第38話 フジワラ軍



 ―― 帝国北部 合流地点 帝国宰相 ユーラ・フルベルク公爵――




「3万だと? どういうことだフルベルク。俺がここに来るまでに6万を集めろと言ったはずだ」


 帝都を出発して3日後の昼。合流地点である帝国北部にある草原に到着し、未だ半数しか揃っていないことにルシオン様は眉を吊り上げた。


「はっ! なにぶん急な追加招集ということもありまして、いくつかの家が遅れているようです。現在こちらへと向かってきているのは確認できております。遅くとも二日後までには到着するかと」


 内心でお前が5万からさらに1万の増員を命じたからだという言葉を呑み込み、黒鬼馬にまたがり不機嫌そうなルシオン様へと私は答える。追加で招集した1万どころか3万も遅れているのではどうにもならん。


「ふざけんな! 明日の朝までに到着しなかったら当主の首を刎ね、家を取り潰すと伝えろ!」


「そ、それはおやめください! 今回我が軍は6万という大軍です。多数の貴族家が集まる場合、どうしてもこういったことは起こりえます。やるのであればすべてが終わったあと、別件でお願いいたします。今そのようなことを伝えれば後方で反乱が起こります」


 この馬鹿は何を言っているのだ。当主の首を刎ねるなどと伝えたら、手薄になった後方で反乱を起こすやもしれぬではないか。今回遅れてきているのは面従腹背の貴族家ばかり。帝都を留守にしている今、そのような者たちに口実を与えてどうするのだ。


「チッ、全部終わったら覚えてやがれよクソ貴族どもが」


「敵は3ヶ国合わせても4万。しかも指揮系統がバラバラです。ルシオン様のもとで一致団結している我軍の勝利に揺るぎはありません。たった1日です、帝国皇帝らしくどっしりとお構えください」


 さすがに反乱は怖いのか、私の言葉にルシオン様は鼻を鳴らしながらも矛を収めてくれた。それはそうであろうな。留守中に反乱を起こすと疑ったのか、帝城に残ろうとした私を無理やり連れ出したくらいだしな。私は宰相だぞ? なぜ戦場に立たねばならんのだ。


 それもこれもアルメラ王国と獣王国と魔国のせいだ。大義はこちらにあるというのに、何が停戦協定の破棄は看過できないだ。たったそれだけで帝国相手に連合して兵を挙げるなどあり得ない。恐らく陛下がフジワラの街にいることが知られたのだろうな。帝国がルシオン様によってまとまることを恐れ、陛下を保護しようとしているのかもしれん。


 敵の動きは早かったが、3ヶ国の連合軍だというのにその兵力は4万と少ない。しかしそれを知ったルシオン様はさらに1万の増員を決定された。昔なら兵力が劣っていても戦いを挑んでいたが、たった千から2千程度のフジワラの街に5万を動員しようとしたり、王国や魔国が参戦すると聞いてさらに増員したりと、どうも前回の敗戦で臆病になっているようだ。


 だがその臆病さのおかげで、帝都と国境と街の防衛以外の兵は帝国に残っていない。今頃各地の村や街道では盗賊たちがこの世の春を謳歌しているだろう。


 私を連れ出したのも手薄になった帝都に国境の兵を呼び戻し、未だ幼いご長男を擁立して乗っ取られると思ったからであろう。さすがのルシオン様も3ヶ国相手に無傷でいられるとは思っていないようで、私に奪われた帝都を取り戻せるほどの兵が残るか不安なのだろう。貴族たちの相手は私がしていたしな。自分が貴族たちに好かれていないことはわかっているようだ。


 私が矢面に立って反乱などするつもりはないのだがな。裏で手を回しルシオン様に反乱を起こさせた私が言っても説得力は無いか。


 しかし困った。王国と魔国に獣王国まで出てきたならば、それ相応の被害が出よう。王国は王妃が軍を率いていると聞く。ならば赤い蝙蝠レッドバットを使って進軍中の王妃を暗殺させ、撤退に追い込みたかった。しかし殿下の暗殺の一件以降、赤い蝙蝠と一切連絡が取れなくなった。これはいったいどういうことなのか。


 まさかあのリョウスケという男が報復に動いた? 買収したハンターの言が本当ならば、一撃で吸血鬼を消滅させるほどの力を持つ男だ。壊滅させられていてもおかしくないか。


 となれば正攻法で王国と魔国と獣王国と戦わねばならん。問題は魔国だ。竜人と魔人が主力の1万ほどの数だと報告があったが、王国と獣王国を相手にしながら戦うには厳しい。

 

 ならば先に王国を一気呵成に攻め立て撤退に追い込むか? 王妃がいるのだ、王国も無理はすまい。王国が撤退すれば連合は瓦解したも同然。獣王国も魔国も撤退する可能性はある。


 その後はフジワラの街をとっとと潰し、帝国に戻り態勢を整えた後に今回のことを口実に王国を攻め滅ぼす。そして獣王国と魔国の順だな。うむ、大丈夫だ問題ない。


 まずは6万の兵が集まってからだ。そして全軍をもって王国軍に当たる。




 しかしその日の夜。そんな私達を急かす邪魔者が天幕へと現れた。


 今や落ち目となった聖光教会の教皇だ。


 ルシオン様と夕食をともにし、天幕から出ようとしたら教皇がお付きの者を連れて乗り込んできた。


「ルシオン陛下! なぜすぐに進軍しないのです! 3万も揃っているならば進むべきです! 王国と獣王国のことはお任せください。女神様の御威光をもって退かせてみせましょう!」


「あん? じゃあなんで王国と獣もどきの国が出てきてんだ? こっちは教皇の望み通り今回は聖戦でもあるって伝えてんだぞ? 女神の威光ってのが通用してたら奴らは出てこねえんじゃねえのか?」


 帝都から連れてきた侍女の身体を弄っていたルシオン様は、めんどくさそうに問いかけた。


 今回は陛下の奪還が目的なため、当初ルシオン様は教会の同行を拒否した。しかし教皇がどうしても同行すると聞かないので、私がルシオン様になんとかお願いし帝国と教会による聖戦という形を取ることにしてもらった。


 ミッテルト枢機卿を通して教会からに支援を受け、今の地位にいる私としては教皇をないがしろにはできないのだ。


 ルシオン様も教会の後ろ盾と資金援助のおかげで今の地位にいることは理解していたので、嫌々ではあったが同行を許可し聖戦ということにしてくれた。そう、本来教皇の同行は望まれてはいないのだ。それなのにこの男は余計なことを。


「そ、それはアルメラ国王と獣王が背信者だからです! ですが一般兵は違います! 私が前に出て女神様の教えを伝えれば、多くの者たちが味方するでしょう」


「だってよフルベルク」


 ルシオン様はうんざりした顔で、どうにかしろといういう視線を私へと送ってくる。


 くっ、教皇め。おとなしくしていろとあれほど言ったというのに!


 私は教皇の隣で申し訳無さそうな顔をしているミッテルト枢機卿をひと睨みした後、表情を取り繕ってから教皇へと口を開いた。


「教皇様。敵は女神様を信仰している者たちだけではありません。女神様を信仰していない魔国もいるのです。奴らは卑劣です。教皇様の崇高なる教えの途中にそのお命を狙うやもしれません。2千の聖騎士に守られているとはいえ万が一のことがございます。これは聖戦です。女神様の弓引く者に慈悲など必要ございません。であるならば戦力が揃ってから動くべきだと思います」


「むう……魔族ですか。確かに奴らならやりかねませんね。竜人など空を飛べますし……わかりました。支配者から無理やり参戦させられている者たちは可愛そうですが、死後に女神様のもとへ行けるよう祈ることとしましょう。それでいつ聖戦は開始されるのです?」


「三日後には確実に」


 私は内心でフジワラの街にいる聖女を手に入れたいだけだろうと馬鹿にしつつ、神妙な表情をでそう答えた。落ち目の聖光教を救うには聖女を手に入れる以外はないからな。まあ聖女は見た目も良く若いらしいからルシオン様に手篭めにされるだろうが。どんな傷でも治せるのだ、死にはしないだろう。


「三日ですか……仕方ありません、待つことにしましょう。その間は帝国の兵たちに女神様の教えを説くとしましょう。きっと士気が上がることでしょう」


「おお、教皇様自ら兵たちに教えを説いていただけるとは、必ずや士気が上がりましょう」


 私がそう言うと教皇はそうでしょう、聖戦で勝利すれば帝都に大神殿を建てて差し上げましょうと上機嫌で去っていった。


「ふんっ、フルベルク。あの生臭坊主の説法で士気が上がると本気で思っているのか?」


 教皇が去るとルシオン様が鼻で笑いながら言う。


「いえ、むしろ下がるでしょう。兵の中に女神を信仰している者は多くいますが、教会を信じている者はおりません。それは信者の多い王国でも同様でしょう。大神殿を帝国に建てるというのも、王国に居づらくなったからでしょう」


 教会の拝金主義は有名だ。王国民ですら女神を信仰していても、教会に尊敬の念を抱いている者はごく少数だ。辺境の村ですら教会は診療所としか思っていないのだから、数百年に及ぶ腐敗は行き着くところまで行ったということだろう。


「酒でも飲ませて余計なことをさせないようにしろ。ああ、確か幼い子供が好きな変態だったな。どこかの村から連れてきて与えておけ。聖女が手に入れば奴も処分する。それまで余計なことをさせるな」


「はっ、承知いたしました」


 帝国に権力者は二人いらない。聖光教は聖女を顔とした女神教として生まれ変わるのが確定している。民からもルシオン様からも、とっくに見放されているということを知らぬのは教皇とその周囲にいる者たちだけ。哀れなものだ。





 ―― 南街 南方 緩衝地帯 シュンラン――



「シュンラン、帝国軍はここから1日ほど南にある帝国北部の草原で集結が完了したみたい。明日にはここにやってくると思うわ」


「そうか、やはり間に合わなかったようだな。あと二日だったんだがな」


 私はリーゼの報告にため息を吐いた。


 1日。あと1日帝国軍が来るのが遅ければ皇帝の治療が間に合い戦わずに済むかもしれなかったが、どうやら戦わねばならないようだ。


「敵の士気は低いみたいだけど6万もいるわ。ルシオンの性格からして数の少ない私たちと睨み合いなんてしないでしょうし、丸1日は耐えないといけないわね」


「そうだな。だがサーシャが色々と動いてくれたから1日で済んだと思うことにしよう。彼女が元患者の帝国貴族に王国を通して工作をしてくれなければ、ルシオンがもっと早くここまで来たかもしれないのだしな」


 帝国が私たちの街を攻めるために兵を集めていると知ってから、サーシャは真聖光病院の元患者だった帝国貴族たちにルシオンとの合流を遅らせるよう働きかけていた。それがなければもっと早くここに来たはずだ。そうなっても負ける気はしないが、多くの犠牲が出たであろう。


「そうね、あの子もリョウに褒められたくて頑張ってたし。本人に言えば否定するけどね。ああいうのをリョウの故郷ではツンデレというらしいわね」


「ああ、有線放送で流れる物語でそういうキャラがいてな。サーシャそっくりだった」


 男はああいう素直になれない女が可愛く見えるんだとか。そうリョウスケが言っていたのを思い出した。その時に私はどうだろうかと聞いたら、裏表がなく真っ直ぐな性格だから疲れないと言われた。私といると素の自分を曝け出すことができて、自然体でいられるらしい。それを聞いた時は嬉しかった。


 思えばリョウスケを愛する女性には色んなタイプがいるな。


 誰にでも優しく思いやりがあり、いざとなれば自分を犠牲にしてまで仲間を守ろうとする強さを持つ私の親友のミレイア。まだ弱かったあの日。オーガキングを相手に、私とともに戦いを挑んでくれた彼女の姿は今でも忘れられない。


 そして普段はアホだが、義理堅く誰よりも前に出て仲間を守ろうとするクロース。私とミレイアの義足を作ってくれた時のことは今でも感謝している。普段はどうしようもないアホだが。


 リョウスケのことが好きなのにそれを素直に表に出せないツンデレのサーシャ。彼女は破天荒で元王女だというのに、ハンターや奴隷にも分け隔てなく接する。そしてやたらと気前が良い。そのおかげで街で一番利用者から人気がある。彼女のこういった行動は、貴族の傲慢さを見てきた私たちからすれば信じられない行いだ。恐らく長年滅びの森に挑み続けていたことで、この森では身分などなんの役にも立たないことを知ったからだろう。最初一緒にいた騎士団長はそうではなかったが、そこは民を尊ぶ現国王の教育の賜物といったところか。王女という立場なのに森に入った本当の理由が、胸を大きくするオパの実が目的だというのはどうかと思うが。


 そんなサーシャを気に入り、ずっと側にいるリーゼ。好奇心旺盛で、なんだかんだと世話焼きな性格をしている。でなければ王女のお付きなどできないのだろうが、自尊心の高いエルフにしては珍しいのは間違いない。エルフは人族をどこか見下している者が多いからな。恐らくサーシャが幼い頃から側にいたことで、彼女を娘か年の離れた妹のように思っているのだろう。


 そんなリーゼはその好奇心旺盛な性格からリョウスケに真っ先に興味を持ち、そして勇者だと知ってからはかなり積極的になっていた。さすがにサーシャを巻き込んでリョウスケを酔わせてイタズラをしたと聞いた時は頭が痛くなったがな。エルフはそういった破天荒な行動とは無縁なはずなのだが、色事以外は積極的なサーシャの影響を受けたのかもしれない。


 そしてサーシャとリーゼを巻き込み、リョウスケを酔わせて既成事実を作ったローラ。女子会の時に彼女から過去のことは色々と聞いたが、彼女は弱者のためならためらうことなく行動できる優しさと強さを持った女性だ。教会本部で性奴隷にされていたシスターたちを救うために、司教らを殺し聖騎士も壊滅させたと聞いた時は尊敬の念すら抱いたほどだ。


 出会いこそこの街を狙ってきたが、それもクリスのためであったことは知っている。後で女神に文句を言うためだと聞いた時は笑ってしまった。リョウスケが駄女神だといつも口にしているからな。


 彼女はリョウスケの良い飲み友だちになっているようだ。リョウスケとしては、ローラは王国や帝国の知識が豊富で話していて勉強になるのだそうだ。それに飲んでいる時のローラは凄く話しやすいらしい。私はそこまで知識は豊富ではないし、話題も少ないからな。少しローラが羨ましく思えてしまう。


 クリスは……まあクリスだ。私もベッドではリョウスケに支配されたいという欲求があるので、あまり他人の性癖をどうこう言える立場ではないが……匂いに興奮するというのはどうしても理解に苦しむ。しかもリョウスケに受け入れられてからは隠さなくなり、最近は皆にリョウスケの使用済み下着をねだってくる。自分の時だけではなく、毎日新鮮な使用済み下着が欲しいのだそうだ。ちゃんと洗濯して返しているからリョウスケは文句が無いらしいが、皆顔がひきつっているから私たちから欲しがるのはめて欲しい。あとその場で嗅ぐのもやめて欲しい。


 ラティとセイランもリョウスケを狙っているようだが、セイランはリョウスケを利用しようとしているのが透けて見える。あれではまだまだ時間がかかるだろう。


 ラティに関しては、彼女の身体がまだできていなことがリョウスケとしては駄目らしい。リョウスケは孤児院育ちで年下の子供の世話をしてきたから、どうしても子供の体型の女性はそういう目で見れないそうだ。


 ただ、最近ラティの胸も膨らんできたのでもう少しだと思う。彼女はリョウスケの恋人になれるよう私たちに協力を願ってきているからな。獣王の娘でもあるし、街の将来のためにもできるだけ力になろうと思う。


 できれば帝国の皇族の娘も取り込みたいが、こればかりは皇帝が回復してからの話になる。


 私とミレイアにとって一番大切なものは、リョウスケとフジワラの街だ。これを守るためならなんだってする。リョウスケは私とミレイアを一番に愛してくれると言ってくれた。ならば側室を増やし街の安全を図るのが私たちの役目だろう。セイランだけには注意しなければならないが、できるだけ各国の王族の血を取り入れたい。それがこの街の、そしてリョウスケの安全に結びつくのだから。


「だがまずはルシオンだな」


 私は帝国と王国と獣王国の北部に広がる緩衝地帯に布陣している、各国の軍を見渡しながらそう呟いた。


 私がリョウスケに頼まれたのは、リョウスケが皇帝を治療するまでの時間稼ぎだ。


 そのため私はリョウスケの代わりに総大将としてフジワラ軍を率いることになった。


 私が率いるフジワラ軍は、南街がある方向を背に帝国軍が現れるであろう位置の正面に獣王国軍と共に布陣している。獣王国軍は1万5千で、フジワラ軍は全部で千だ。数は少ないが全員がダークエルフで、ジープを50台と機関銃を500丁持ってきている。


 そして我々から見て左。帝国軍から見たら右側に見えるだろう位置に王国軍1万5千ほどが布陣している。こちらにはエルフが4千もいる。リーゼが言うにはほぼ戦えるエルフの全員だそうだ。これだけの数を動員したのは、勇者であるリョウスケが心配というよりも精霊の森を取り戻してもらった後のことを考えた長老たちの政治的判断らしい。彼らはリョウスケとダークエルフが近すぎることを危惧しているそうだ。そのため恩を少しでも着せておきたいらしい。色々とご苦労なことだ。


 次に我々から見て右側。帝国軍から見たら左側になるであろう場所には、魔国軍1万が布陣している。デーモン族はおらず吸血鬼もセイランが指揮している彼女の一族の数人だけしかいないが、半数以上が竜人族でしかも竜王が指揮している強力な軍だ。竜王がいることから士気が異常なほど高いが、今頃魔王は頭を抱えているだろう。


 竜王はフジワラの街を守るためだと言っていたが、リョウスケが言うにはさすがに寝たきり皇帝の前で毎日のように酒を飲んで嫌がらせをしすぎたのではないかと。戦後に怒られないように恩を着せようとしているだけではないかと言っていた。私もそう思う。皇帝の麻痺していた顔が動き、怒りに染まっていたらしいからな。竜王は麻痺した顔を少しでも良くするためにわざとやってたんじゃと言っていたが、皇帝はそうは思っていないだろう。焦って恩を着せようとしているとしか思えない。


 こうしてそれぞれ距離は離れているが、この広大な緩衝地帯でルシオンが率いる帝国軍を包囲する陣形で待ち構えている。


「そうね。あの馬鹿に命令されて来た帝国の一般の兵たちには悪いけど、皇帝とリョウが来るまでもう一度地獄を見てもらおうかしら」


「極力こちら側に死者を出さぬよう、車両と機関銃部隊にはがんばってもらわねばな」


 リーゼの不敵な笑みに、私はダークエルフたちと共に機関銃を両手に持って騒いでいるクロースを見ながらそう口にした。


 ここには私とミレイア、サーシャ、リーゼ、クロース、ローラのクリス以外の戦妃が全員いる。


 火災保険の家族特約により、素手や魔物の素材でできた武器以外の攻撃が無効となる私たちが負けることはありえない。私が注意すべきは味方のダークエルフの損害だけだ。一人も死なせはしない。


 明日帝国軍が現れるであろう方向を睨みつけ、私は改めて決意をするのだった。




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