第20話

「ちくしょう!」


 午後七時。


 とある路地で少年は嘆いた。


 こちらの勝利は決まっていたも同然だった。

 

 連中は雑魚。

 群れなければなにもできなくて、群れたとしても実力はたかが知れたものだった。


 日頃から気に入らない奴ら。

 自分のことは棚に上げて人を見下し、同じような価値観の女を侍らせている。


 調子に乗ったそいつらと、度々小競り合いになることがあった。

 しかし、その度に情けない捨て台詞と共に去っていくのがお決まりだった。


 今回も、そうなるはずだった。


 だが仲間は倒れ、自分は連中の見下した視線に晒されている。


「くそっ! 馬鹿にすんじゃねぇ!」


 腹の底から湧いて出た怒りを握りしめ、少年は目の前の敵に殴りかかった。


 玉砕覚悟の特攻はニヤけた顔を崩すことはできず、拳が届く前に別の腕に防がれた。

 少年はそのまま殴り飛ばされ、背後の壁に叩きつけられた。


「こ……の……化け……物が……」


 意識を失う前に少年が見たものは、自分たちを叩きのめしたゴリラの姿だった。

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