第10話 [ロックオン]
「大丈夫か?」
「………うん」
この女性は見事に無表情であった。
髪型は腰まで伸ばしており、頭のてっぺんにアホ毛がピョコピョコと跳ねている。色は黒で、目の色も真っ黒であった。
おそらくこの世界ではかなりの美人と言っても過言ではないのだろうが、俺は恋愛などにあまり興味を持たないからよくわからんな…。
「ありがとう……助けてくれた時すごく嬉しかった……」
表情筋は全く働いていなかった。だかこの女性のアホ毛が嬉しそうに跳ねていた。
どうやら顔よりアホ毛のほうが感情表現ができるらしい。
「そうか…ならばよかった。俺はこれで退散するが、一人で帰れるか?」
「うん……帰れる……でも、お礼……」
「ん?ああ、問題ないぞ。通りすがりに倒しただけだしな」
あんな奴らは敵ではなかったしな。
しかもこの後俺も買い物をして料理もしたいところだから時間を取っておきたいのだ。
「で……でも……悪いし……」
「じゃあ俺は帰るぞ、気をつけて帰れよ」
俺は駅に向かってダッシュで向かった。
〜〜
「い……行っちゃった……」
アホ毛はしょんぼりと倒れ込んでいた。
私の名前は“
入試のテストで全て満点を取り、特待生として入学した。
「でも……あのジャージは帝王高校のジャージ……ということはどこかの学年にいるはず…!見つけ出してお礼を……!」
相変わらず無表情だがアホ毛はメラメラと燃え盛る炎をバッグにやる気を取り戻していた。
「それにしても……不思議な人…。普通だったら私の顔とか胸とかばかり見たりするのに……あの人はまっすぐ私の目を見てくれてた……」
私は人よりは多少いい見た目をしていると自覚している。自惚れではない。
だって幼稚園から今までで数え切れないほどの告白をされてきて、街を歩けばスカウトをして来る人やナンパをよくされるからわからされた感じだ。
でもさっきの人は違った。
まっすぐ、ただ純粋に。目をわざとそらすのではなく、初めから私の目を見ようとしてくれていた。
わざと目をそらして好感度を上げて来ようとする人もいたからそういうのもわかってしまうようになったのだ。
生まれてから今まで他人に興味を示すことは全くなかったが、初めて興味を持った。
知りたい。あの人のことを———
「絶対に…見つけ出してやる………!さっきは私が奥手すぎた…次はガンガン行ってやる……!」
アホ毛はゆらゆらと情熱的に揺れていた。
〜〜
「ヘッッックション!!む、風邪か?いや…状態異常耐性も持っているからありえないか……」
何やら妙な悪寒がした気がしたが気のせいだろう。
俺は今電車に揺られながら天伸駅まで向かっている。
なんだか妙な予感がするな……。明日から学校だが、たくさんのトラブルが待ち受けているような……いや心配しすぎだな。
初めての学校だから楽しみだな!
———強也はまだ知らない。
三賢 静音が外見とは全く違って探究心がものすごく強く、一度狙った獲物は逃さないと。
そして、その対象が自分となっていることを……。
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