第37話 [魔法]




「ふぅ、ここまできたらもう大丈夫だろう」



 俺はスーパーまでダッシュしてきた。息は全く切らしていない。



「財布は……あるな。よし」



 スーパーに入り、野菜やら肉を買い、そのまま電車に乗って家まで帰った。


 帰る頃には空は朱色で、夕方だった。



「冷蔵庫にしまうか」



 ビニール袋に入っている野菜などを冷蔵庫に入れて、少し早い気がするが早速料理を作ることにした。



「今日は……そうだな、チャーハンを作ろう」



 冷蔵庫からネギと卵、豚肉などを用意してスタート。



 ネギを【ウィンドカッター】でみじん切りにし、ついでに豚肉も適当な具合に切る。


 棚を漁っていたらチャーハンを作る専用の丸っぽいフライパンがあったのでそれにまず卵を落とし、ほどほどに固まったらそれを取り出す。


 次に、切ったネギと豚肉を入れて炒める。が、その前にネギと豚肉にごま油とにんにくなどの調味料を混ぜてから入れる。


 それもある程度炒めることができたら、ごはんとさっき焼いた卵を投入。


 ごはんがパラパラになったら完成。



 一旦茶碗に入れ、それを別のさらに逆さまに置き、それを外すと見事なドーム状なチャーハンが出来上がった。



「なかなかにいい出来栄えだな。いただきます」



 スプーンチャーハンを一口。



「ん、美味い!」



 それも食べ終え、皿は【清掃クリーン】で綺麗にしてから棚に片付けた。



 暇だったので、なんとなくテレビをつけてみた。


 特に面白い番組もやっていなかったので、風呂を溜めに行った。



「溜まるまで暇だな……よし」



 俺は風呂が溜まるまで、少し遠くにある山の中で魔法の練習をすることにした。



「地図だと…ここでいいか。【空間転移テレポート】」



 俺は山の中へ空間転移テレポートした。そこは真っ暗だった。



「流石に暗いな……【暗視ナイトビジョン】」



 スキルを使い、あたりが普通に見えるようになった。



「さて何からするか……とりあえずスキルは使わずに魔法だけを使ってみるか」



 俺は空中に火、水、風、光、闇の球をそれぞれ出し、ビュンビュンと自由自在に動かしていた。



「基本的なものは問題ないな」



 ん……?前世では同時に違う魔法を使うのは三つまでやらなんやらとか言っていたような……。まあ気のせいだろう。そんな落ちぶれているわけない。



「さてそれでは次は……む?」



 不自然に物音がする。自然の音ではなく、生き物が動く音。

 俺は魔法を使うのを中断した。



「誰だ」



 俺は音のする方角に向かった。そして近づいたら声をかけた。



「まさかこの俺たちがバレちまうとはな…」

「つかなんで夜にこんな山ん中に来てんだよ」

「しかもなんも持ってきてねぇ。馬鹿だろ」



 目の前に現れたのは三人組の男集団で、皆目に“ナイトビジョンゴーグル”という物をつけていた。さっき鑑定してわかった。


 少し離れた場所にいたため、魔法を使っているのは気づいていなかったようだ。



「お前らこそこんな山中で何をしているんだ?……どうやら犯罪に手を染めていそうだが……」




 手にはナイフなどの武器を持っていた。



「サツの回し者か……?」

「手短に行こうぜ」

「助けなんか呼べねぇから大丈夫だろ」



 俺は丸腰。だが魔法を使うにはちょうどいいな。



「ほいっ」


「ヴヴァァアアア!」



 まずは手始めに電撃を食らわせた。


 それほど強い魔力マナを込めていないし、スキルでもないただの魔法なので死にはしないだろう。


 そして一人は気絶した。



「なっ!?なんだ今のは!!」

「わ、わかんねぇけどやるぞ!!」



 残りの二人がナイフを持って飛びかかってきた。



「次はそうだな……光魔法……」



「うわっ!」

「眩しい……。あれ……?」



 俺は光魔法で相手の一人の膝を光で焼き、穴を開けた。



「ギャアアア!!痛い痛い!!」

「なっ!大丈夫か!!なんなんだよお前!!」


「まあ問題ないな。魔法はしっかり使えるし、操作も容易い」


「何言ってやがる!!クソッ……!これで死ねェ!!」



 男が胸ポケットから拳銃を取り出した。

 この世界にある銃を見るのは初めてだな。存在は知っていたが……どの程度か。



 三発撃ってきたが、俺は集中してスローモーションに見えていた。


 そして三発全てを手で掴み取り、その場に捨てた。



「ま、こんな程度か」


「は………?」



 そろそろ風呂が溜まった気がするな……。だが野放しにしたら逃げられてしまうし……。脅しておくか。



「【治癒ヒール】」



 俺は気絶している者や痛みでのたうち回っている者を正気に戻した。



「よく聞け。俺はこれで帰るが、お前たちは警察に自分たちで出頭しろ。もし出頭しないのならば……【大精霊の息吹シルフィードブレス】」



 俺は手を後ろに伸ばし、スキルを発動させた。



「次に【重力操作グラビティ】」



 後ろにあった山は宙に浮き、その山で見えなかった月明かりも見えるようになった。

 【大精霊の息吹シルフィードブレス】という風のスキルで山を切り、【重力操作グラビティ】で浮かせたのだ。



「ば……バケモノ!!」

「や、山が!!」

「なんなんだよ、お前!!」



「はぁ……同じような台詞セリフばかりだな……。まぁいい。いいか、俺はこのようにお前たちをいつでも粉々にできる」



「お前たちが出頭しなかったらすぐにわかるからな……。あと俺のこの力は絶対に言わないこと。言ったら……わかるな?」



 俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、そう言った。


 三人組はブンブンと顔を上下に動かして肯定した。



 俺は山を元どおりにし、空間転移テレポートで家に戻った。

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