第13話 過去との決別 中編



「ほう、元々は帝国南部にある中規模の商家の次男だったのが、今ではパートリー商会の婿養子となったうえに次期会頭にも指名されたとは……相当な商才がおありなのですね」


 俺と同じ年くらいだろうか? 目の前に座る端正な顔立ちをした糸目の男へ感心したように頷いた。


 この男は帝国五大商家の一つであるパートリー商会の次期会頭で、名前をサディム・パートリーと言うそうだ。2区への出店の交渉担当としてパートリー商会から派遣され昨日到着し一夜明けた今日、俺とサーシャと面会兼商談をしているところだ。


「いえ、私などまだ駆け出しの若輩者です。たまたま好きになった女性がパートリー商会の一人娘でして。一緒になることを認められようと死にもの狂いで努力して、なんとか義父である現会頭に及第点を頂けただけの運が良いだけの男です」


 サディムは謙遜しつつ穏やかに微笑む。相変わらず目が開いているのか閉じているのかサッパリわからん。


「愛する人と一緒になるために、帝国五大商家のひとつのパートリー家の会頭に認められるほど努力したのだから誇って良いと思うわ。でもそんな物語の中のようなロマンスが本当にあるのね。憧れるわ」


 サーシャは隣でうっとりとした表情を浮かべている。


 ロマンスねぇ……俺には婿養子になるためにパートリー商会の一人娘に近付いたとしか思えないんだけどな。俺にはわかる。この男が相当な野心家だということがな。確かに顔立ちが良く穏やかで常に笑みを浮かべていることから、一見優しそうに見える。だが俺はこの男と同じ糸目の男が、俺を育ててくれた養護施設の園長から金を騙し取ったのを見てきた。


 あの男も施設の子供達に優しく、いつもお菓子などを持ってきていた。俺もすっかり騙されて、細目のお兄ちゃんとか呼んで懐いていた。高校生になって職員が休憩室で実はあの男が詐欺師だったこと、園長が施設のお金と個人の資産を含め大金を騙し取られたという話をしていたのを聞いた時はショックだった。殺してやりたいと思ったくらいだ。


 このサディムという男からは、あの時の詐欺師と同じ雰囲気を感じる。


 商人なのだ。内心で考えていることを表情に出さず、笑みを浮かべるのは普通なのだろう。だが目は口ほどに物を言うというように、目を見れば少なからず何を考えているのかを読み取ることはできる。その目が見えないこの男を俺はどうも信用できない。まあ、園長を騙した糸目の男と同じ目をしているからと言えばそうなんだがな。


「……と、このように我が商会では多くの戦闘奴隷を取り扱っております。もちろん先日新たに施行されました法に則り、一般の帝国人と同様の扱いで専用の施設で生活をしております。毎日一流のハンターから手ほどきを受けさせておりますので、間違いなくこの街に滞在するハンターの皆さんのお役に立てることを確信しております」


「町長、パートリー家は奴隷の部門が強いみたいね。今回の募集にピッタリなんじゃないかしら?」


「そうだな。前向きに検討をするとしよう」


 このサディクという男を信用したのか、サーシャは勧めてくる。まあこの男以外はみんなオッサンだったからな。それに比べこの男はイケメンで温和そうに見えるし物腰も柔らかい。そのうえ今回来てくれた商家の中では、一番多く奴隷を保有しているようだ。俺も書類上だけだったらこの男の商会を選んでいたかもしれない。


 だがこの男はどうも信用できない。だから俺はサーシャに頷きつつも、前向きに検討すると言って話を終わらせることにした。


「そうですか、前向きに検討していただけるとは光栄です勇者様。是非、我が商会にこの街の発展のお手伝いをさせていただければと思います。勇者様、そしてサーシャ姫様。何かありましたらいつでもお呼びください、どのようなつまらないことでも結構です。誠心誠意お手伝いさせていただきます」


 サディムはそう言ってサーシャへと微笑む。


 なるほどな、アルメラ王国への進出も視野に入れてるということか。まあここには王妃が滞在しているからな。


「あら? だったら私が経営している軽食喫茶のことでも相談に乗ってもらおうかしら?」


「これは驚きました。サーシャ姫様は既に店舗を構え運営されているのですね。祝福の女神と呼ばれるほどの強力なギフトを持つだけでなく、経営の才能までお有りとはなんと多才な。私で良ければいつでもご相談に乗らせていただきます」


「ゴホンッ、今は他の商家の方もいるから、そういったことは全てが終わってからだな」


「わかってるわよ。えこひいきになっちゃうものね」


「もちろんです。たとえ今回ご縁がなかったとしても、お呼び頂ければ飛んで参りますので」


「その時はまた改めてお願いするとしましょう。では後日結果はお伝えしますので、それまでこの街でゆっくりしていってください」


 俺はサディムを抜け目のない男だと思いつつ話を打ち切り、席を立った。


 するとサディムも席を立ち、帝国風の綺麗な礼をした後に笑みを浮かべたまま応接室の扉へと歩き出した。そして出口のドアの前で立っていたお付きの若い女性と共に部屋を出ていく。


 俺とサーシャはサディムをこの貴族用の応接施設の出口まで送るため、その後ろを付いていく。


 そして廊下を通り抜け応接施設を出る。


 俺は施設のすぐ横にある正門で棘の警備隊の隊員の女性たちが歩哨として立っているのを横目にしつつ、サディムが再度礼をして俺たちに背を向け2区に用意した宿泊施設に向かって行く姿を見送る。


 しかしその時だった。


 何かを見つけたのか彼の足がピタリと止まった。


 どうしたんだと思い彼の視線の先を見ると、そこには向かいにある警備隊の休憩所から出て来たサラがいた。


 なんだ? サラの美しさに目を奪われたのか? まあ分からなくはない。普段あまり笑わないのと、やや吊り目なことでキツイ印象は受けるがハッキリ言ってサラは美人だ。


 彼女は背が170ほどあり足も長いし、胸もCはあって出るとこは出て引っ込むところはちゃんと引っ込んでいる。特に彼女の脚線美を俺は推したい。モデル体型とは彼女のことを言うんだろうな。最近は金色の綺麗な髪も後ろで一塊にまとめてパソコン作業をしているから、どこかの大企業の秘書みたいに見える。伊達眼鏡が事務用品にあったら絶対に掛けさせていたと思う。


 今年で24歳になることもあってか、今回来た商人たちに口説かれて困っていると言ってたな。美人の宿命だと答えたら、”私は美人などでは……”とか言って顔を真っ赤にしてたっけ。キツめの顔の子が照れる姿ってギャップがあっていいよな。


 彼女は苦労してきたからか他人に優しく面倒見も良い。本物を見抜く目を持った商人たちが口説きたくなるのもわかる。


 そんなことを俺が考えているうちにサディムは再起動したのか、突然サラの方へ向かって歩き出し両腕を大きく広げながらサラへと話しかけた。


「シーラ! まさかこんな所にいたとは。探しましたよ」


 シーラ? なんだ? 人違いをしてるのか?


 そう思ったが、サディムに声を掛けられたサラは驚愕の表情を浮かべている。


 え? やっぱ知り合いなのか? でもシーラ?


 俺が混乱していると、隣りにいたサーシャが答えてくれる。


「多分だけどサラの本名だと思うわ。ここだけの話だけど、棘の警備隊には何人か名前を隠している子がいるの」


「ああ……なるほど」


 棘の警備隊にいる子たちは、過去に男にひどい目にあった子たちばかりだ。加害者の中には貴族や凶賊、そして同業のハンターもいる。そんな者たちから逃げるには、名前を変えでもしないとすぐに見つかってしまうのだろう。サラもその一人だったというわけか。


 サーシャが知っているのは本人たちから聞いたか、それともサーシャとリーゼがこの街に滞在することになった時に、王国が街にいる者の素性を調べたか。まあ後者だろうな。お姫様を滞在させるんだ、それくらいはやるだろう。


 納得した俺はサラの方へ視線を戻す。するとサディムが彼女の手を取り、何かを話しているようだった。サディムの表情はここからは見えないが、サラの表情が驚きから笑顔に変わっていくのはわかった。


「どうやら昔の知り合いみたいね」


 サラの笑顔を見て、サーシャはホッとした表情を浮かべている。


「……そうみたいだな」


 だが俺はどうもサラの笑顔が、いつも俺に見せてくれる笑顔と違うように感じていた。


 それからサラとサディムは一言二言話したあと、サディムはサラと離れて振り返り二人の様子を見ていた俺たちに再び礼をしてその場を去っていった。


 その際に俺はサディムの背を見送るサラの表情から、笑顔が消えていたことを見逃さなかった。


 二人の間には何かある。そう思わざるを得なかった。





 ―― フジワラの街1区 女性従業員寮 サラ――



 皆に無理を言って仕事を早めに終わらせた私は、真っ暗な自室のベッドの上で膝を抱え座っていた。


 見つかった……もう二度と会わないと思っていたあの男に。まさかパーナード商会の一人娘を口説いて婿入りしているだなんて思わなかった。


 サディム・マルソー。いえ、今はサディム・パーナードですか。


 あの男は私と母がお世話になっていたマルソー商会の次男でした。


 私の家はもともとは帝国の南部にある小さな商家でした。若く美しい母と優しい父。そして年の離れた弟の4人で生活していました。


 父は行商人をしていた頃に、よく行く村の娘だった母に一目惚れをして妻に迎えたと言っていました。そして二人で苦労して南部の街に商会を立ち上げたと。


 そんな父ですが、私が13歳の時に南街からの商品の輸送中に兇賊に殺されてしまいました。そしてその際に輸送していた魔物の素材が期限までに納品できなかったこと。そして高価な素材であったことで、母と私たち残された家族は多額の借金を背負うことになってしまいました。


 そんな奴隷に落ちるしかなかった私たちを救ってくれたのが、父と親交のあった同じ街にある商会。マルソー商会の会頭でした。


 会頭は以前から美しい母に惚れていたようで、妾になることを条件に借金を全額引き受けてくれました。そして私と、当時まだ3歳だった弟もマルソー家で引き取ってくれたのです。


 その事には感謝しています。あのままだったら私たち家族は奴隷となり、娼館に買われる未来しかなかったのですから。まだ幼かった弟など、そういった趣味のある婦人に買われるか殺されるかだったでしょう。


 会頭は本当に母のことが好きだったようで、母を大切に扱ってくれて私と弟にも良くしてくださいました。


 ですが会頭の奥さんは私たちに対し快くは思っていないようでした。恐らく母を溺愛する会頭の姿に、家が私たちに乗っ取られるのではないかと不安を覚えたのでしょう。会頭が家を開けた時など露骨に嫌味を言われ、様々な嫌がらせを受けました。奥様は使用人たちに慕われていたことから、私と母は下手に反抗したり告げ口をすればまだ幼い弟の命が危ないと思いずっと耐えていました。


 そんな私たちの姿を跡継ぎである長男は奥様が怖いのか見て見ぬ振りをし、次男のサディムはそれを利用しました。


 サディムは私の4つほど年上ですから当時は18歳になったばかりだったはずです。いつも笑みを浮かべていて私と弟に優しく接してくれていた彼でしたが、その本性はその温和な見た目とは真逆で醜く、そして歪んでいました。


 彼は奥様から快く思われておらず、弟のために我慢をしている私に目を付けたのです。


 あの男は会頭が留守の時に私を部屋に呼び出し、そして私を力ずくてレイプしたのです。そしてこの事を話せば弟を殺すと言って、私の口を封じました。それから2年近く、私はサディムのおもちゃにされました。


 最悪なのは彼に嗜虐趣味があったことです。半年ほどした頃からその本性は徐々に現れ、彼の部屋に呼ばれる度に私の身体はナイフで傷つけられました。行為が終わり彼が満足すると、彼は治癒水で私につけた傷を治療します。そんな事がずっと続き、私は地獄の苦しみを何度も味あわされました。高価な上級治癒水が手に入った時の彼の嬉しそうな顔は今でも忘れられません。そしてその日の夜に私の乳房が切り落とされたことも。


 上級治癒水で元の状態にはなりましたが、あの痛みと恐怖は今でも夢に出て私を苦しめます。


 そしてサディムの拷問とも呼べる性行為はさらにエスカレートしていきます。ある日の夜、サディムは名器にしてあげますと言ってナイフと治癒水を片手に私の性器の中を切り刻みました。傷付けては治りきらない程度の治癒水で治療しを繰り返しながら、私を犯し具合を確かめていました。ですがその結果、私の性器は治癒水では治療できないほどズタズタになり、二度と男性の性器を受け入れることができなくなったのです。


 サディムは笑いながらやりすぎましたねなどと言っていました。まあ穴はもう一つあるから問題ないとも。私はこのままではいずれ間違いなくこの男に殺されると思いました。そして再びナイフを手に迫ってくるサディムに、私は恐怖の中でなんとかこの男から逃げたいと。そう強く思いながら彼のナイフを持つ手を振り払おうとした時でした。私の手から水の刃が飛び出し、サディムのナイフを持つ指を切り飛ばしたのです。絶叫する彼を前に私は何がなんだかわからないまま彼の部屋を出て、そして自分の部屋に戻り持てる物全てを持ってあの家と街から逃げ出しました。


 母と弟のことはすでに頭にありませんでした。とにかく死にたくないと、もう痛い思いは嫌だとそれしか考えていませんでした。


 私の身体はあの男に傷つけられボロボロでした。治癒水では消えない傷痕が乳房や性器に数え切れないほど残っていました。それでも生きていかないといけない私は、名前を変えて南街でハンターになりました。


 幸い私は水のギフトに目覚めていたので、17歳で戦闘経験の無い私でもギルドでは引く手あまたでした。しかし男性が怖かった私はどのパーティにも入ることはありませんでした。そんな私を誘ってくれたのがカルラです。当時21歳だった彼女は、女だけのパーティを作ろうと私を誘ったのです。


 理由を聞くとカルラは王国の貴族の護衛中に3年も一緒に活動していた仲間に裏切られ、貴族の子息とそのお付きの騎士。そして最後に仲間だった男たちに輪姦されたと打ち明けてくれました。貴族がカルラを気に入り犯すためにな仲間を買収したそうです。抵抗したカルラは顔を斬られ、血みどろの中で犯されたと語ってくれました。そしてこんな話は珍しくないとも。


 だから女だけのパーティを作って、被害にあった女性たちを助けたいと。そして彼女たちが望むならその復讐も手伝いたいと。


 そう口にした彼女に私はすぐにパーティを組むことに同意しました。


 ちなみにカルラを裏切った元仲間は、私とカルラで皆殺しにしました。でも王国の貴族だけは手が出せなくて、彼女は悔しがっていました。ですがそれもこのフジワラの街にその王国の貴族が当時のお付きの騎士と一緒に攻めて来た時に、皆でなぶり殺したことで彼女の復讐は終わりました。


 カルラは元仲間であった男たちを殺したあと、私の復讐も手伝うと言ってくれました。しかし私の場合は相手が一般人であること。そして遠いところにいるので、滅びの森には来ることがないことを告げて断りました。森であれば証拠は残りませんが、帝国の街で人を傷付けるのはリスクが高い。もし捕まれば、母と弟に迷惑がかかる。私はあの男と関わらない方が一番良いと考えました。


 いえ、多分怖かったのだと思います。ギフトという力を得ても、私の心の中には長い間あの男に植え付けられた恐怖が残っていたのかもしれません。


 だから今日、あの男の顔を見た時に本名を呼ばれた私は動けなかった。あの男をあの場で殺せる力があったのに、もう無力な自分ではなかったはずなのに。あの男、サディムの顔を見た瞬間、私の足は震え身体は硬直しまるでドラゴンに睨まれたゴブリンのようになっていました。


 そしてサディムが私に近づいてきて、その恐怖からあの時のように水の刃を放とうとした時でした。


《久しぶりだねシーラ。まさかこんなところにいるとはね。随分と探したんだ。ああ、君の弟のセイ君は元気だよ。実家で使用人として働いてくれている。今度私のもとに呼ぼうと思っているんだ。帝国五大商会の一つであるパーナード商会で働けると知ったら喜んでくれると思わないかい?》


 私の手を取り嗜虐的な笑みを浮かべそう口にしたサディムに、私は何も出来ませんでした。この男に弟の命が握られている。そう思ったからです。


《今夜、そうですね。人目もあるので深夜がいいでしょう。私が滞在している部屋に来てください。また親睦を深めようじゃないですか。まさか断りはしませんよね?》


 私は頷くしかありませんでした。


《よろしい、ですがその表情はいただけませんね。。勇者様に疑念を抱かれかねません。笑いなさい》


 サディムの言われた通り私は笑みを浮かべると、彼は満足気な表情を浮かべ去っていきました。隣りにいた女性が気の毒そうな視線を私に送っていたのが印象的でした。



 見つかってしまった。今日この後、私はあの男のもとに行かなければならない。


 断れば弟があの男の元に呼ばれ、ひどい目に遭わされるかもしれない。


 一度は見捨てた家族ですが、それでも忘れたことなど一日としてありません。セイは突然いなくなった姉である私を恨んでいるかもしれない。でもそれでもセイは私の可愛い弟なのです。


 でもサディムの所へは行きたくない。昔あの男にされたことを思い出すと身体が震えて仕方がない。


 いっそのこと今夜あの男を殺してしまえば……いえ、上皇様が呼んでリョウスケさんの客として来ている彼を殺すことはできない。そんなことをすれば、大恩あるリョウスケさんに迷惑を掛けることになってしまう。


 ならリョウスケさんに相談を……言えない。私があの男にされた事を好きな人になんて話せないし、知られたくない。


 でもあの男の所に行けば、昔のように私の身体は……リョウスケさんが治してくれたこの身体がまた傷つけられる。


 私はいったいどうすれば……


 助けて……誰か……お願い。



 ♢



「ん? あれはサラ? こんな時間にどこに行くつもりだ?」


 深夜。リーゼの部屋で彼女とサーシャとラティと四人で愛し合ったあと、俺は心地よい脱力感を覚えながらバルコニーで一服をしていた。すると1区にある女性寮から、サラが普段着で出てくる姿が見えた。


 普段着だし、特に急いでいるようにも見えないから警備隊に何かあって呼び出されたわけじゃないだろう。ならどこに?


「もしかして昼間のあの男の所に行くのか?」


 あの後サラにサディムとの事を聞いたが、古い知り合いだと。シーラとは本名で今は捨てた名だとしか教えてくれなかった。なんでもないかのように笑みを浮かべて話してはいたが、やはり俺はサラが無理をして笑っているんじゃないかと気になっていた。


 そんな彼女の態度に、サーシャも何かおかしいとは感じたようだ。上皇にサディムの事を調べてもらえるよう頼んでくれた。何かわかれば王国経由でエルフの精霊魔法を使って連絡が来ることになっている。


 旧正門を潜ったサラは、正門の近くにあるの商人たちの臨時宿舎の前で立ち止まった。そして振り返りチラリと後ろを見上げたあと、入口の警備に就いている商人たちが連れてきた護衛に話しかけ中へと入っていった。


 今、サラは間違いなくこのマンションを見ていた。後ろの部屋は真っ暗だし、彼女の視力じゃ俺がここにいることは見えなかったかもしれない。


 だが俺のレベルアップした身体能力によって強化された視力ではハッキリと彼女の顔が見えた。


 今にも泣きそうな顔が……まるで助けを求めるかのようなその目が、俺が住むこのマンションに向けられていた。


 それは間違いなく俺へと向けられた視線なはずで……


「リーゼ、頼みがある!」


 俺は部屋へと戻りベッドの上でサーシャと一緒に大股を広げ、俺の体液でドロドロになった身体をビクンビクンと震わせているリーゼを揺り起こすのだった。


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