第25話 [敵襲]
七時間目も終わり、帰ろうとすると静音が案の定俺のクラスへとやってきた。
「強也……帰ろ……」
「悪いな、今日はダメだ」
「なんで……?」
あの男が何かしら企んでいるから巻き込むわけにもいかない。
俺はそのことは伝えず、なんとか一人で帰ってもらうことにした。
最後はしょんぼりとしたアホ毛で帰って行った。
「さて、俺も帰るとするか」
下駄箱に向かい、そこにある傘を手に取り、俺は駅へ歩き始めた。
校門を出ると、すぐに誰かに後をつけられているということがわかった。
おそらく田辺なんとかの差し金だろうと思い、俺は駅への道を外れて人の気配がない広場へと足を運んだ。
「おい、さっさと姿を現わすがいい。いい加減飽きたぞ」
俺がそう言うと、四人の傘をさした男たちが出てきた。
「おいおい、いつからバレてたんだよ」
「問題ありません。私たちのことがバレていたとしても結果は同じだったでしょう」
「あの男がいつものお坊ちゃんのターゲットか」
「手強そうだが、燃えるぜ!!」
男たちは傘を閉じ、臨戦状態となった。
男たちはそれぞれ武器を持っていた。
バット、投げナイフ、木刀、あとはあれは…確かナックルだったか。
俺も傘を閉じ、同じく臨戦状態となった。
相手が武器を持っているので俺も傘を武器にすることにした。
“目には目を、歯には歯を……武器には武器を”。ハンムラビ法典だ。
雨が降り注ぐ広場で俺と男たち四人は睨み合っていた。
俺は閉じた傘を右手で持ち、左の腰に当て中腰になって構えていた。
「先手必勝です!私たちの仕事を全うしますよ!」
スーツを着てメガネをかけている男が、ナイフを俺に向かって投げつけてきた。
俺は刀を抜刀するが如く傘を振り、投げてきたナイフ一本を弾いた。
「弾かれたか……だが俺たちもいることを忘れんなァ!!」
スキンヘッドの男がバットを持ちながら走り、そのバットを上から振り下ろしてきた。
俺は先程抜刀したので右側に傘があった。
その右側にあり、右手で持っている傘を相手の手首に向かって当てた。
そしてバットは振り下ろせることはなく、腹がガラ空きになったのでそこに傘の先端を突き、後ろに下がらせた。
「ぐぅっ……」
相手は一旦怯み、腹を抑えていた。
「我らの仕事を全うさせてもらう!」
「俺の拳を喰らいやがれえェェ!!」
木刀を持っておりポニーテールで侍のような男とナックルをつけたモヒカン男が襲ってきた。
侍男は姿勢を低くしながら木刀を抜刀して斬りかかろうとしており、モヒカン男はその逆に回り込んでおり、俺は挟まれている状況であった。
俺は傘を構えて己を中心に一回転をし、薙ぎ払った。
「な、なんだこの威力!?」
「強ぇ……」
「まだまだぁ!!」
俺はモヒカン男を傘で広場の奥まで吹っ飛ばしてしまった。
「おっと、力加減が難しいな」
少し離れた場所にはメガネスーツが様子を伺ってナイフを投げようとしているが、侍男がいるせいで投げれていない。
「我こそまだまだだ!!」
木刀を顔に突こうとしているが、俺はヒョイヒョイとすべて避けている。
「………侍のような容姿をしているのに“気術”を使えないのか?」
「……?なんだそれはっ!」
俺が話している間も木刀で攻撃しようとしていた。
本当に気を使える人間は少ないようだな。日本の侍は“気術”を使えるのかと思っていたが、それは淡い妄想だったようだな。
「“気”っていうのはなぁ……こうやって使うんだよ…」
俺は殺意を込めて侍男を睨んだ。
するとビクッとなり、動けなくなっており、全身が震えていた。
「な……んだ……こ、れ……」
「これが“気”だ。戦うならそれぐらいは持ち合わせてこい!!」
動けなくなった侍男の脇腹に“気”を込めた傘を振り当てて吹き飛ばした。
気を込めることにより、武器が壊れにくくなったり威力が上がったりするから気術を使える方がいいのだが……。こいつらはダメだな。
「とりあえず一人……」
「Mr.SAMURAIがやられた…!?ですが私のナイフが当たる確率は百パーセントです!」
メガネスーツがナイフを三本同時に投げているが、俺には無意味だ。
———……というかMr.SAMURAI?ダサすぎじゃないか?
「つまらん。お前は戦闘不能になっておけ」
俺は傘を口に咥え、ナイフ二本を両手の人差し指と中指で挟んで止めた。
ラスト一つは軽く避けた。
「私のナイフを指で止めた……!?」
「
両手のナイフをメガネスーツへ投げ、両手に突き刺すことに成功。
「グワァァァ!!!手が……私の手がァァ!!」
「よくもっ!!」
復活したスキンヘッド男……もとい、ハゲでいいか…。ハゲがバットを持って走ってきた。
「ペッ!咥えるもんじゃないな……」
再び右手に持ち、ハゲが俺の正面までやってきた。
「食らいやがれ……“ホームラン乱れ打ち”!!」
ふざけたことを叫んだと思ったらバットを目の前で振り回してきた。
たかがスピードを上げて振り回しているだけだろう。
俺は避けることなく、俺に当たろうとするすべての打撃を傘で受け止め、ハゲの体力がなくなるまでそれをやり続けた。
「はぁ……はぁ……なんだ……こいつ……」
「なんだ、もうおしまいか?俺を楽しませてくれよ……」
「ヒッ……」
跪いているハゲに向かって笑いながらそう言うと恐れられてしまった。
メガネスーツは相変わらず痛い痛いと叫んでいる。
侍男はとっくに気絶をしていた。
そういえばあのモヒカン男は……。
「おいおい、この一瞬で何が起こったんだよ!!」
「む、帰ってきたか」
最後の一人だ。だがもうこいつらの戦法は飽きた。
なので一瞬で終わらせることにした。
「【
「んなっ!?消えた!?」
「馬鹿が……後ろだ」
「ガッ………」
俺が首に傘の持ち手の部分を首の頚動脈に当てて気絶させた。
「実につまらない遊びをありがとうな」
「お、お前は一体…何者なんだよ!?」
気絶していないハゲがそう言ってきた。
「俺か?———俺は最強の男子高校生だ」
空は戦闘が終わったとともに晴れだしてきた。俺の勝利を祝福しているように思われた。
俺は場所を移動しようと思ったのだが誰か見ている。
だが殺意はない。好奇心の視線か?
俺は早く風呂に入りたかったので人の気配がない場所まで走り、【
〜〜
「———なんなんだあいつは……。しかも気術を使っていた……」
傘をさしながら、強也の戦闘を見ている人がいた。
「あいつなら僕の……」
最神は何者かに目をつけられてしまった。
そしてそれは後日わかるのであった。
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