第22話 聖地
「ここが聖地なのか?」
俺の目の前には千年の時を経て朽ち果てた、石の壁や建物だった物の残骸が散らばっていた。それはまさに昔テレビで観た遺跡そのものだった。
これまで狩りなどで通ったエリアにはここまではっきりと遺跡と呼べる物はなかったが、恋人たち曰く滅んだ国の城の残骸などは滅びの森の中に複数あるらしい。今度遺跡巡りをするのもいいかもしれない。
「そうよ、この先に大聖堂の遺跡があるわ」
俺の呟きにローラが答えた。
「そこの地下に女神像があるんだったな」
「そう伝わっているわ」
「この先に強い神力を感じます。急ぎましょう勇者様! 女神様がお待ちです!」
「わかったわかった。だがこの先に大規模なハイオーガの巣があるからそれを駆除してからな」
俺は魔物探知機に映る赤い点を見ながら今回同行したクリスにそう告げ、恋人たちと共に聖地跡地へと足を踏み入れるのだった。
聖地への道作りを開始して1ヶ月と少しが経ち11月も半ばとなった頃。俺たちは北に続く道の舗装を終え、とうとう聖地跡地へとたどり着いた。
途切れていた道からここまで歩いて4日程度の距離の道作りに、1ヶ月以上掛かったのには理由がある。それは各国からやって来る難病の患者の数が爆発的に増えたからだ。
予想していた通り一番最初に入院し難病が治った貴族や商人が帰国したあと、それまで死の淵を彷徨っていた彼等彼女らが、病気が治っただけではなく健康体となりパーティなどに顔を出した。それにより真聖光病院の存在が上流階級の人たちに爆発的に広がった。そのおかげで大量の貴族や商人たちがフジワラの街へとやって来て、ちょうどその患者たちが入院して1ヶ月が経ち治療ラッシュとなったので忙しかった。
あとは新しい恋人たちのレベル上げをしながら道を作っていたので、どうしても道造りのペースが遅くなった。
そう、新しい恋人たちだ。
結果的にローラと本番をしてしまってから2週間後。日々レベルアップをしていく彼女と、それを見た恋人たちとサーシャやリーゼロットの視線に耐えられなくなった俺は、シュンランたちに相談した後にサーシャの部屋でローラとサーシャとリーゼロットの三人にレベルアップの事を告げた。
が、三人とも驚いていなかったどころか、俺と本番エッチをするとレベルアップすることも気付いていた。それでまあ、その後は彼女たちからの告白大会となった。
ローラは初めて戦った時から俺のことが好きだったの。恋人じゃなくてもいいから今までのように一緒に飲んでたまに抱いてくれればいいと。
リーゼロットはもともとエルフ族から俺の嫁になるよう言われてはいたけど、それだけじゃないことはわかっているはずでしょと。精霊の森を取り戻すために強くなりたいし、伴侶にしろとは言わないからせめて恋人にして欲しいと。
そう二人が俺に告白をした後、サーシャへ視線を送ると彼女は真っ赤な顔で涙目になりながら戦妃に憧れていたと。強くなってみんなの役に立ちたいし、それにリョウスケのこともその……好きだしと蚊の鳴くような声で告白してくれた。
彼女も王妃から勇者の子を産むように言われ、俺が負担に思わないように王族から一般人にされてしまった経緯がある。秘密を知られてしまったし、事前に恋人たちからの了承は得た。まあクロースだけは渋面顔だったが。
俺も酔っていたとはいえあんなことまでさせた責任も少しはある。胸こそないが身長が高く、少しきつめだが顔立ちの整っている金髪美女のサーシャ。地球にいた時は物語やアニメでしか見たことがなく、思春期の頃は憧れていたエルフのリーゼロット。普段は表情が氷の美女と言えるほど冷たいが、俺と一緒に飲んでいる時は時折笑みを見せギャップ萌えをさせてくれるローラ。
こんな美女たちに告白されて断れる男がいるはずがない。しかも他に恋人がいてもいいと言ってくれているんだ。受け入れないはずがない。
それに酔って意識がはっきりしていない時にサーシャとリーゼロットによるダブルフ○ラ。あれをシラフの時に見たいしさせたいという気持ちもあったことは否定しない。ローラともちゃんとやり直したかったし。
俺が三人に恋人になって欲しいと伝えると、ローラはうっすらと笑みを浮かべ、リーゼロットは俺に勢いよく抱きついてキスをしてきた。サーシャは俯いて表情がよく見えなかったが、口もとに笑みが浮かんでいた。
その後はお互いに少し照れつつも彼女たちの部屋で飲み会が始まった。その途中でローラがサーシャたちの耳元で何か言ったあと、俺にキスをしてお先にといって帰った。
赤面しているサーシャと、何かを期待するような目を向けるリーゼロット。そんな彼女たちを見てまあそういうことなんだなと思った俺は、彼女たちの間に入りリーゼロットとキスをしたあとに、カチコチに固まっているサーシャのあごに手を当ててキスをした。それから間取り図のギフトでルーフバルコニーにジャグジーバスを設置し、恥ずかしがるサーシャの服を脱がして三人でお風呂に入ってリーゼロットのベッドルームで二人の初めてをもらった。
リーゼロットは獣で、サーシャはシュンランとミレイア並の名器だったとだけ言っておく。
もちろん翌日の夜は、ローラの部屋であのわがままボディを堪能させてもらった。やっぱり修道服プレイは興奮した。ただ、最近は慣れてきたのかSっ気が出てきて行為中に言葉責めをしてくるんだ。上に乗ってギリギリで焦らしとかもしてきて、俺が苦しむ姿を妖艶な笑みを浮かべて見下ろしてくる。そういうのが興奮するらしく、別に俺はMじゃないが嫌がらず付きあっている。その方が締まりも良いし。鞭で叩いてくれとか言ってくるクロースよりはマシだ。
その後は部屋数のこともあり新しい恋人たちとは同棲はせず、俺が彼女たちの部屋に通う形になっている。恋人が3人から一気に倍の6人になってしまったが、俺にとってシュンランとミレイアは特別な存在だ。二人に寂しい思いをさせないように、街にいる時は夜だけじゃなくて昼もできるだけ二人と一緒の時間を増やしている。この間は車で二人を連れて東街までデートに行ったりもした。東街に近づくとすれ違う馬車なんかがグラディエーターを見て驚いていたが、今後ダークエルフたちに輸送を頼むつもりだし早めのお披露目をした感じだ。商人が売ってくれってうるさかったけど。
まあそんな感じで恋人が増え、治療やデートなんかで道作りが遅れたが今日やっとこさ聖地にたどり着いたというわけだ。クリスは今日聖地に着くと言ったら、大喜びで付いてくると言って車に乗り込んできたので連れてきた。女神像を確認したいんだってさ。
そして聖地に入り伐採をしながら進むと廃墟に巣を作っていたBランクのハイオーガと、そのボスであるAランクのキングハイオーガが襲い掛かって来た。魔物探知機に映る赤い点の数は40ほど。これまで相対したハイオーガは多くても6体ほどだったが、さすがキングがいる巣のある場所というべきか。
しかしレベル52になり神器も進化した俺と、レベル38で爆炎の竜魔法を扱うシュンラン。レベル36となりより強力な雷のギフトと魅了を使えるようになったミレイアと、レベル34となって鉄人1号だけではなく、その補助として鉄のゴーレムを複数生み出せるようになったクロース。
そしてレベル28となり強力な氷のギフトを連発するローラに、レベル22となって魔力が大幅に増え強力な精霊魔法を使えるようになったリーゼロット。最後に戦闘職でないことからレベルは上がり難いが、それでもレベル18となりギフト『女神の祝福』の身体能力と精神力向上の効果が1.2倍から1.5倍へとなったサーシャ。
そんな伝説の戦妃の卵が6人もいるうえに、クリス以外は火災保険の『家族特約』の効果でほぼ無敵だ。つまり打撃以外は魔法も武器での攻撃も一切通用しないチート集団だ。
複数の廃墟から出てきたハイオーガに対し、炎や雷を纏い5本に分裂しさらに透明となった俺のペングニルを放ち、その横ではシュンランが遺跡ごとハイオーガを爆砕させる。別の廃墟から出てきたハイオーガをリーゼロットが強力な精霊魔法で一箇所に集め、ミレイアの轟雷が焼き尽くす。
それらの攻撃を潜り抜け襲い掛かってくるハイオーガはローラによって氷漬けにされ、鉄人1号とアイアンゴーレムの放つ機関銃で蜂の巣にされた。
あっという間にBランクの魔物の群れを無傷で殲滅することができた。とは言ってもキングハイオーガはさすがAランクというべきか、なかなかに素早くてそしてタフだった。シュンランの爆炎に耐えたし、クロースなんか機関銃の弾を避けられて焦っていた。
まあ俺がペングニルにミレイアの雷を纏わせて、さらに5
「うーん、チートだな」
手元に戻ってきたやたら豪奢になったペングニルと、黒焦げになって倒れるキングハイオーガを見下ろしながらそう呟くと隣にいたリーゼロットが反応した。
「Aランクのキングハイオーガを一撃は驚いたわ。ペングニルに私のシルフも纏わせれるみたいだし、さすが神器よね」
「機関銃に弾を避けられた時は俺も焦ったけどな。そろそろ機関銃だけだと厳しい気がするんだよな」
地竜にはあまり効果がないし、キングハイオーガクラスになると避けてくる。それでも魔物が魔法や武器で攻撃してくれれば火災保険で防げるが、今後竜なんかを相手にした時は太刀打ちできなくなるだろうな。もっと機関銃の威力があれば別だけど。
「そうね、これ以上奥に行くとなると機関銃だけだと厳しいかも」
「聞こえたぞ! 私はまだ大丈夫だ! さっきは避けられたけど、ゴーレムを増やして包囲すれば次は当たるのだ!」
俺とリーゼロットの会話が聞こえたのか、鉄人1号から降りてきたクロースが今後の対応策を口にした。
「あなたねえ、上位精霊と契約してるんでしょ? 機関銃に頼らずに精霊魔法を普通に使えばいいじゃない。大きな落とし穴だって作れるし、リョウみたいに鉄の槍をたくさん生み出すことだってできるでしょ」
クロースの契約している土の精霊であるノームは、彼女がレベル30を超えた辺りで中位から上位精霊となった。それにより魔力が爆発的に増えたが、その魔力をクロースは全てゴーレムに注ぎ込んでいる。
「何を言っているのだ。落とし穴なんか作ってもつまらないだろ。鉄の槍にしたって、機関銃で鉛玉をたくさん撃った方が強いに決まってる」
「呆れた。貴女ほどの魔力があれば落とし穴を作って魔物をそのまま埋めることだってできるでしょうに。膨大な魔力があっても豚に真珠よね」
「なんだと淫乱貧乳エルフ! 私が豚の真似をするのはリョウスケとの夜の時だけだ! 貴様こそイヤらしくリョウスケに迫ってる発情期の豚ではないか!」
ちょ、クロース。いや、確かにクロースの求めに応じて鼻フックをしてブヒブヒ言わせながら尻を叩いてはいるけど……
「なっ!? 発情なんかしてないわよ! お、思ってた以上に気持ちいいものだったから、今まで知らなかったのが悔しくてその分を取り戻そうとしているだけよ」
まあ初日に治癒水を飲んで痛みが無くなった途端に、『こんなに気持ちいいのを今まで知らなかったなんて損した気分だわ!』って悔しがってたな。じゃあ俺以外の男と先に経験したかったのかって言ったら、『意地悪、リョウ以外となんて考えられないわ』って言って拗ねていたのは可愛かったけど。
そんないつものように言い合いをしている二人を顔を真っ赤にしながら見ているクリスを置いて、俺はシュンランたちと一緒に倒したハイオーガの魔石を回収するのだった。
♢♦︎♢
「ここか?」
聖地の奥にやってきた俺は、今では柱だけしか残っていない大聖堂の前で立ち止まった。
「はいっ! この下から強い神力を感じます! 間違いなく女神様の像があります!」
「そうか、それじゃあ掘るから魔物探知機を見ていてくれ」
やたら興奮しているクリスにそう答えたあと、彼女を見て苦笑しているローラを横目に魔物探知機をシュンランに渡した。
そして祈り始めたクリスへ背を向け、両手を地面について地上げ屋のギフトを発動した。
すると地面が隆起し、地中の土が次々と地上へと吐き出されていき……
「ああっ! 女神様!」
クリスの叫び声とともに女神像の頭部が地上へと顔を出し、少ししてその全身と土台となる分厚く巨大な石が姿を現した。女神像の姿は神殿にあった物と全く同じだが、サイズが一回りほど大きかった。そして不思議なことに長い間土の中に埋まっていたはずなのに土汚れが一つもなかった。
なんだよ、ボロボロになったフローディアの像を想像してたのになと残念な気持ちになっていると、突然俺の持つ神器とシュンランの持つ青龍戟が光り出した。
そしてその光に呼応するかのように女神像が金色に輝いた。
十数秒だろうか? その光景をぼう然と見ていると神器と女神像が発していた光は収まった。
すると必死に祈りを捧げていたクリスがおもむろに口を開いた。
「周囲に神力を感じます。フジワラの街に満ちていたのよりも強力な神力が聖地に満ちています」
「てことは結界が張られたってことか?」
「恐らくそうだと思います。範囲はフジワラの街よりもかなり狭いですが、そのぶん強力になっている感じがします」
「なるほどな」
女神像に神器が反応したって事は、あらかじめフローディアが設定していたんだろうな。結界も周囲に強い魔物がいるから、範囲を狭めて強力な結界になるようにしたってところか。フジワラの街の結界はチュートリアル用なのか低ランクの魔物が中に入れるが、ここの結界は全ての魔物が入れない感じかな? 周囲にはBランクの魔物しかいないしな。それが低ランク扱いになって中に入れたら結界の意味がないし。
うーん、ずいぶん都合が良い展開だが、フローディアもここに自分の像があることを知らないわけないしな。となればチュートリアル用の結界に気付いた俺が、ここに来て街を作って魔石を集めるのを予想するのは簡単だ。
まあいい、結界があるならここに第二の街を作ってやろうじゃないか。ダークエルフ族の残りの里を全部引き入れて、若く強い者たちをここに常駐させればいいだろう。管理は車がある以上、俺が行き来するのはそこまで手間じゃない。
まずは結界の範囲と本当に魔物が入ってこないか実験する必要があるな。街造りの計画はその後だ。
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