第49話 [部活体験①サッカー部]
その後はごく普通に授業を受けた。六時間目も終わり、今日のすべての授業が終わった。
「んじゃ、俺は部活行ってくるわ」
「ああ、じゃあな」
「バイビ〜」
朔は教室を飛び出して部活へ向かっていた。
ちなみに俺は部活に入部するつもりはない。まだこの世界に転生してからほんの数日しか経っていないし、一つのことに絞らずに様々なことをしたいからだ。
「ししょー。師匠はもう帰りますか?」
「部活には入っていないしな。もう帰る予定だ」
「じゃあお伴します!」
「お前は部活に入っていないのか?剣道部などに入っていると———」
いや待て……。こいつなら部活に入っていたとしても“部活よりも師匠を優先します!”と言いそうだな……。
「僕は部活よりも師匠を優先するんです!」
「………」
見事に的中したな……。こいつの考えることがだいぶわかってきた気がするな。
「そうかそうか。だが部活には行け」
「えぇ!?いーやーでーすー!!やだやだぁーー!!」
ジタバタと暴れて全力で行きたくないことをアピールしていた。
「落ち着け。そうだな……じゃあ後でお前の部活を見に行ってやる」
「え!!本当ですか!?」
ジタバタがピタッと収まり俺に距離を詰めて俺の目を見つめていた。
「近い、そして本当だ。この高校には様々な部活があるようだし見て回るのもいいかと思ってな」
「そうと決まれば早速行ってきます!!絶対来てくださいねぇー」
手をブンブンと振りながら走り去って行った。
やはり弟子にしないほうがよかったか?だが一度決めたことだしな……。
そういえば今日は嫌な視線がないと思ったら田辺なんとかが休みだったらしい。休み時間は毎回睨んできたりしてくるからな。
そんなことを思いつつ教室を出る用意をし、教室の外に出た。
部活を見て回ると行っても、どこで何の部活をしているか知らないからとりあえず校舎を回ることにした。
この高校は前にも言った通りすごくでかい。なので常人ならば移動するのも一苦労というものだろう。
階段を登ろうとしていると先に登っているすごく太った男がいた。
俺は特に気にせず階段を登り始めた。
「あー……。ほんとこの高校でかすぎだよぉ…………って危ない!!」
「む?」
目の前に巨体が迫ってきていた。この男は自分の体重の重さをわかっていないのだろう。
俺は片手でその男の背中に手を当てて持ち上げる形となっていた。
「え!?あれ、僕今どうなんてんの〜?!」
「次からは気をつけるがいい」
男を下ろし、再び階段を登り始めた。
「えぇ……。僕体重百キロ超えてるのに……」
「なんだ今の……力持ってレベルじゃなくない…?」
「ダンベル部入ってるけど退部を考えさせられた」
〜〜
校舎内を歩き回り、教室の外から部活を見て回っていたのだが、女子たちに悲鳴を上げられたりされた。
コミュニケーションを試みようとしても顔を赤くし、頭のてっぺんから煙を上げて逃げられるということが多かった。
「運動系の部活を見て回るか……」
俺は校舎内ではなく、グラウンドや体育館へ向かうことにした。
ちなみにこの高校は体育館αと体育館βと二つ体育館があったり、部活専用のグラウンドなどもあったりと、かなり規格外の高校なのだ。
普通の高校だったら体育館は一つらしいしな。
ポケットに手を突っ込みながら歩き、下駄箱で靴に履き替えてグラウンドまでやってきた。そこではサッカー部が活動をしていた。
「ん?強也じゃん!何か用でもあったか?」
少し観戦していると朔がやってきて話しかけてきた。
「いいや、部活動を見て回ろうと思ってな」
「ふーん?変わってんなぁ。あ!それだったら一回だけ試合入ってくれないか!?」
朔はハッと思いついた動作をし、顔をずいっと近づけてきた。少し汗臭かった。
「なぜだ?」
「いや〜お前が無双してくれればあいつらのモチベも上がるんじゃねぇのかなぁって」
「まあ……暇だしいいだろう」
「いよしっ!!」
本当はすぐに帰って
なので別の日にすることにしたのだ。
「制服のままでいいか?いちいち着替えるのが面倒だ」
「ああ!いいぜ!」
親指を立ててニカッと笑うと、朔以外のサッカー部たちに事情を説明していた。
「んじゃ強也はこっちのチーム入ってくれ」
「了解した」
一回だけと言っても、シュートを一回決めたらすぐに立ち去る予定だ。迷惑をかけるわけにもいかないし、他の部活も見て回りたいからだ。
手短に行くか……。
「じゃあ行くぞー」
朔は同じチームでサッカーボールを持っている。
俺は審判のスタート合図とともに前方へと走り出した。そして朔に合図をした。
「朔!ボールを蹴り上げろ!」
「えぇ?!速っ……って了解!!」
朔が思い切りボールを蹴り上げ、放物線を描いて俺へと向かってきている。
俺はボールのほうに向き、適度な高さに落ちてくるのを待っている。
人二人分ぐらいの高さまで落ちてきたらジャンプをし、空中で腰を捻ってボールを蹴った。
ボールは吸い込まれるようにシュートされた。俺が蹴ったことによって強い風も発生していた。
「朔、俺はこれで去るぞ」
「ちょ……えぇ!!何今の!!」
「さ……サッカー……?」
「人間技なのか……?」
「ちびるかと思った……」
「当たったら……」
「怖っ!」
朔よ、これはモチベーションを上げることに成功したのか?
「みんな!今のができるように練習しようぜっ!」
「いや無理だろうが!!」
「部長は何考えてんだ!」
「だったら部長がやってみせろよ!」
ギャアギャアと騒がしくなったので、俺は次の部活に行くことにした。
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