第43話 [また来た]
家のすぐ近くまで来たのだが……見たことあるピンク髪がいた。
「あ!!師匠どこ行ってたんですか!?」
「なぜここにいる……唯咲」
俺の家のドアの前でうずくまっていた唯咲が勢いよく立ち上がり、俺の目の前までやってきた。
「まず僕の質問に答えてください!どこ行ってたんですか!!」
「バイトの代理とショッピングモールに行っていたのだが」
「なんで僕も誘ってくれないんですか!?」
「誘う理由もないし連絡先交換していないだろう……」
「じゃあはいっ!!」
唯咲はポケットからスマホを取り出し、ジーーっとこちらを見つめていた。
「………なんだ?」
「連絡先ですよ!」
「そういうことか」
俺もスマホを取り出し、連絡先を交換した。
「ふっふっふ……。これでいつでも連絡できますね!覚悟しといてください!」
「何を覚悟しておけばいいんだ?交換したことに後悔しているな」
「またまた〜」
唯咲はなぜかニコニコしている。対して俺はため息をついていた。
「そういえば師匠、さっき空に何か感じませんでしたか?」
「………いいや、気のせいだろう」
「そうですかねぇ」
まあ“気”が完璧に使えるのならば一瞬でそこに何かがいるとわかっていただろう。
一応師匠をしているのだから後々“気”についても教えるとしよう。
「師匠、僕ここで数時間も待ってたんですよ?」
「………そうだな」
唯咲が話し始めたが、なんだかデジャヴを感じるな……。
「なので今日泊まらせてください!」
「今日もだな……。まあ断る理由も特にないし、許可してやるか……」
「バンザーイ!!」
唯咲は満面の笑みを浮かべながら両手を挙げて喜んでいた。
「さっさと入るぞ。夕飯の用意をしなければならない」
「了解です!」
俺と唯咲は家の中へと入り、手洗いうがいをした後、早速料理をすることにした。
「師匠、今日は何を作るんですか?」
「うーむ……。特に決めていなかったな……」
「じゃあ師匠!僕に作らせてください!」
「お前がか?」
「はい!ちゃんと家でも練習したからできます!!」
唯咲はビシッと手を挙げているが、こいつは前まで包丁の持ち方すらわからなかった初心者だ。
だが、弟子の成長を見てやるのが師匠の役目だろう。
「いいだろう。ではお前に任せる」
「合点承知!」
冷蔵庫の中には色々と具が入っているし、調味料も切らしていないから問題ないだろう。
俺は意気込んでいる唯咲がいるキッチンを後にし、自分の部屋へと戻った。
「そういえば何か紙をもらっていたな……」
確か……沙夜香だったか?そいつにもらった紙切れをポケットから取り出した。
「これは……連絡先か」
登録しないと面倒なことになる予感がしたので、追加することにした。
続け様に連絡先を交換している気がするな。
『よろしく頼む』
それだけ送り、俺はベッドに転がったが、一瞬でスマホが鳴った。
『よろしくお願いします!!』
『いろんなお話をして仲良くなれたら嬉しいです!』
『それとあの時助けていただきありがとうございました!』
『でもきっとあれが運命の出会いだったんですよね!!』
『それにあの時———』
これ以降は永遠と運命やらなんやらと、メルヘン的なことを語り続けていた。
俺は相手の勢いがすごすきたため、返信することができないでいた。
そんな中、下から唯咲の声が聞こえて来た。
「ししょーーー!!でっきましたぁー!!」
「おお……ナイスだ唯咲」
俺は“飯の時間だから一旦去る”とだけ言い、下に降りた。
「じゃじゃーん!どうですか!?」
「チャーハンか……」
最近食べたばかりだが……まあいいだろう。頑張って作ってくれたようだしな。
だが豚肉ではなく、ウィンナーのチャーハンであった。
米が所々焦げていたり、ウィンナーの形が歪だったが、普通にうまそうであった。
「では早速食べるか」
「はい!」
俺たちはチャーハンを皿に乗せ、テーブルへと運んで食べることにした。
「「いただきます」」
スプーンでチャーハンを一口食べた。唯咲は緊張した様子で俺を見つめていた。
食べてみて出た感想。それは———
「甘すぎる……」
確実に塩と砂糖を間違えて入れている……。食えないことはないが美味しいものではなかった。
「そ、そんなバカな……!」
俺の言葉を聞いた唯咲もチャーハンを一口食べた。すると一瞬、眉間にしわを寄せた後に水をゴクゴクと飲み始めた。
「…………。すいません、師匠」
「いや……。失敗も成長するために必要なことだ。その失敗を次に活かすように」
「了解です……。師匠、これ……」
「お前が作ったのだから、責任を持って食べるんだぞ。俺も手伝うから……」
「ありがとうございます……」
その後俺たちは甘いチャーハンを黙々と食べた。
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