか。
俺はやっと弁当を食べることを再開した。
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