第44話 [考察と背中流しキャンセル]




「あああああ……。今日はもう何も食べたくないです……」


「それは同感だな……」



 俺たちはあんま〜いチャーハンを食べ終わった後、ソファに寝転がりながらダラダラしていた。



「ししょー。弟子として何かしたいです。何かしてほしいことはありますか?」


「うーむ……。あ、風呂を溜めなければ———」


「僕が行きます!!ヒューーン!」



 俺の独り言が終わる前に唯咲は風呂場へと駆け出した。


 最後の効果音は自分で言うのか……。


 唯咲が風呂を溜めに行っている間、俺はさっき倒した翼竜ワイバーンについて考えることにした。



 まずこの世界に翼竜ワイバーンはもういないもののはず。大昔に似たような恐竜というものがいたようだが、火山の噴火やらで絶滅したらしい。

 そして翼竜ワイバーンについていた“不可視の羽衣”は、前世で商品などとして高値で売られていたもの。


 まあ……大体予想はつく。


 こちらの世界に俺と同様にやってきて、翼竜ワイバーンを何かしらに使おうとしたところ、脱走されたということだろう。

 ついでにその誰かが持っていた“不可視の羽衣”も一緒に絡まって持っていかれてしまったという感じだろう。


 その“誰か”を知りたいのならば【記憶写しリコレクション】を使えばいいとなるが、このスキルには必要な条件がある。


 まず一つは魂。二つ目は脳みそ。必要ではないが、このスキルを最大限に活かすためのもの、それは体だ。

 魂はどうにかなるのだが、脳みそは【範囲結界・顎門あぎと】で吸収してしまったのでこのスキルは使えないのだ。


 補遺として、なぜ体を使ったら最大限に活かせるのかというとのを説明しておこう。


 理由は簡単。体の部位にも様々な現象、事柄が思い出として染み付いているからだ。

 魂だけでは見られないものもあるので、体に染み付いた思い出などからも記憶を見ることができるのだ。



 そろそろ本気で探しに行き、良からぬことを起こそうとしていたら潰しに行くのも良いかもしれないな……。



 俺の中で大体の考察を終えたら、唯咲が帰ってきた。



「ししょー!!やってきました!!」



 唯咲はビシッと敬礼をした後、俺の目の前までやってきた。



「うむ、よくやった」


「えへへ〜」



 頭をポンポンと手でやると、嬉しそうな声を出していた。

 この程度で褒めるのは間違っているのではないか……?まあ風呂は早く入りたかったし問題ないだろう。


 風呂が溜まるまではテレビを見て時間を潰していた。



 『お風呂が沸きました♪』という声を聞き、どちらから風呂に入るか話そうとしたが、先に入ってくださいと言われたので先に入ることにした。



 洗面所で服を脱ぎ、首にかけている勾玉も着替えの服の上に置いて風呂場に入った。


 シャワーを浴びていると、外から誰かか近ずいていると“気”でわかったので、スキルを使った。



「【施錠ロック】」



 小さい声でつぶやき、スキルを使用した直後、ドアを開けようとしていたが開けれない姿がドア越しに見えていた。



「ちょ……師匠なんで開かないんですか!?」


「なぜ入ろうとしている、唯咲」



 風呂場のドアでくっきりと見えるわけではないが、一糸纏わぬ姿で立っていることだけはわかっていた。



「もちろん師匠のお背中を流すためですよ!」


「いらん」


「えぇぇぇ!?」



 俺は気にせず頭を洗い始めた。



「それより服を着たらどうだ」


「あー、カゼヒイチャウカモナ〜(棒)」



 俺は無視して泡立った頭を洗い、次は体を洗い始めた。



「何か言ってくださいよ!!」


「む?まだいたのか」


「いますよ!!———ん?師匠、この勾玉はなんですか?」



 唯咲は置いてあった俺がつけている勾玉を持っているようだった。



「あ、おい。傷つけるんじゃないぞ」


「すいません……」



 まあ隠しているわけでもないし軽く説明することにした。



「それは俺の思い出の物みたいなものだな」


「へー……あ!じゃあ僕の組紐と同じようなものですか!?」


「まあ……そんな感じだな」


「お揃いみたいですね!!」


「全然見た目が違うではないか」



 俺はすでにシャワーを止め、風呂に浸かっていた。



「と言うか服を着て待っていろ。背中を流すことはもうできないぞ」


「えー……。わかりました……」



 唯咲はやっと洗面所から立ち去ったようだ。


 風呂から出た後は唯咲の番となり、風呂に入ってもらった。



 そして今日も泊まるらしいのでどこで寝るかと言うまでもなく、一直線に俺のベッドに向かっていた。


 問題はないが、少し暑い……。



 まだ夏の終わりなので少々暑かったが、すぐに眠りについた。

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