第23話 [田辺の嫌がらせ]
いつも通り、スマホのアラームで目覚めた俺はキツネのように細い目をしながら階段を降りた。
今日は早起きをしたのだ。時刻は六時半。
理由は弁当を作るためだ。
まず、俺ではない時の最神が使っていた弁当を棚から取り出し、キッチンの上に置いた。
それと仕切りを洗い、弁当の中に仕切りを真ん中に入れ、炊いてあったご飯を弁当の半分に詰め込んだ。
ミートボールを電子レンジで温めている間、ボウルと卵と箸、あとは俺が今から作る“卵焼き”専用のフライパンを取り出した。
卵を数個割り、ボウルの中に入れ、醤油や砂糖などの調味料を入れてか箸でき混ぜた。
それを終えたら専用のフライパンに卵を少し注ぎ込んだが、全部は入れない。
そして固まったと思ったらクルクルとそれを巻き、また余っている卵を入れ、それをまた焼き……というのを繰り返し、見事に卵焼きが完成。
卵焼きを皿に乗せ、包丁で均等に切っていく。電子レンジから取り出したミートボールとともに切った卵焼きを弁当に詰めた。
ミートボールは小さいカップに入れて弁当の中へ入れた。タレが溢れないようにするためである。
あとはミニトマトと昨日のシャケの小さめにしたのを入れて弁当の完成。
「ふぅ……昨日パソコンで作りかたを見た甲斐があったな」
弁当を作り終えた俺は余ったミートボールや卵焼きを朝ごはんがわりにして食べた。
弁当は冷めるまで蓋を開けっぱなしにしている。
朝ごはんを食べ終え、制服にも着替えた時にはもう家を出る時間だったので学校へ向かうことにした。
弁当は弁当専用の入れるものがあったのでそれに入れ、さらにそれをバッグに入れた。
外が雨だったので俺は玄関にあった傘を一つ持ち、外へ出た。
傘をさしながら駅まで向かい、電車を乗った。電車内は人が多かった。俗に言う“満員電車”だな。
乗っている人は帝王高校の制服を着ている人が多かったが、そこでもチラチラと顔を見られたりしていた……。
この電車の中では俺の背が一番大きいので目立つのだろう。
「おっと……」
電車がカーブした時、俺は体勢を崩してしまい、ドアに手をついたのだが、そこには女子がいて、女子のすぐ横に俺の腕があり、俺とその女子との顔の距離が近かった。
「あー……すまない」
「い!いえいえ!もう……その……幸せすぎて……」
顔が赤いな……たしかに電車内は人が密集しすぎて暑いからな。
“幸せ”というのはよくわからないな……満員電車が好きなのか?日本の女子はよくわからないな……。
駅へ着くと俺は降り、再び傘をさして高校へと向かった。
〜〜
「うへー……雨やだよ〜」
朔が机に突っ伏しながらそう言っていた。
「雨も風情がっていいではないか」
「お前おじさんみたいなこと言うなぁ……」
………まあ、前世では千年以上生きていたしな…。
そういえば雨だから今日は屋上には行けないな。
そんなことを考えながら一時間みの用意をしようと、机の中に手を入れた。
すると———
「なんだこれ」
俺の指に画鋲が刺さっていた。
「うわっ!?きょ、強也それ大丈夫か!?」
「ああ、この程度では血は出ないぞ」
「いやそういう問題!?とりあえずそれ抜けよ!」
画鋲を指から抜き、机の中をのぞいて見た。中にはたくさんの画鋲が入っていた。
朔も俺と同じように机の中をのぞいてきた。
「うーわ……誰だよ…こんなクソみたいなことするのは……」
朔は怒りを露わにし、眉間にしわを寄せていた。
ま、大方予想はついているがな。
俺はそいつの方向を見た。田辺なんとかだ。
そいつは俺が見た途端に別の方向を向き始めた。
「強也くん大丈夫なの!?」
「ほ、保健室行く!?」
「イケメンのニュービーを傷つけたのはどこのどいつじゃあ!!」
「ゆ、許せないね……!」
「戦じゃぁぁ!」
俺と朔の様子を見ていたのか、クラス中の女子たちが叫び始めた。
これは心配してくれている……と捉えていいのか?
まあ、今日はあいつにちょっかいをかけられる一日になりそうだな。
———俺は窓の外に降り注ぐ雨を見ながらそう思った。
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