第47話 [再会]




 その後は特に何もなく一時間目の授業が始まり、二時間目、三時間目とどんどんと終わり、四時間目の体育になった。



「体育だー!」


「そうだな」



 朔が三時間目が終わると同時にそう叫んでいた。体育は確か陸上をやるんだったかな。



 女子全員が教室から出て行ったら、俺たちは体操服に着替え始めた。

 着替えている途中にクラスメイトたちから話しかけられた。



「なあなあ、強也って気になってる女子とかいねぇの?」

「あ、それ俺も気になる!」

「やっぱ静音さんとか?それともこの高校の生徒会長とか!?」

「あー生徒会長はわかる。別世界から来たみたいに綺麗だからなぁ……」

「それ言うなら静音さんこそおとぎ話から飛び出してきたみたいだろうが」

「で、どうなんだよ!」


「俺は特に気になっている者はいないぞ」



 強いて言うならば俺よりも強いやつにならば興味があるが、そんな者は見つかっていない。



「というか、なぜ今こんな話をするんだ?」


「そりゃあ男子と女子が絶対的に隔離される時間で、男子が大勢いる時間は体育の着替えの時間しかねぇからな」



 ふむ?女子の前では話さないことが掟なのか?恋愛などは前世からあまり興味がなかったからわかないな……。



「師匠、着替え終わったのなら行きましょう!」


「ああ、そうだな」



 唯咲に声をかけられ、そのままグラウンドまで向かった。


 体育は別クラスと合同で行うらしい。なので見知らぬ人が大勢いた。



「はい並べー、授業始めるぞー」



 先生がやってきたので皆整列した。今日はハードル走をするらしい。走って飛んでを繰り返す簡単な競技らしい。


 先生からの話を聞いた後、準備体操をすると四人組を作れと言われた。



「強也ー!やろうぜー!」

「師匠!やりましょう!!」


「わかった」



 朔と唯咲が来たので後一人。誰でもいいから適当に———



「ねぇ、あなたって前助けてくれた人だよね」


「む?」



 適当に誰かを誘おうかと思っていたら、短髪で茶髪、褐色の肌が特徴的な女子に話しかけられた。

 どこかで会ったような……。



「この前はひったくりからバッグ取り返してくれて助かった!」


「あの時のか」



 そういえばいたな。というか同じ高校だったとはな。



「おいおい、寡黙令嬢様の次は“走り姫”様ってかぁ?」


「走り姫?なんだそれは」



 またもや朔がよくわからない単語を出してきた。



「説明しよう!“走り姫”っていうのはそこの“姫野 美疾ひめの みと”って人につけられた二つ名みたいなものだ!さらばっ!」



 新聞部副部長の太郎が説明だけして去って行った。なんだあいつは……。



「走り姫か」


「お、おい!あたしは姫とかそういうの似合わないからやめろ!」


「この高校は二つ名持ちが多いのか……」



 俺も前世ではよく二つ名などで呼ばれたものだ。まあ“最強賢者”が一番多かったな。シンプルでよかったのだろう。



「この話は終わり!さっさとハードル出しにいくぞ!!」



 ひったくりされた女子……まあ美疾と呼べばいいか。美疾が倉庫へと走り出したので俺たちも向かうことにした。


 倉庫からハードルを取り出し、指定された場所に置いていった。そして先生からストップウォッチを渡された。



「よし、それじゃあやるか。誰からやるんだ?」


「師匠!はい!僕が駆け抜けてきます!」


「そうか……だが唯咲、縮地しゅくちは使うんじゃないぞ」



 俺は小声で唯咲にそう言った。



「えぇ?なんでですか?」


「“気”に頼りすぎるとよくないからな」


「なるほど!!了解です!!」



 美疾が向こうでストップウォッチを持っており、ヨーイドンと言うと唯咲が飛び出していった。



「ほんと、唯咲くんは強也に懐いたよなぁ」


「そうだな。勝手に家に来るし、風呂も俺が入っているのに入ってこようとするし……。弟子なんかにしなければよかったな……」


「おいおい、みんなの前ではそんなこと言わないほうがいいぜ?結構唯咲くんって人気だからな」


「ほう、初耳だな」



 そんな話をしていたら唯咲が戻ってきた。



「ふぃー!普通くらいですかね!」


「じゃ、次は俺行ってくるわ!」



 朔がスタートラインに立ち、走り出して行った。



「というか、地味にあの人が僕たちのグループ入っていますね」


「そういえば自然に入ってきていたな。あまり気にしていなかったな」



 男女別々とは言われていなかったから大丈夫だろうが、男女のグループは俺たち以外にはないようだった。



「あ、帰ってきましたよ。次は師匠ですね!頑張ってください!ファイトッ!」



「あ〜私も唯咲くんからファイトとか言われたい……」

「世界記録更新できるかもしれない…ッ!」

「男だけどわかるわぁ」



 なるほど、唯咲が人気なのは本当だったようだな。


 横目で話していたやつらを見つつ俺はスタートラインまで向かった。

 スタートラインに立つと向こうからヨーイドンと聞こえたので走り出した。


 走って飛んで、走って飛んでをただただ繰り返し、美疾のところまで走った。



「う……嘘……。10.01……!?百十メートルだったら世界記録更新してる……」



 あまり力を出さずに走ったのでタイムは気にしていない。



「交代するぞ。お前も走ってくるがいい」


「あ、ああ……。あたしも負けられない……!」


「?」



 向こうについた美疾を確認し、スタートの合図と同時にストップウォッチを押した。

 そしてこちらまでついたらそれを止めた。



「ハァ……ハァ……た、タイムは?」


「えー、13.02だ」


「ぐぬぬ……」



 美疾は負けず嫌いだったらしく、授業が終わるまで何回も走り、タイムを確認した。

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