第14話 [寡黙令嬢の襲来]
「………」
突如教室のドアが開かれたが、その瞬間あたりは静寂に包まれた。ドアを開けた本人も何も喋ろうとしていない。
だがそこで、俺をいじめていた金髪男がその女子に話しかけていた。
「静音ちゃんどうしたのー?もしかして俺に会いに来てくれたのな?」
「………」
「……おーい、聞いてる…?」
見事にスルーされていた。どうやらあの金髪男はあの女子に気があるらしいな。
ドアを開けて教室を見渡していた女子がとうとう俺と目があった。
「———!」
その瞬間に教室にズカズカと入り、一直線に俺へと近づいて来た。
俺のすぐ目の前まで来ると、あの時と同じようにアホ毛をゆらゆらと揺らしていた。
「……?俺に何か用なのか?」
「やっと……見つけた……」
そう呟くと俺の右手を両手で掴み、さらにズイッと顔を近づけた。
「な…なんであの“寡黙令嬢”が!?」
「あんなに積極的なの初めて見た……」
「一体どんな関係なんだ!」
「む……?」
「お礼……」
「ああ…別に大丈夫だ。そこまで気を使わなくても問題ないぞ」
「私が使う……だから、お礼……!」
どうやら俺を逃がすつもりはないらしい。ますます握力が強くなるのを感じた。
「お前…一体全体どうやってそんなに“寡黙令嬢”様と仲良くなったんだよ」
朔が俺に向かって話しかけてきた。
だがなんと言った?“寡黙令嬢”?
「“寡黙令嬢”とはなんだ?」
「え、お前知らなかったのか?それはなぁ、そこにいる“
「なるほど、というかお前そんな名前だったんだな」
「うん……あなたは…?」
目の前にいる女子……もとい“三賢 静音”がアホ毛をハテナマークにして首を傾げた。
「俺か?俺の名は“
「そう……じゃあ強也。お礼……強也にお礼する」
「だから……」
「………」
むぅ…。本当にいいのだが…どうやらお礼をしないとこいつ気が済まないらしいな。
「まあ…好きにするといい」
「———!言質……とった……!」
「………そうだな」
やはり表情筋は今日も働いておらず、アホ毛がヒャッハー!と言いそうなほどに飛び跳ねていた。
「と言っても……お礼何しよう?」
「え、決めてなかったのか?」
「……探すことしか、考えていなかった……」
「えぇ…」
俺が話している間、教室は騒がしくなっており、さらには別の教室の生徒も覗いていた。
俺をいじめていた金髪男も俺を呪い殺すが如く睨みつけていた。
「それでさっきも聞いたが、なんでお礼するってなっているんだ?」
そういえば二つ名のことが気になっていたせいで朔に返答をしていなかったな。
「ああ…実はな、男たちに囲まれているところを助けたのだよ」
「え!?でもなんで……」
「どうしたんだ?朔」
「いや…俺も前三賢さんを助けたことあるんだけど、お礼とかされてないなぁ…って」
「え?」
お礼しなかったのか?ではなぜ俺だけお礼をされるんだ?分からん……。
「とりあえず……お礼は、なんでも言うこと聞くことにする……!」
「「「「「んなっ!?」」」」」
お礼の内容を話した途端、耳をすませていたクラスメイトたちが一斉に声を上げて驚いた。
「はぁ…いいか?むやみに“なんでもする”と言ってはダメなんだぞ?俺が悪いやつであったらどうする———」
「大丈夫。あなたは絶対そんなこと、しない」
「……なぜ言い切れるんだ?」
確かにそんなことをするつもりは微塵もなかったが、なぜ言い切れるかが疑問に思った。
「わかるから……?勘が鋭いから……?」
「なぜ疑問系なんだ……。まあいいさ、とにかく今はしてほしいこともない。だから保留ということにするぞ」
「むぅ……わかった……」
俺の手を離し、ようやく解放されたのであった。
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