第36話 [とある姉妹]
喫茶店の外に出た俺たちは解散にすることにした。
唯咲は解散と言うとゴネていたが、破門にするぞと、少々脅すと大人しく帰っていった。
俺もすることがなく、帰ろうとしていた。
が、トラブル発生。
「うわっ!?ひったくり!!」
すぐ近くにいた女性のバッグがバイクに乗っている男に取られていた。
「くそっ……!」
「む?」
ひったくられた女性はバイクを追いかけていた。
「早いな……だが流石に追いつかないだろう……。仕方ない……」
その女性はなかなかに足が早かったが、流石にバイクに追いつけることはなく、差が開いていた。
あたりはガラッとして人が全くいなく、助けも入らなさそうだった。だが好都合だ。
「【
俺は走っているバイクの走行方面の先に
念のため【
「影魔法……【
このスキルは、地面にある影を沼のようにして沈めさせることができるスキルだ。
条件は下に影があること。周囲の環境が暗ければ暗いか、
「うわっ!?な、なんじゃこりゃァァ!!」
バイクだけ影の沼に沈み、バイクは急ブレーキがかかった状態になったので、運転手の男は俺めがけて一直線に飛んで来ている。
「ふっ!」
「グバァッ!」
俺はその場で一回転し、回し蹴りを男に食らわして気絶させた。
「“解除”……と」
スキルを解除し、沈みかかっていたバイクは元どおり。
俺に蹴り飛ばされた男まで歩き、バッグを手に取った。
「はぁ…はぁ…あのっ……ありがとう、ございます……」
ひったくられた女性は息を切らしながら走り、俺に追いついた。
スキルには気づいていないようでよかった。
髪型は短く、男っぽい女性であった。陸上部か何かなのだろうか。
髪の色は茶色で……どこかで似た顔を見たような……。まあ気のせいか。
「うむ、今度はちゃんと持っておくんだぞ。俺は帰る」
「へっ?あ、待って!お礼を!!」
「じゃあな」
俺は警察に事情聴取とやらをしたくなかったので走って逃げた。
(あ……帰りにスーパーを寄らないといけないな……)
〜〜
「い……行っちゃった……。にしても足早いな……。あたしより足早いかも……?これでも帝王高校陸上部なのに……」
私より背が高く、紫の髪と瞳が特徴的なイケメン男子に逃げられてしまった……。
あたしが呆然と立っていると、電話がかかってきた。
「あれ、サヤカ姉さんからだ。もしもし」
『あ!もしもし美疾!?私とうとうさっき王子様見つけちゃったの!!』
「へー、やっとか……」
あたしの姉は“
これまででも数多のイケメンに告白されてきたらしいけど、全て断っているらしい。
ていうかあたし今ひったくりにあった後だから警察に連絡したいのに……。
幸いにもひったくり犯は蹴りを入れられて気絶してるからいいけど……。
「にしてもサヤカ姉さんが一目惚れ?するなんて、どんな相手だったの?」
『ええっとね……濃い紫色の髪に紫色の瞳をした背が高いイケメンの男の子だったわ!』
「ん……?」
『?どうしたの?美疾』
背高くて紫の髪と目……そしてすぐ近くには姉さんが働く喫茶店……。
確定じゃん……。
「いやー……あたしその人今さっき会ったわ……」
『えぇ!?もしかして知り合い!?確かに私の妹は可愛くて足も早くて有名なあの“
「ぅ……」
突然姉さんが大声で話しかけてきたので鼓膜が破れそうだった……。
にしても可愛いて……姉さんの方が胸大きいくせに……あたしなんかまな板だぞ……。
「さっきひったくりからバッグを取り返してもらっただけだよ……」
『あ、なーんだならよかっ……ってひったくり!?大丈夫なの!?警察に連絡は!?』
「姉さんが電話してるからできてないんですけどぉ……」
『あっ、そうだったのね!ごめんなさい、また掛け直す!!』
ツー、ツーっという電話が切れる音がした。
「にしてもサヤカ姉さんが惚れた相手かぁ…。確かにちょっとカッコよかった……かな?」
あたしはそんなことを呟き、警察に電話をかけるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます