第21話 匂いフェチ聖女とハニートラップのその後




 ——フジワラの街1区 真聖光病院 聖女クリス——




「では治療を始めます」


 私は目の前のベッドで横たわる死にかけと言っていいほど衰弱している成人男性にそう声を掛けた。


 この男性は王国の大商人の長男らしく、父親と母親。そして奥様とまだ小さい娘さんと一緒にこの病院へとやって来ました。今はご家族には別の部屋で待機してもらっています。


「せ、聖女……様……本当に……治るので……しょうか?」


 男性が落ちくぼんだ目で不安そうに聞いてきます。やはり1ヶ月の間、治療らしい治療をしなかったことに不安を抱いているようです。


「はい、女神フローディア様のお力にて、どのような病気も治すことができますから安心してください。大切なことは健康だった頃のことを強く思い浮かべ、フローディア様へ祈ることです。できますね?」


「はい……5年前の……健康だったあの時……フローディア様……聖女様……どうか……愛する妻と娘とまた過ごせるように……お願いします……お願いします」


「大丈夫です。必ず治りますから。ただ、とてもまぶしいので枕を顔にかぶさせていただきますね?」


 私が笑顔でそう言うと患者の男性はゆっくりと頷き、そのあと中年のダークエルフの看護師さんが枕を患者さんの顔へ優しく押し付けた。


 患者さんの視界が塞がれたことを確認した私は、勇者様が隠れている洗面所へと視線を向けた。すると勇者様は頷き、ギフトを発動して金色の光を放つ四角い箱に大量の魔石を投入していった。


 そして魔石の投入が終わるタイミングで、私と看護師さんたちは勇者様より頂いた目隠しをして偽りのギフトを発動する。


『完全治癒』


 その瞬間、患者さんを中心に病室全体が金色の光に包み込まれた。


「ぐっ……あ……ハァハァハァ……あ、あれ? 苦しくない? 身体も動く……なっ!? 腕の肉がこんなに……」


 光が収まった頃、患者さんの戸惑う声が聞こえてきた。


 目隠しを外し患者さんを見ると、これまで自力で起き上がれなかった彼が身を起こし自身の身体を見て戸惑っていた。


 それはそうでしょう。骨と皮しかなかった身体には肉が付き、青白かった顔は血色の良い健康的な顔色になっているのですから。


「これで死の病は完治いたしました。フローディア様に感謝を」


「あ……あ……本当に……本当にあの病が……聖光教会も薬師にもさじを投げられ死を待つしかったあの病が……」


 まるで信じられないと言った様子で男性が自身の身体を見ていると、病室のドアが勢いよく開きご家族がなだれ込んできました。


「ヨーゼフ!」


「あなた!」


「パパ!」


 それからは家族全員で涙を流しながら抱き合い、病気の完治を喜びあっていました。


 ついついもらい泣きをしていると、勇者様が黙ってハンカチを差し出してくれました。


 私はそのハンカチで涙をぬぐいながら、密かに匂いを嗅ぎました。その瞬間、私の身体は熱いものでいっぱいになりました。


 ああ……勇者様の匂い……これが神の使徒様の発する匂い……


 どうして勇者様の匂いを嗅ぐとこんなに身体が熱くなるのでしょう? ローラさんは匂いフェチなどと言ってましたがどういう意味なのでしょう?


 とりあえずこのハンカチはその……夜にも色々と使うのでお返しするのは後日に致しましょう。


「ほら、次は308号室の四肢の欠損患者のとこに行かないと」


「ぐすっ……スーハー……はい」


 心配そうな顔で私の頭を軽く撫でたあと肩を抱いて病室の外へと誘導してくれた勇者様に、私は最後のひと吸いをしてからハンカチを真っ白な修道服の中にしまいました。そしてエレベータに乗り、看護士さんの案内のもと次の部屋へと向かうのでした。



 聖光病院が本格的に稼働して4ヶ月。私は日々欠損患者さんと、重病を患った患者さんの治療に追われています。


 いえ、私はいっさい治療をしていないので、勇者様の付き添いをしているだけですね。


 フローディア様のお声が聞こえるようになったことで、もしやと思い治癒のギフトを試しましたが、やはり私に四肢の欠損を治すことはできませんでした。なのに私は聖女としてこの街のハンターだけでなく、王国や獣王国。そして魔国から来た貴族や商人の方にも崇められています。


 私には中級治癒水を作るくらいの能力しかありません。そもそも元は一介のシスターに過ぎません。私は両親を知らないまま教会の孤児院で育てられ、12の時に教会本部に配属されました。


 そこで当時16歳だったローラさんと出会いました。ローラさんは枢機卿の娘であるにも関わらず信仰心が薄く、聖騎士たちを相手に剣とギフトの訓練ばかりしていました。そんなローラさんに私は信仰心を持って頂きたく、何度もフローディア様の素晴らしさを語りました。全て無駄でしたが……


 そんな時でした。今から2年ほど前。私が15歳になった時のことです。私は司教の一人に襲われました。抵抗する私に司教は私の母親は治癒のギフトを持ったシスターであること。父親は司教か枢機卿の誰かであること。治癒のギフトを持つシスターは、司教たちの精を受け子を孕む義務があることを知らされました。


 私の出生もそうですが、聖なる教会内でまさかそんなことが起こっているなんて……そしてそれらを教皇様が黙認するどころか、率先して行っていることを知り私は絶望しました。そんな私を司教は醜悪な表情で見下ろし、抵抗する気力が無くなった私の修道服を脱がせようとしました。


 その時でした。突然室内に冷気が蔓延したと思ったら、司教の全身が凍りつきました。何が起こった混乱していると司教の首が刎ね飛び、その後ろに冷たい目をしたローラさんが立っていました。そして彼女はそのまま司教や大司教たちだけでなく、聖騎士たちをも凍らせ教皇様へと剣を突きつけました。


 その後はローラさんのお父様のシュリット枢機卿が現れ、教皇様とローラさんで話し合いがされました。その結果、私と十数人のシスター。そしてローラさんに味方した聖騎士たちが南街へと異動することになりました。一人大司教様が付いてきましたが、恐らくお目付け役なのではないかと思います。


 それから約2年。今年の初め頃にローラさんに連れられフジワラの街に来てから色んなことがありました。いきなり街を手に入れようとローラさんが武力を行使した時は驚きましたが、勇者様によって呆気なく倒されてしまいました。当時はリョウスケさんが勇者様だとは知らなかったので、ローラさんが倒されたことに私も聖騎士も驚きました。その後私たちは捕らえられ監禁された部屋でキッチンだけではなくおトイレの水まで聖水だと知って仰天し、女神像の存在とリョウスケさんが勇者様であることを知らされました。そしてあれよあれよという間に真聖光教を立ち上げ、聖女に祭り上げられてしまいました。


 腐敗した聖光教会を正すために必要なことだと、そう女神様の使徒である勇者様に頼まれて断れるはずがありません。私は渋々ですが聖女となることを承諾しました。


 それから勇者様が四肢の欠損を治せることを知り、病院を建設されました。私は四肢の欠損を治せませんが、勇者様の身代わりとなり私が治したことにしました。これは勇者様の存在を帝国や教会に知られないようにするために必要なことでした。


 ところが難病を患っている獣王国の王女様であるラティ様を受け入れ、なんと病気まで治してしまわれました。魔石が大量に必要ですが、その力は700年前の聖女様だけがお使いになることができたと伝わる『完全治癒』のギフトに匹敵します。


 その後、死を待つしか無かった人たちを何人も救いました。人の運命までも変える存在。リョウスケさんはまさに勇者と呼ぶに相応しい存在でした。


 黒い瞳に整った顔立ち。そして強くて優しくて崇拝する女神様の使徒である勇者リョウスケ様が、私の中で唯一絶対の存在となった瞬間でした。


 その頃からでしょうか? 勇者様の匂いを嗅ぐと身体が熱くなるようになったのは……ああ、今も隣にいる勇者様の体臭がほのかに漂ってきます。このままこの厚い胸に顔を……


「フラフラしてどうしたんだクリス?」


「え? あ、いえ……す、少し寝不足なのかもしれません」


「また夜遅くまで祈ってるのか? 最近またあの女神から何か聞こえたか?」


「あ、はい。最近は『れべるあげ』というのに忙しいようです。『かくせい』したことによって上限突破したとか」


 私がそう答えると勇者様は引きつった表情で『そ、そうか』と言って押し黙ってしまいました。『れべるあげ』や『かくせい』がなんのことかご存知なのでしょうか?


『かくせい』とはもしや覚醒のことではないでしょうか? それならばなんとなくわかる気がします。勇者様の伴侶であるシュンランさんにミレイアさんにクロースさんは、明らかに常人ではないお力を持っています。


 勇者ロン・ウー様の伴侶であり、アルメラ王国王女でもあったティファ様。同じく伴侶であり竜王様の姉君であったセドラ様。そしてエルフの伴侶であるエレンミア様。


 いずれも戦妃と呼ばれるほど強大な力を持っていたと聞きます。恐らく勇者様から特別な加護を与えられ、覚醒し上位の種族となったのではないでしょうか。


 クロースさんは魔力が向上し鉄の巨人まで作れるようになり、シュンランさんは最近黒い炎の竜魔法を使えるようになりました。ミレイアさんも魔力が爆発的に上がり、魅了の魔法まで使えるようになったこそうです。お二人ともハーフなのにです。恐らく勇者様から加護か祝福のようなものを与えられたのだと思います。私も勇者様の伴侶となれば身体能力や精神力が上がるのでしょうか? そうなれば完全治癒を使えるようになるのでしょうか?


 あれ? でも一昨日訓練所までローラさんを探しに行った時に、彼女が放つ氷のギフトが強力になっていたような……もしかして加護を得たのでしょうか? そういえば最近になって勇者様と一緒に狩りから帰った夜は、必ずといっていいほど隣のローラさんの部屋からうめき声が聞こえてきます。翌日に心配になって聞くとただの成長痛だと言っていましたが、21歳になって成長痛? もしかして加護と関係があるのでしょうか? でも一緒に狩りに行っていたサーシャさんやリーゼロットさんは、そういうことはないと言っていました。今思えばお二人とも目が泳いでいた気がします……何か知っているのでしょうか?


 これはローラさんを問い詰めないといけませんね。そしてできれば私も加護を得たいです。そうすれば四肢の欠損を治せるようになるかもしれませんし、いずれ完全治癒のギフトを使えるようになるかもしれません。そうなれば勇者様のお手を患わせることなく私が治療をできるようになるわけですし。張りぼての聖女ではなく、本物の聖女になればきっと勇者様もお喜びになって私を抱きしめてくれるかもしれません。そして私は勇者様の胸の中で思いっきり深呼吸を……


 あっと、いけません。私としたことがなんてはしたない妄想を。


 ですが苦しむ人たちを救い、勇者様の負担を軽減するためならば私は何でもするつもりです。さっそく今夜ローラさんに聞いてみることにしましょう。



 ♢♦︎♢



 北の聖地に向け木々の伐採と整地を行っていると、レベル50となって進化した魔物探知機に赤い点が複数現れた。


 その赤い点を指でタップすると、茶色の鱗をまとった地竜と真っ黒な肌をしたハイオーガ。そして真っ白な体毛の獅子の姿が映し出された。いずれもBランクの魔物だ。


 進化したことにより探知範囲が500メートルから1キロになり、タップすると魔物の姿が映し出されるようになった。さらには長押しでその魔物をロックすることもでき、逃げられても追跡が可能となった。そのうちアラーム機能が付くかもしれない。


「1キロ前方から地竜1頭、後方からハイオーガ5体。右側面からも氷獅子が来るぞ」


 魔物の種類が判明した俺は、後ろを歩いていたミレイア、クロース、サーシャ、リーゼロット、ローラへと注意を促した。


「私はハイオーガをやるぞ! 地竜には機関銃があんまり効かないからな!」


 鉄人1号に乗っているクロースが真っ先に機関銃を後方に構えそう叫んだ。


「では私は氷獅子を相手にしよう。相性が良いからな」


 隣で一緒に木々を伐採というか爆散させていたシュンランが、俺の持つ魔物探知機をチラリと見て氷獅子の位置を確認した後、青龍戟を手に右側面へと駆け出した。


「じゃあ地竜は俺がやるか、ミレイア雷を頼む」


 地竜がやって来る方向に進化していっそう豪華な見た目になったペングニルを構え、ミレイアに雷を付与してもらえるように頼んだ。


 ペングニルも進化したことによって新たな機能が追加された。一つは分身が2から5に増え、もう一つは四属性や雷などを槍に付与することができるようになった。雷をペングニルに放てば雷を纏い、炎を放てば炎を纏うといった感じだ。これがまあ強力で、地竜相手でも一撃で倒せる。


「はいっ!」


「待って、地竜は私がやるわ」


「そ、そうか……なら頼む」


 ミレイアが雷をペングニルに放とうとしたところでローラが割って入り、俺の隣に立った。


 俺はローラには無理だろうとも、手伝うとも言わない。いや、十日前の彼女にだったら言っていたし手伝ってもいた。だが今の彼女にはその必要がないだけだ。


「ふふっ、見ていてね愛しのリョウ」


「あ、ああ」


 前に立ち俺の胸に背を寄りかからせながら頬を近づけ耳元で囁くローラに、俺は冷や汗を流しながら答えた。


 少しして背後から機関銃の音が聞こえ、右側面の森の中から爆音と獅子の断末魔が響き渡った。ハイオーガにはギリギリ機関銃が効くし、氷の魔法を放つ氷獅子にシュンランの爆炎の竜魔法は特攻攻撃と言っても良いほどだ。あっという間に決着がついたのだろう。


 ちなみにクロースの希望虚しくシュンランの放つ爆炎の竜魔法による魔法名は、黒炎・豪炎・黒炎弾・黒炎地獄・爆炎という魔法名となった。詠唱もなければベノンとか叫ぶことはない。なぜだっ! ってしつこく騒ぐクロースの頭にシュンランのゲンコツが何度も落ちたのは言うまでもないだろう。


「喰らいなさい! 『凍結世界』!」


 そうこうしているうちにあっという間に50メートルほどまで近づいていた地竜に対し、ローラは数歩ほど前に出て氷のギフトを発動し地竜の足を完全に凍らせその動きを止めた。体長7〜8メートルはある地竜の動きをだ。


 十日前にはあっさり氷を砕かれ動きを止めることができなかったが、今では完全に動きを止めることができるようになっている。


「ふふふっ、串刺しになりなさい! 『氷山』!」


 次に動きを封じられた地竜の真下から百本に及ぶ氷の槍が突き出された。それらは鱗のない腹部に突き刺さり、地竜は地響きのような低い叫び声をあげた。


 この俺の千本槍の氷版の技も十日前には十本くらいしか出せなかったが、今じゃ百本だ。


 腹部を串刺しにされた地竜はそのまま倒れるかと思われたが、そこはBランク魔物の意地だろう。最後に地属性の魔法を放ち、十本ほどの土の槍がローラへと襲い掛かった。


 ローラはギフトで対抗する気配はない。俺も何せず傍観している。後ろで見学しているリーゼロットも動く気配を感じられない。


 そしてローラに全ての土の槍が襲い掛かり、その身を串刺しに……する前に消滅した。


 それと同時に地竜の『なんでだよっ!』と言いたげな断末魔の声が聞こえ、横倒れになったことによる地響きが周囲に響き渡った。


「ふふっ、さすがは勇者の加護ね♪ 愛してるわリョウ」


「そりゃどうも」


 上機嫌で振り向き、俺の頬にキスをしてサーシャたちのもとに歩いて行くローラの後ろ姿を眺めながら、俺はガックシと肩を落とすのだった。


 もう説明するまでもないだろう。ローラはレベルアップした。しかもBランクの魔物を相手にしていたこともあり、すでにレベル20を超えている。彼女の手前で土槍が消えたのは、進化して新たに『家族特約』が付いた火災保険の影響だ。家族特約とは、俺が恩恵を受けている保険を家族も受けられるという保険だ。つまりシュンランもミレイアもクロースもローラも、台風、暴雨、地震、積雪、落雷、ひょうの保険が適用されるというわけだ。やっぱシュンランが勇者でいいんじゃないかと思う。


 ちなみにアンドロメダスケールは100メートルまで長さが伸び、幅も10センチほどになった。こっちは特に追加機能はないが、以前よりかなり切れるようになった。


 それでだ。なぜローラまでレベルアップして家族特約まで受けれるようになったかというと、ことの発端は十日前に久しぶりにサーシャとリーゼロットとローラたちと飲んだ時だった。


 初回以降はレベルアップのことを聞かれなかったので、その日はクロースを連れて行かなかった。連れて行っても俺より先につぶれるから役に立たないというのもある。


 そしていつも通り彼女たちの刺激的なコスプレを眺めながら酒を飲み楽しんだ。その日はクロースたちから借りたという、大人のおもちゃの自販機で買ったエッチなランジェリーを彼女たちは身に付けていた。最初は元王女がそんな格好をして大丈夫なのかよと思ったが、酔いが深くなっていくうちにどうでも良くなった。それよりも恥ずかしそうな顔で白のTバックと、スケスケのベビードールを身に付けている彼女に興奮した記憶がある。もしかしたら胸と尻を揉んだかもしれない。


 いつもならそのまま意識を失い気がつけば自室のベットで寝ているはずなんだが、その日はいつもより酔いが浅かったのだろう。下半身に走る快楽に目が覚めた。


 そして目を開けると、そこには俺のペニグルに舌を這わせているサーシャとリーゼロットの姿があった。


 もうパニックになったね。何で二人が俺のペニグルを!? ってさ。そういえば彼女たちと飲んだ翌日にやたらと脱力感を感じていたが、まさかこれが原因かって。


 そんなことを考えているとふと横から視線を感じ、慌てて目をつぶって薄目で横を見ると、そこには口元に笑みを浮かべながら俺を見ているローラの姿があった。


 彼女はおっぱいをさらけ出しており、胸の谷間には白い液体がこびりついていた。そして彼女の口の端にも白い液体が見え、俺は既に吸い取られた後だということを察した。慌てて目をつぶったがバレてないか不安になると同時に、寝ていて彼女にしてもらっている時の光景を見ることができなかったことを悔やんでいた。


 そうこうしているうちにリーゼロットが俺のペニグルを咥え、激しく上下しだした。それと同時にサーシャもペニグルの柄にある袋に舌を這わせた。その連携は明らかに慣れている様子で、俺はあっという間に限界に達し放出した。するとその放出したものをリーゼロットとサーシャが代わる代わる飲み込み、最後にリーゼロットがペニグルを舌で綺麗にしてくれた。


 そして彼女たちの会話が聞こえてきた。


『二発目なのに相変わらず濃いし量も多いわね』


『でも本当に効果あるの? もう何度も飲んでるのに全然身体能力が上がらないわよ?』


 そんな会話を聞いた俺は、まさか俺の子種がレベルアップに関係してると思ったからこういうことをしていた? ということは、やはりだいぶ前から俺は彼女たちの口で……くっ! なんで記憶がないんだと心底残念な気持ちだった。


『そうね、やっぱり効果がないのかもしれないわね。でも私はもう少し試してみるわ。次からサーシャはやめておく?』


『え? わ、私ももう少し……』
 



『ふふふ、サーシャもエッチよね。バーニャで練習してるくらいだしね』


『そ、それは早く出すためよ! 別にリョウスケのためなんかじゃないんだから!』


『ハイハイ、そういうことにしておいてあげる。ほら、口に白いの付いてるわよ、ちゃんと一滴も残さず飲みなさいな』


 リーゼロットの言葉にサーシャがペロリと白いものを舌でなめとる姿を薄目で見つつ、俺はバーニャってたしかバナナみたいな果実だったっけ? まさかサーシャがバーニャで俺のペニグルを舐める練習をしていたとはと考えていた。


 しかしすぐにいやそれどころじゃ無かった。絶対に目が覚めたことを知られるわけにはいかないと思い至った。


 俺が起きていた事が知られたらめちゃくちゃ気不味くなるうえに、必ずレベルアップの話になるはずだ。彼女たちにここまでさせておいて黙っていられる自信が俺にはない。だから俺はずっと寝たふりをすることにしたんだ。


 しかしそう甘くはなかった。


『ふふっ、そうね。そろそろ別の方法も試す時かもしれないわね』


『ローラ、別の方法って何よ? 飲む意外に何があるの?』


『まさか……本当にやるのローラ』


『ええ、まずは私がやって効果を確認するから、二人は次の機会にしましょう』


 ローラがそう言った後、俺の腰に誰かがまたがる気配がした。薄目を開けてみてみると、ローラが俺のペニグルのすぐ上にまたがっていた。


 まさか! と思った俺は、慌てて彼女をどかさないとと思ったが、俺が起きていることを知られるわけにいかないと迷い動き出せずにいた。


 そうこうしているうちにローラが濡れてびしょびしょになっているショーツを脱ぎ、俺のペニグルに指を添えゆっくりと腰を落とそうとしていた。


 やっぱりこんなのは駄目だと思った俺は、目を開け彼女を突き放そうとした。が、その腕をローラに捕まれ、俺に覆いかぶさった彼女が耳元で『好きよ。ずっと好きだったの』と囁いたことで力が抜けてしまった。


 それからはキツイ彼女の中に俺のペニグルは埋まり、痛みを堪えながらもお尻を上下に動かすローラの中で果てた。


 横でずっと赤面しているサーシャとリーゼロット見られながらだ。めちゃくちゃ恥ずかしかった。


 そしてローラにおぶられ酒場を出て、いつも通り家へと送ってもらいシュンランに部屋へと運ばれた。そこで眠ったふりをやめ、己の馬鹿さ加減に自己嫌悪して眠りについた。


 それから十日の間に何度も聖地へ向けての道作りのために遠征してきており、その度にローラは強くなっている。


 当然シュンランたちが気付かないはずが無く、事情を説明して素直に謝った。彼女とミレイアは仕方のない恋人だと笑って、レベルアップのこともあるし責任は取るようにと言っていた。まあクロースだけはあんな淫乱暴力氷女と一緒に住むのは嫌だぞと文句を言っていたけど。


 やはりこの世界で育った恋人たちは、俺に恋人が増えることに抵抗はないらしい。それでも申し訳ない気持ちでいっぱいだったし、ローラとはあれ以来二人になる機会もなくて話し合っていない。サーシャとリーゼロットがローラのレベルアップに気付いていないはずもなく、今後俺はどう彼女たちに接していけばいいのか悩んでいる。


 意識がなかったとはいえ、あんなことをさせた以上はやはり責任を取るべきなんだろうな。ローラとリーゼロットはいい。俺のことを好きだと言ってくれているし、俺も憎からず思っている。でもサーシャはどうなんだろ? いくらレベルアップが目的でもあんなことをする子じゃ無いとは思うんだが……


 俺は地竜を無限袋に入れながら、それとなくサーシャたちがいる所に目を向けた。そこには獲物を狙う目をしたリーゼロットと、俺と目が合った瞬間に赤面して顔を両手で隠すサーシャがいた。ローラは相変わらず熱っぽい目で俺を見ている。あの日から俺への好意をまったく隠さなくなってるんだよな。


 はぁ……こうなったら三人にちゃんとレベルアップのことを話すとするか。それで今後どうするか話し合おう。まさかあんな風に秘密がばれるとはな。もう絶対一人で女の子と酒は飲まない。絶対だ!

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