第41話 [ショッピングモールにて]
「ここ……」
「ここか」
着いたのは二時半ごろ。かなり大きな建物で、中には様々な店があるらしい。
俺たちは中に入ったが、入口の近くで突っ立っていた。
「………強也、どこ行きたい……?」
「お前が行きたいと言ったのだろう?お前の行きたい場所に行けばいいのではないか?」
「いや……そう、だけど……。そうじゃなくて……」
行きたい場所に行けばいいのに。
あとアホ毛が上下にパタパタと動いており、少し焦っているように見えた。
「只今より、クレープ半額セールが開催します!一回奥にクレープ屋はあるのでぜひお越しくださーい!!」
「何っ!?」
クレープだと!?確か喫茶店でも売っていた甘味なのではないか!?
是非とも食べてみたい!
「強也……クレープ食べたいの……?」
「はっ!?い、いや別に……。お前の行きたいところでいいぞ……」
「ふふっ……じゃあクレープ屋さん行こ……」
「!」
アホ毛は通常通りピコピコと嬉しそうに跳ねていたが、なんと口角が少し上がっていたのだ。
表情筋が働くのを初めてみ見た気がするな……。
そして別にいいと言ったのだが、クレープ屋へ向かうことになった。
そしてクレープ屋に着いたのだが、種類が多すぎてよくわからなかった。
「チョコにバナナやらイチゴの……なんだこれは……。よくわからないな……」
「私は、これ……」
静音はバナナとクリームとチョコソースがかかっているクレープを頼んでいた。
「むむむ……では俺はこれにしよう」
俺はイチゴとクリームとブルーベリーがついているものにした。
「俺が払うから財布出さなくていいぞ」
「え……大丈夫。悪いし……」
「バイト終わりだし心配するな」
お金を俺が払うか、自分の分は自分で払うかということで少し口論となったが、結果は俺の粘り勝ちとなった。
「はい、ではこちらお釣りになります〜(あーー、末長く爆発しやがれバカップル…)」
店員からクレープをもらい、空いている席を探した。
「席は……あそこでいいか」
「うん……」
席に座り、クレープを一口食べた。
「おお!美味いな……!」
「ん……。美味しい……」
やはり甘味は美味いな。前世ではあまり甘味がなかったのでこちらの世界のをもっと食べてみたいな。
そして俺たちはクレープを食い終わった。
食べ終えると、トイレに行きたくなった。
「静音、ちょっとトイレ行ってくるから待っておいてくれ」
「了解……」
アホ毛は丸のマークをしていた。
〜静音side〜
「…………危なかった………」
今日はショッピングモールに誘って強也の好きなものなどを探り、秘密を暴こー。という目的で誘った。
そして着いたはいいものの、どうやって行きたい場所に行かせるかを決めていなかった。
クレープに救われた。クレープに感謝感激。
強也のことがもちろん気になる。
なぜあんなに強いのか。なぜ強いのに優しいのか。なぜ他の人とは違うように見えるのか。
気になって昼は寝れない。夜はきちんと寝ている。
兎にも角にも、強也の秘密を暴いてスッキリしようということだ。
さて……強也がトイレから帰ってきてからの作戦をどうするか考えよう……。
まずは強也に———
「静音ちゃん!?奇遇だね、こんなところで会うなんて!」
「………」
面倒な人が現れた。田辺 狂吾だ。
この人は前から私にちょっかいを出してきたり、嫌な視線を送ってくる人。
だからこの人は嫌い。
早く強也帰ってこないかな……。
「も、もしよかったら俺と一緒に店回らない?」
「……ごめんなさい。私、一緒に来ている人がいるから……」
「えー?そう言わずにさ、ほら行こう!」
「やめて……」
この人は私の腕を掴み、席を立たせようとしてくる。
なぜこんなにも強引に……。しかも焦っているようだった。
「ほら早く!」
「嫌……離して……!」
私が無理矢理席を立たされ、連れていかれそうになった次の瞬間。
「おい、何をしている?田辺なんとか」
「なっ……テメェ……!」
「強也……!」
ハンカチで手を拭きながら立っている強也の姿があった。
「ふむ……静音、こいつも誘っていたのか?」
「違う……。この人が勝手に来た……」
田辺は眉間にしわを寄せながら歯を食いしばっており、怒っているようだった。
「静音も嫌がっているようだし、離してやったらどうだ?離さないのならば……実力行使となるが……。どちらがいい?」
「———ッ!!覚えてやがれ……!!」
私の腕を離し、どこかへ歩いて行った。
「はぁ……つくづく面倒な男だな。田辺なんとかは……」
「うん……本当に、面倒な人……」
強也は田辺の歩いて行った方向を見ながら溜息を吐き、そう言った。
「大丈夫だったか?静音」
「うん……。何もされなかったから……」
「なら良かった」
「———………?」
「どうした?」
「いや……なんでもない……」
なんだろう……。なんだか胸の奥が熱くなったような……?
私の感情?うれしい?何か違うような……。
私はこの疑問を一旦しまい、強也と再び歩き始めた。
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