第24話 [無効]




 クラスメイトは犯人探しをしようと言っているが、俺は乗り気じゃない……というかこの程度のことが嫌がらせ?笑わせてくれるな。


 前世では迫害をされたり、わざわざ召喚した魔物を俺に押し付けたり、などなど……。

 様々な嫌がらせを受けてきた。


 力持つ者、ある程度の覚悟を持って力をつけなければならない。嫉妬やらなんやらで嫌がらせをしてくる者がいるからだ。



 そして俺がクラスメイトに必要ないと言うと、皆渋々引き下がっていった。



 そして一時間目が始まった。


 一時間目の授業は日本史。画鋲を取っていたから教科書を出し忘れていた。

 机から取り出そうとしたが、日本史の教科書がなくなっていた。



(おかしい……確実に机の中に昨日入れてきたはず……)



 はぁ…。面倒なやつだ。


 奪われたのが日本史だけだったな。おそらく被害を拡大させすぎてしまうと問題ごとになってしまい、バレてしまうから……という感じか?



 なかなかに策士なんだな。馬鹿丸出しなのかと思っていたのだかな。



 家に帰ったら魔法で複製するか……。



 まあ、複製しなくてもほぼ全ての内容を覚えているので問題はないがな。



 田辺なんとかはいい気味だとか思ってそうだが、俺には痛くもかゆくもないな。



 一時間目は終わり、その後は特に困ったことも起こらず、四時間目も終わり、弁当の時間となった。



「強也、今日は弁当一緒に食わないか?」


「む、いいぞ」



 弁当をバッグから取り出して、強也と机を合わせた。



「お!強也それ弁当か!?母さんにでも作ってもらったのか?」


「いいや、自分で作ったぞ」


「へー、偉いなー。なんか具を一つくれよ」


「いいぞ、ちょうど俺も味の感想が聞きたくてな」



 俺は弁当の蓋を開け、中身を見せた。



「うわっ……すげぇ……」


「ふむ…ではこの卵焼きをやろう」


「お、サンキュー。あむっ。うんうん……」



 朔は目を閉じて味を噛み締めていた。


 まあまあに美味いとは思うがどうだろうか……。



「お前……卵焼きの店開いたらどうだ……?」


「?」


「いやいや、美味すぎだろ!!何これ、俺の母さんの卵焼きより美味いぜ!!」


「そうか、ならよかった」



 成功だったようだ。

 しかも好評だったので満足。


 俺も弁当を食べ始めようとすると、またもやドアが開き、例の女子が現れた。



「食べよ……」



 アホ毛をゆらゆらと揺らしながら俺に近づいてきた。静音である。



「今日は朔と教室で食べようと思っていたのだが……」


「さ、く……?」



 俺が朔の方へと目を向けると、静音もそちらを見た。



「あなたが……さく……?」


「あ、ああ……一応前に会ってるよ……」


「顔は知ってた……。じゃあ今日は、三人で……———」


「ねぇねぇ、よかったら俺も混ぜてくれよ」



 田辺なんとかが近づいてきて、そう言ってきた。



「……」



 俺は無言でそいつを睨んでみた。



「っ……!?」


「えーっと、確か狂吾だったっけ?俺は別にいいぜ?強也は?」


「……まあ、いいだろう」



 朔はやはり性格がいいな。ま、こいつがどれほどの嫌がらせをするのが見届けてやろう。


 近くの席には誰も座っておらず、皆各々の友達と一緒に食べていたので、近くの椅子をもらって二人は弁当を食べ始めた。



「……それ、強也の弁当……?」


「ああ、よかったら食べてくれないか?感想が聞きたくてな」



 毛をハテナマークにしながらそう言ってきたので、静音にも卵焼きをあげることにした。



「俺にもちょうだいよ」


「………構わないが……」



 ラスト二つだったが、二人にあげることにした。田辺なんとかは何を企んでいるのか、不敵な笑みを浮かべながらそう言って俺の弁当から卵焼きを取ってきた。


 ちなみに朔は自分の弁当に夢中になって食べている。



「ん!美味しい……」



 静音はアホ毛をくねくねと動かして幸せを表現していた。



「ぐぬぬ……」



 田辺なんとかは箸で卵焼きを持ちながら睨みつけていた。



「あっ、落としちゃっ……———」



 この男は俺しか見ていない瞬間にわざと卵焼きを床に落とそうとし、箸から床へと卵焼きを落とした。



 だが俺は一瞬で卵焼きを掴み取り、流れるように箸をこの男の弁当の上まで持ってきた。



「食べ物は……粗末にすんなよ……」


「なっ……」



 俺は睨みつけながら低い声でこの男にしか聞こえないぐらいの音量でそう言い、田辺なんとかの弁当の上へと卵焼きを置いた。


 そしてこいつはおとなしく卵焼きを食べた。



「くそっ……うめぇ……」



 くくく、それはそうだろう。


 俺は作戦を失敗したのが満足だったのでそのまま弁当を食べ進めた。



「………ご馳走さま……。強也の卵焼き、店、開けるよ……」


「そ、そうだね静音ちゃん。よかったらさ、今度一緒に———」


「バイバイ」



 静音はそう言い、自分の教室へと帰って行った。

 弁当を食べている時も静音にあのような素っ気ない態度をとられており、最後の最後までそんな風にされていたので思わず笑ってしまった。



「くくく……」


「帰りは覚悟しとけよ……」



 田辺なんとかに去り際にそう言われた。



「何が待っているのか……楽しみにしておこう」



 俺を楽しませてくれるのだったら大歓迎だ。



 その後も何もなく、七時間目も終わった。

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