第45話 [縮地の応用]
朝、俺は頭に走った衝撃で目が覚めた。
「こいつ……俺を蹴り落とすとは……」
よだれを垂らし、腹を出しながらベッドで眠る唯咲の姿があった。
一応こいつは俺の弟子なのに、師匠をベッドから落とすのか……。
俺は朝ごはんと弁当の具を作らなければと思い、下へと降りようとした。
だが、時計を見ると、八時十五分。遅刻しそうだった。
「おい、唯咲!起きろ!」
「ん〜むにゃむにゃ……あと一時間……」
「起きろ!学校に遅刻するぞ!!」
「んがっ……師匠おはよぅございますぅ…」
ゆっくりと起き上がり、目を覚ましていた。
「今日は学校だぞ!」
「ん………?あ……やばいです!制服とか今日の用意を家置いて着ちゃいました!」
「はぁ!?」
なぜこいつは昨日俺の家に泊まろうとしたのだ……。明日が学校だとわかっていなかったのか?
「とりあえず着替え終わったから行くぞ!」
「え、でも学校の用意が何も———」
「大丈夫だ」
俺たちは玄関の扉を開け、外に出た。普通に電車で学校へ向かったら間に合わない。
ギリギリ間に合ったとしても唯咲が制服などを着ていないからダメだろうしな。
「師匠、どうするんですか?」
「ああ、人は……いないな、よし」
辺りに人がいないことを確認した。
「時間がない、だから
「え!?でもここからずっと
【
だが俺はそんなちまちまとした作業をするのではない。
「まあお前にこれはまだ早いな。だから背中に乗れ」
「え!?でもどうやって……しかも師匠に乗るなんて———」
「いいから乗れ。師匠命令だ」
「………はい」
少々強めに言い、唯咲を背中に乗せた。バックは腹の方で持っていた。
「よし。唯咲、お前の家の方角は大体あっちか?」
「はい、でも本当に行けるんですか……?」
「くくく、まあ見ていろ。いや、見れないかもしれないがな……」
「それってどういう……うわっ!!」
俺は近くの電信柱に向かってジャンプし、今は電信柱に足がついている状況だ。
「“気”を正しく使えばこういうこともできる……。【
これは【
だがこの【
前方に壁などがあったら激突して壁が崩壊してしまう。なので空中で使うことにした。
「あばばばばば!!」
唯咲は俺の首を思い切り絞めているが振り落とされないようにしているため気づいていないようだ。
この程度では全く問題ないのでそのままにしておいた。
(さてと……スキル付与、【ウィンドバリア】)
俺は下にいる人々が暴風で吹き飛ばされないようにスキルを付与していた。ちなみにスキルはすぐに解けるように設定しておいた。
スキル名を唱えなくてもスキルは発動する。が、唱えた方が威力やスキルの質が上がるのだ。
と、そんなことを言っているうちに道場のようなものが見えたので、そのすぐ近くで【
「グェ………」
大体三秒ぐらいでついたな。“気”の量をもっと増やせばさらに速くなるが、唯咲が耐えられないだろう。
「おい唯咲、生きているか?」
「な………なんとか………」
唯咲は俺が止まった途端に地面へ転げ落ち、グッタリとしていた。
「だったら制服に着替えて荷物を持ってこい。ここがお前の家なのだろう?」
「あぇ?あ……そうです……。い、行ってきます……!」
唯咲かヨロヨロとした足取りで家へと入っていった。
(この風圧にも耐えられるぐらいになってもらわなければならないな……。今度特訓に付き合ってやるか……!)
強也の地獄の特訓が唯咲に襲いかかろうとしていた。
「……何か今悪寒が……」
急いで自分の部屋へと向かっている唯咲は何かを感じ取っていた。
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