第8話 [初めての電車]




「あーー………目が覚めた……」



 俺は前世最強であったが、どうも朝だけには弱かったらしい…。

 転生したら治るかなーと思っていたがダメらしい……。それも克服しなければ最強とは言えない……のか?



「頭痛が……ひどい……」



 おそらく昨日魔力マナが枯渇するまで使いまくっていたので“魔力欠乏症”になってしまったのだろう。

 これは魔力マナ量を短時間で大量に消費した時になるものだ。頭痛がしたり、ひどい時は気絶をしてしまうことだ。



「とりあえず……下に降りて……冷蔵庫にあった緑茶を飲みたい…」



 昨日の掃除中、家中を掃除したため新たな発見もできた。

 その一つがこの“冷蔵庫”。この箱の中は温度が低くなっており、中に食材などを入れて保存しておくというものであった。


 前世では魔道具で似たようなものがあった。



 俺はコップに冷蔵庫に入っていた緑茶を淹れ、それを一気に飲み干した。



「プハーー!!くくく、やはりこの飲み物はうまいな!」



 この世界で初の飲み物がこの“緑茶”であり、俺好みの飲み物であった。



「今日は高校へ行ってから買い物をしてみるか」



 学校がどんなところなのかを視察し、その後スーパーマーケットとやらで初めて買い物をしようと思う。


 金の使い方は理解したから大丈夫だ。



「む、そうだ。【清掃クリーン】」



 この魔法は体についている汚れや床に染み付いた油、汗の匂いなどなど…それを全て除去し綺麗にすることができる便利な魔法だ。

 この国、日本では“風呂”というものがあるらしいが少々忙しいのでまた今度の機会にし、今はこの魔法で清潔を保っている。


 昨日は魔力マナ量がなさすぎて使えなかったから掃除が大変であった…。


 というか、最後の“空間転移テレポート”もかなりギリギリの魔力マナ量だったから考えて使わないとならないな。



「財布の中身は大体二万円といったところか。まあ問題ないであろう」



 俺は早速玄関へ向かい、靴を履き、扉をあけて外へ出た。



 地図によると帝王高校は“電車”というものに乗り、少し歩くとすぐ着くらしいが。


 電車はタッチパネルで行き先まで行ける紙のようなものを金を出して貰い、柵のような機会に吸い込ませ、あとは電車に乗る…とパソコンで見たが、俺は特殊なカードを持っていたのだ!

 そのカードに金を“チャージ”をしたらわざわざ買わずに済むらしい。



「では早速駅へと向かうか!」



 駅までは徒歩で約五分。かなりの近場である。


 徒歩でも高校へと通えるが、交通手段も補助してくれるらしく、電車代なども問題なく高校側が払ってくれるらしい。

 なので歩くよりその便利なものに乗った方がいいだろうと考え、俺ではなかった頃の最神が電車を選んだらしい。



「まあ……“空間転移テレポート”でも行くことが可能だが、やはり“最強の男子高校生”だから男子高校生らしく生きたいものだ」



 まあまだ最強かはわからないが、せっかく違う世界に来たのだからこの世界に合わせてみるのもまた一興というやつだ。



 そんなことを考えているうちに駅まで到着した。



「にしてもやはり人が多いな……」



 まだ朝が近いからか、人がなかなかに多かった。


 そしてやはりこちらを見てくる人が多かったが、大多数は女性であった。



「全くなんなんだ?何かおかしな点があるのならば話しかけてくれればいいだろうに…」



 俺は視線をスルーし、そのまま駅の中へと向かった。駅の名前は“天伸駅てんしんえき”という名だった。


 中へ入ると例の鉄の柵があった。どうやら“改札扉”と言うらしい。だがこのカードをどうやって使えばいいのか……。


 俺はその方法を知るべく、あそこを通過する人を観察することにした。


 すると手前の青く光っている部分にカードを近づけると扉が開き、通れるようになるらしい。



「なるほど……では早速やってみるか」



 俺はカードをポケットから出し、その青く光る部分に近づけて、そのまま通り過ぎようとした。


 だがピンポーンと、音がなり通れなくなっていた。



「む?むむむ?な、なぜ通れない……」



 俺はちゃんと近づけたのに……。



 俺が通れなくなって困っていると、後ろにいた女性から話しかけられた。



「あ、あのー……チャージしてないんじゃないでしょうか…?」


「ちゃーじ…?ああ、そういえば…もともとチャージされているのかと思っていたが…すまないがどこでチャージできるんだ?」


「あ、あそこでチャージできますよ…!」



 盲点だった…。なぜ最初からチャージされていると思い込んでいたんだ…。


 しかし助かったな。俺の中の日本人好感度がさらに上がったな。



「すまない、助かった!」



 俺は少々申し訳なさそうな顔で笑顔を作り、その女性に礼を言った。



「———!!!」



 俺は女性に教えてもらった方向へ行っていたが、何やら後ろからズギュゥゥン!という音が聞こえた気がしたが……まあ気のせいだろう。



 そして無事にタッチパネル式の機会にカードを入れ、財布から金を取り出してチャージが完了した。



「よ…よし。次こそはいけるぞ…」



 俺はゴクリと唾を飲み込み、青く光っている場所にカードを近づけた。


 するとピピッと音がなり、無事に通れるようになった。



「ふ……ふぅ……な、なんのこれしき…。こ、これぐらいは余裕だ…」



 なんとか難関を通り抜けた。そして次は電車に乗り、“帝王高校前駅”という場所まで乗り、そこで降りればいいらしい。



『えー、まもなくー、電車が参ります。黄色い線の後ろ側までおさがりください』



 どうやらちょうど来たらしい。



(け、計算通りだな)



 俺は冷や汗をかきながらそう思った。



 俺は人が並んでいたのでその最後尾に並び、電車が来るのを待った。


 ガタンゴトンという音がし出し、その音はだんだんと近づき、電車がやってきた。



 電車の色は黄色がメインで白っぽい柄が入っていた。



 並んでいた人たちがどんどんと電車の中へと入り、そして俺も電車の中へと入った。


 中は椅子がたくさんあり、寝ている人やスマホを見ている人などがほとんどであったが、俺が入った途端にこちらを見る人が増えた気がする。



『次はー、帝王高校前駅ー、帝王高校前駅ー』



 天伸駅と帝王高校前駅は隣ですぐに着くらしい。



 電車に揺られ、外の流れ行く景色を見ていると一瞬で隣駅までついた。



 俺は改札扉にまたカードを近づけ、通ることができた。



「初めての電車だったが、次はあんなミスはしないぞ!」



 そう誓った俺であった。

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