第48話 [三人で弁当]
体育が終わったら教室に戻り、制服に着替えた。
帰る際に美疾から“次は絶対負けないから!”と言われた。勝負したつもりはなかったのだがな……。
そして今日は寝坊したので弁当がない。ということで購買まで買いに行くことにした。
「師匠どこ行くんですか?」
「購買だ。弁当がないからな……。というかお前もないんじゃないのか?」
「いえ、僕はおじいちゃんが作っててくれたみたいなのであります!」
昨日作り置きしておけばよかったのだが、あの甘々チャーハンでやる気が起きなかったからなぁ……。
「それじゃあ行ってくるぞ」
「待ってください!僕も行きます!」
「お前は弁当があるだろう」
「弟子として!!」
とりあえず“弟子”と言えばなんでもいいと思ってないか?まあ買いに行くだけだし大丈夫か……。
「それじゃあさっさと———」
「………食べよ………」
アホ毛がきた。じゃなくて静音がドアを開けてまたもやってきた。
「………今、失礼なこと思われた気がする………」
「気のせいだ。そして俺は今から購買に行く」
「お弁当ないの……?」
静音がアホ毛をハテナマークにして聞いてきた。これはさっきと同じパターンになりそうだな……。
「寝坊をしてな」
「じゃあ、私も行く……」
予想が的中したか……。早く買いに行きたかったので許可し、購買へ向かった。
適当に菓子パンを数個買い、屋上まで上がった。今日は屋上に人が数人いた。
「それじゃあ早速食べるか」
俺たちは柵にもたれて座った。右には唯咲、左には静音という形だ。
「………うーむ」
この菓子パンも美味いのだが、やはり自分で作った料理の方が美味しいと感じてしまうな。
今度からは忘れないようにしなければな。
「師匠!菓子パンだけじゃ何か物足りないって思いませんか?」
「まあそうだな」
「ふふん!ここで僕はさらに弟子ポイントを稼げる方法を思いついたのです!」
唯咲が片目を閉じながら人差し指を立て、ニィっと笑っていた。
というか弟子ポイントをとは?
「はい師匠!口開けてください!」
卵焼きを箸で掴み、俺の方へと近づけてきた。
「………なんだ?毒味でもしろと?」
「ちっがいます!弟子だけいい思いをしたらダメだと思うので師匠にもおすそ分けです!」
ほう……これは手作り卵焼きだな。空洞が少なく綺麗な形をしているな……。なかなかにうまい作り方だ。
「では一つもらうか。あむっ」
「ど、どうですか……?」
なぜお前が緊張しているんだ?これはお前の祖父が作ったものなのだろうに。
「まあ普通に美味いと思うぞ」
「本当ですか!?やったぁ!!」
卵焼きを食べたはいいものの、先程から視線が突き刺さっている。それは左からだったり遠くの生徒からであった。
「…………ん!」
「………くれるのか?」
静音も箸で弁当の具材を掴んで俺の口に近づけていた。
「だがお前の弁当は小さいから一人で食べた方が———むぐっ」
「いい……私が、好きでやってるだけだもん……!」
喋っている途中に無理やり口に突っ込まれた。この料理は確か唐揚げと言ったか?
アホ毛はギザギザしており、怒っているようだった。だがなぜだ?俺を餌付けしようとしたところを唯咲に先越されたとかか?
ま、考えないほうがいいだろう。
「美味しいと思うぞ」
「———本当!?………よかった………」
アホ毛がゆらゆらしだした。機嫌が直ったようだ。
「なんだあいつ……羨ましい……!!」
「静音さんからのお弁当だと?!」
「何者だあいつ……」
「あ、あいつ確か横の唯咲さんに勝ったって新聞に……」
「え!あれが……」
周りが一瞬だけザワッとしていたがすぐに収まり、視線だけが飛んできた。
そして右からも視線が……。
「むーー!!師匠!僕のこのハンバーグをあげます!!」
「それは冷凍食品だろう。しかも菓子パンがまだあるからもういらん」
「そんなぁ!!」
菓子パンをすべて食べ終えたら俺たちは教室へと戻った。
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