第42話 [最強賢者vs翼竜]




 俺がトイレから戻ると、田辺なんとかがいた。

 無理矢理静音を連れ出そうとしていたところを追っ払うことに成功した。


 この前、雨が降っていた日に俺を襲ってきた連中があの男の差し金で、それに失敗したと聞かされ、俺の強さを思い知ったと言ったところか。



 というか、なぜ自ら嫌われるような行いをするのだ?あの男は静音のことが好きなのだろう?

 やはり恋愛などはよくわからないな……。



「強也……?」


「む、ああ。なんでもないぞ。次はどこへ行くんだ?」


「次は……———」



 その後は適当にショッピングモールをある程度回り、その後解散という形となった。


 解散する際、また家に行くといい口論になったが、執事のような人が来て、高級そうなくらい車に乗せられてお別れとなった。


 俺も近くの電車に乗り、そのまま家に帰ろうとしていたのだが……。



『グ……ォ……ォォ……!』


「今のは……」



 空から何かの鳴き声が聞こえてきた。

 しかも上空から魔力マナも感じられる。


 俺は電車に乗るのをやめ、人気のない場所へと移動してスキルを発動させた。



「【神眼しんがん】」



 このスキルはどんなに高度な隠蔽魔法でも見抜くことができるスキルだ。スキル使用時は目が金色に発光する。

 このスキルは獲得がすごく難しい。それに使うと目にとんでもない痛みが生じると言われている。

 だが俺にはその痛みは効かない。色々と耐性がついているからだ。



 すると空には暴れながら飛んでいる翼竜ワイバーンがいた。


 “翼竜ワイバーン”。それは前世ではポピュラーな存在であった。足は二本で、前足は二つは羽となっているものだ。ドラゴンとは違う生き物だ。



「なるほど……。あの羽衣のおかげでバレていないのか」



 俺が【神眼しんがん】で見たところ、“不可視ふかし羽衣はごろも”というのが引っかかっており、それで普通の人には見えないらしい。

 不幸中の幸いだな。



「このまま放っておいたらいつか被害が出るだろう……。やるか」



 俺は近くの立体駐車場の一番上まで一回のジャンプで登り、人がいないのを確認したらスキルを発動させた。



「【創造クリエイト】……そしてスキル付与、【鎖薔薇くさりばら】」



 【創造クリエイト】はその名の通り物質を作り出すスキル。

 俺が作り出したのは一本の棒だ。そしてそれに“スキル付与”をした。


 スキル付与はもその名の通りのものだ。対象にスキルを付与することである。



 そしてもう一つつけたスキルは……いや、見たらわかるだろう。



「さぁて……行って、こい!!」



 俺は棒を翼竜ワイバーンに向けて思い切り投げた。


 一直線に飛んで行き、そのまま翼竜ワイバーンに突き刺さった。



『グァァァァ!!』



 棒が刺さると、その棒から緑の棘が生えた茎が翼竜ワイバーンにまとわりついて身動きができないようになった。


 これが付与したスキル、【鎖薔薇くさりばら】だ。薔薇の茎が鎖のようにまとわりつき、身動きできないようにすることができるスキルだ。

 さらに出血するとその血を吸われ、綺麗な薔薇が咲き誇るのだ。



 翼竜ワイバーンはそのまま落下していた。



「【透明化インヴィジブル】」



 これは風魔法の高等スキルだ。前世でこのスキルを見せたところ、男共に教えてくれと懇願されたものだ。

 この世界でも同じようなことになる気がするな……。



 俺はその場で踏ん張り、翼竜ワイバーンに向かって飛んだ。

 空中では身動きできないので、【重力操作グラビティ】で翼竜ワイバーンのすぐ近くまで接近した。



『グゥゥウウ!!』


「安心しろ、すぐに楽にしてやる」



 俺は目の前にいる翼竜ワイバーンに睨まれていたが、ニヤッと笑いながらそう言った。



「闇魔法……【範囲結界・顎門あぎと】」



 俺の右手を翼竜ワイバーンに向け、そう呟いた。


 すると腕が漆黒に染まりながら巨大化し、さらに爪が鋭くなった。

 手はドラゴンの顎のようになっていた。


 そして俺はその手で翼竜ワイバーンを喰らった。



 このスキルは結界であるが、相手を閉じ込める専門の結界である。


 この結界に入ったものは、死ぬまで閉じ込められる。そしてその中で死んだもののスキルなどは全てスキル発動者に吸収されるのだ。



 翼竜ワイバーンは十秒もしないうちにに絶命し、全て俺に吸収された。



「さて、“解除”。やはり雑魚だったな」



 俺はスタッと下に降り、【透明化インヴィジブル】も解除した。



「どこからやってきたのか……それになぜ“不可視の羽衣”を持っていたのか……」



 “不可視の羽衣”は前世では高値で取引されていたものだ。

 どうしてこの世界にあるのか……。



「とりあえず帰るか……」



 こんなところで考えても仕方ないので、家でゆっくり考えることにした。

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