第23話 発覚



 ——アルメラ王国首都 聖光教会本部 教皇 ストロネーク・コニッシュ——




「し、真聖光教に聖女ですと!? しかも完全治癒のギフトを使える!? ミッテルト枢機卿! 冗談を言うのも限度がありますよ!」


 私は青ざめた表情で報告をするミッテルト枢機卿へ、机を叩き怒りを露にした。


「じょ、冗談ではございません! ユニコーンの角を手に入れたことにより回復したと獣王国の大司教から報告のあった、第一王女であるラティ様もフジワラの街に行っていたことがわかりました。また、死を待つだけであった私が面識のある貴族も完治祝いのパーティを開いていたのです。聞けばフジワラの街にある真聖光教を名乗る教会の病院で、聖女クリスの完全治癒のギフトによって治してもらったとか。似たような状況の複数の貴族や大商人も同じことを言っておりました。各国の司祭と司教たちに急ぎ調べさせたところ、魔国や獣王国でも同じことが起こっております。このことは庶民の間にも広がり、死を待つだけだった者たちが続々とフジワラの街へと向かっているようです」


「馬鹿な……そんな事が」


 あり得ない。聖女などありえない。もし聖女になれる素養がある者がいるのなら、フローディア様より教皇である私にお告げがないはずがない。なのにその存在を知らされるどころか、既に完全治癒のギフトまで得ているなどそんなことが……


「フジワラの街にシスターローラの姿も確認されております。恐らく完全治癒のギフトに目覚めたシスタークリスを、街を管理しているあの魔人のハーフであるリョウスケという男に売ったのではないかと。そしてシスタークリスを聖女に祭り上げ、聖光教を信仰していないあの男が真聖光教を作り、経典を魔族に都合の良いように改悪し広めているのではないかと思われます」


「なんと! そんな悪魔の所業が許されるはずがありません! と、取り戻すのです! 魔族に騙され真の教えを見失っているシスタークリスを魔族から取り戻さねばなりません!」


 おのれ魔国め! 王国と帝国の裏で暗躍し係争地で戦争を引き起こさせるだけでは飽き足らず、女神様の子であるシスターにまで手を出し聖光教の教えを歪め邪教まで作るとは! しかもその教えを魔族に騙されているシスタークリスに完全治癒のギフトを使わせることによって広めているなど!


 急いでシスタークリスを救い出さなければ! 彼女を聖女に任命するのは教皇である私でなければいけません! そしてその力は聖光教のもとに使われなければなりません!


「ミッテルト枢機卿! 急ぎ各国に滞在している聖騎士に召集をかけなさい! 邪教徒を討ち滅ぼし囚われのシスタークリスを救うのです! これは聖戦です!」


「ハッ! ですがフジワラの街は帝国軍1万を退けた街。聖騎士たちの力は疑うべくもありませんが、全て集めたとしても千に届くかどうか……ここは各国にも召集をかけるべきかと」


「当然です。今度ばかりは王国に拒否や時間稼ぎは許しません。帝国もです。出兵を拒否するなら破門すると伝えなさい。これは聖戦なのです」


 万が一アルメラ王国が邪教に肩入れするのであれば、即破門して差し上げましょう。そうなれば信仰心の厚い国民から王家は見放され、反乱を恐れた貴族により現王と王妃は抹殺される。それがわからないアルメラ王でもありません。必ず聖戦に参加するでしょう。


 帝国も王国ほどではありませんが信者は多くいます。四公の存在がある以上、さすがの皇帝も仮病を使い続けるわけにはいかないでしょう。獣の国も似たようなものです。現地の大司教はどういうわけか獣王と謁見ができていないようですが、人類の奴隷であったあの者たちを勇者様のご意志に従い人族と同じように扱った聖光教会に逆らうはずがありません。喜んで聖戦に参加するはずです。


 しかしまさか南街に追放した者たちの中に完全治癒のギフトに目覚め、聖女となる資格を得る者がいたとは……ああ、フローディア様。なぜお教えいただけなかったのですか? これほど崇め敬っているというのに……


 ハッ!? まさか! これは試練なのでは? これまで闇に隠れていた邪教徒を殲滅し、シスタークリスを取り戻し信仰心を示せと。だから今の今まで聖女の存在をお隠しになられていた。


 死なせるわけにはいきませんね。圧倒的な戦力を集め、シスタークリスを救い出さなければ。さすれば私も完全治癒のギフトを得られるかもしれません。


 待っていなさいシスタークリス。私自らが魔族から救い出して差し上げましょう。



 ♢♦︎♢



「とりあえずこんなもんかな」


 俺は聖地の中心部に10階建てのマンションを建て終え一息ついた。


「あっという間に建っちゃったわ。何度見ても凄いギフトよね」


「頭上を日中はBランクの魔物の飛竜が、夜間はシャドウホークが飛び回っているこのエリアでこんな高い建物を建てて本当に大丈夫なの?」


「結界の範囲は十分検証したから大丈夫だって」


 突然現れた10階建てのマンションを見上げて感心しているサーシャの横で、滅びの森の奥地にこんな高い建物を建てて大丈夫なのかと不安がるリーゼロットに俺は笑いながら答えた。


 女神像を掘り起こしてから二週間。魔物の動きを観察した結果、女神像から半径500メートルは結界の範囲内だという事がわかった。試しに飛竜を挑発して街の中に逃げ込んだが、追ってきた飛竜はまるで見えない壁があるかのように近寄ってこれなかった。フジワラの街の結界だと挑発したら入ってこれるんだが、聖地の結界は魔物を完全に防ぐ物のようだ。


 それがわかった俺は、女神像を中心に半径300メートルの範囲を高さ10メートルの壁で囲んだ。


 フジワラの街が南北に400メートル、東西に300メートルなのでほぼ同等の広さと言っていいだろう。広範囲を伐採をしたり、フジワラの街にちょこちょこ戻ったりしていたので2週間ほど掛かった。そしてさらに1週間ほど各国から魔石を集めるのにかかり、今日やっと聖地の中心部付近に10階建てのマンションを建設することができた。


 ちなみに女神像は倉庫型の建物を建ててその中に入れてある。10階建てのマンションに比べたらかなり見窄らしい建物に見えるが、駄女神にはお似合いだろう。クリスはいずれ職人を呼んで教会を建てると言っていたが、こんなBランクの魔物が徘徊している場所まで職人は来ないと思う。言ったら泣きそうだから黙っていたけど。


 今回はマンションの建設の他にもやる事があるが、サーシャとリーゼロットとローラだけしか連れてきていない。フジワラの街というか真聖光教病院が忙しくてさ、副町長のシュンランとミレイアは残してきた。クロースは新たに受け入れる予定のダークエルフの里長が、街の様子を見学にしに来ているのでその応対をしている。一応彼女はダークエルフ街区管理責任者だからな。


 真聖光病院が忙しいのは各国の一般市民がやって来るようになったからだ。もう病院はあっという間に満室になり、急いで倉庫型宿泊施設を作って四肢の欠損の患者はそっちで受け入れることにしている。あと一週間もすれば一般市民の治療ラッシュとなるので、急いで聖地の宿泊施設を作らないといけなかった。


 とはいえ聖地に5階建てのマンションを建てて部屋数が足らなくなったら面倒なので、最初から10階建てのマンションを建てる方がいいと考えて魔石が貯まるまで待っていたというわけだ。バージョンアップしてBランク魔石でしか建てれなくなる前にというのもある。


 現金ならいくらでもあるんだけど魔石がな。車があることでBランクの魔物のいるエリアには来やすくなったのと、高ランクハンターを客にできるからBランク魔石も集まりやすくはなると思う。だが今後15階建てのマンションとか建てれるようになった時のことを考えたら、高ランクの魔石はいくらあっても足りないということはない。恋人たちのレベルアップも兼ねてどんどん集めていかないと。


 そんなことを考えているとローラが俺の腕にその豊満な胸を押し当てながら絡みついてきた。


「リョウ、それで私たちの別荘は最上階に?」


「あ、ああ。最上階はワンフロアーが俺たちの別荘となる。屋上にも露天風呂は作ったよ」


 最上階は丸々俺たちの別荘となる。部屋数はゲストルームを入れて10室に浴室は2つ、トイレも3つある10LDKだ。リビングはかなり広く、奥には畳を敷いて掘り炬燵も作った。これから雪が降る季節だし、この辺は結構積もるらしいしな。露天風呂に入りながら雪景色を見るのが楽しみだ。


「そう、今回は2泊くらいはできそう?」


「そうだな、まあそのくらいはフジワラの街を留守にしていても大丈夫だろう」


 訓練場の縄張りやダークエルフの精鋭たちの家も作らないといけないし、警備隊の詰所とドワーフたちに作ってもらった門も設置しないといけないしな。1日でできなくもないが、せっかくだし3人とゆっくりするのもいいか。


「ふふっ、そう。なら今夜は私が夕飯を作るわ。そのあとはみんなでお風呂で楽しみましょう」


「え? あ、ああ。そうだな」


 以外にローラは料理が上手だからな。彼女の部屋に行くと必ず作ってくれるので楽しみだ。


 しかしサーシャとリーゼとローラの三人と一緒に風呂に入るのは初めてだな。ただ、二人の前でローラが俺と二人でいる時みたいなSプレイをしないか不安だ。焦らすんだよこの子。口でするときも上に乗っている時も、俺が限界を迎えそうになると嗜虐的な笑みを浮かべてさ。『ねえ、出したい?』って聞いて来るんだ。それでさんざん言うのを我慢した挙句に耐えきれなくなって出したいって言うと、それがトリガーになったのか身体を盛大に震わせてイクんだ。もうSですよS。クロースのお仕置き部屋にある道具を見られないか不安で仕方ない。さすがに鞭で打たれるのは勘弁だ。


「ちょ、ちょっとローラ! みんなでお風呂で楽しむって!」


「あら? サーシャは今さら? リーゼと二人でリョウと屋上のお風呂でずいぶん長い間シテいたと聞いたけど? 私が混ざるのは嫌なの?」


「い、嫌というか恥ずかしいし……」


「フフッ、サーシャは感度が良くてかなり声が大きいからね。それが恥ずかしいのよね」


「リ、リーゼ!」


 確かにサーシャの声はデカイ。男としては嬉しいが、屋上の声がマンションの下まで届いていないか心配になったりする。でもオープン前のここならいくら大きな声を出しても大丈夫だろう。


「そういえば一緒に飲んでいる時にリョウに胸を揉まれて結構大きな声を出してたわね。大丈夫よ、私は気にしないわ」


「わ、私が大丈夫じゃないのよ! リーゼに見られるのだって恥ずかしいのに……」


「そう? 最近は始まったら私がいることなんて忘れて夢中になってるようにしか見えないんだけど」


「そ、そんなことないわよ!」


 リーゼの言葉に真っ赤になって否定するが、確かに最近は周囲が全く見えないほど感じている気がする。まさかあそこまで感度がいいとはな。胸が小さい子ほどおっぱいが感じやすいというのは本当だったな。アソコもすればするほど締まってキツキツになる名器だし、サーシャとする時は回数がどうしても増える。秘薬がなかったら三人の相手なんてまず無理だろう。


 だが問題ない。恋人が増えたことをリーゼからルーミルに伝えてもらったら、一週間後に大量の繁栄の秘薬を送ってきてくれたからな。さすがは我が心の友だ。精霊の森を取り返した暁にはお前のために家を建ててやる。是非受け取って欲しい。


「ふふふ、それは楽しみね。サーシャ、いつまでも恥ずかしがってないで部屋に行くわよ」


「そうよサーシャ、外は寒いし早く中に入りましょ」


「まあお風呂に入るからってするとは限らないし、な? だからそんなに恥ずかしがるなって」


「うう〜、もうっ! わかったわよ」


 その後別荘となった部屋でみんなで夕食をとったあと、屋上の露天風呂に四人で入った。


 サーシャが恥ずかしがるので俺は我慢するつもりでいたが、ローラとリーゼが両隣で終始俺のペニグルを握ったり耳を舐めたりして来るので、我慢できずそのまま襲い掛かることになってしまった。


 サーシャは顔を真っ赤にしながらも俺がリーゼとローラを並べて背後から激しく突いている姿を見ていたので、二人に出したあとにサーシャを抱き抱え向かい合いながら愛した。最初は恥ずかしがっていたが、始まるとリーゼとローラの存在を忘れたかのように大きな声を出していたよ。


 終わった時にそのまま悶絶死するんじゃないかってくらい恥ずかしがっていたが、そのあと俺もベッドでサーシャとリーゼの見ている前でローラに焦らされて悶絶するほど恥ずかしい思いをしたからおあいこだ。


 まさかリーゼまで焦らしに参戦して来るとは思わなかった。でも複数の女性に見られながら焦らされるのはまた新鮮で……なんだか新しい扉を開いたかもしれない。


 それから朝まで四人で楽しみ、足腰が立たなくなり起き上がれなくなった恋人たちを置いて俺は門を設置し、この宿場町を管理する予定のダークエルフたちの住む部屋を建てていった。


 とりあえずマンションは建てたので、高ランクのハンターへの宣伝が必要だ。聖地跡地といえば場所はすぐにわかるだろう。


 あとは真聖光病院だな。一般人の患者が増えたということは、もう教会の耳に入っているはずだ。となると聖戦だとか言ってフジワラの街を潰しに来るのは時間の問題だろう。


 だが帝国はともかく他の国とは、教会が真聖光教のことに気づいたら国民に大々的に聖女のことを公開するよう話がついている。帝国には伝えていないが、今は俺と敵対はしないはずだ。


 聖騎士だけで攻めて来るならそれならそれでいい。返り討ちにするだけだ。


 いずれにしろ聖光教会は終わりだ。信者を失い衰退していく未来しかない。


 さて、いつ動くかな。


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