第28話 新たな住人

 

 ——ラギオス帝国 帝都 シュバイン公爵家 屋敷 ウルム・シュバイン——




「なんだと? それは本当なのか?」


「はい。嘘偽りはございません」


「……信じられん」


 私は2ヶ月ほど王国が建築した砦へ潜入調査をさせていた密偵からの報告に愕然としていた。


 それはそうだ。砦には帝国でも作ることができない高度な魔道具が溢れ、飲んだこともない極上の酒が売られており、さらにはダークエルフが里ごと住み着いているなど信じられる話ではない。


 しかし目の前の密偵は代々我が公爵家に仕えている一族。私のためならその命すら惜しまないほど忠義に厚い者たちだ。その者が私に虚偽の報告をするはずがない。ならば本当のことなのだろう。


 無限に出る水とお湯に、小型の冷風機と暖房機に髪を乾かす魔道具。冷たくなった料理をすぐに温めることのできる魔道具に、音楽を記憶し100以上ある部屋に流す魔道具。それだけではない。それらを部屋の外へ持ち出すことができない結界の魔道具まであるらしい。そのような物を造ることは、世界一魔導技術が発達しているこの帝国でもできはしない。


 私は目をつむりゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着かせてから使用人に成りすましている密偵へと再び視線を向けた。


「砦の名はフジワラの街だったか。その街の長であるリョウスケ・フジワラという男がそれらの魔道具を作ったというのは間違い無いのだな?」


「はい。ハンターたちは本人からそのように聞いているようです。本人は20代半ばほどの青年ですが、亡き父親がどこかの国の辺境で隠遁していた凄腕の魔導技師であったとか。また、その武力も非常に高く、あのシスターローラが率いる騎士団をほとんど一人で打ち負かしておりました」


「シスターローラ? ああ、あの教会の問題児か。確か水の派生である氷のギフト使いだったか?」


 教会の枢機卿の一人娘で相当なじゃじゃ馬だと聞いたことがある。


「はい。教会本部の騎士団を一人で殲滅させ南街の教会へと左遷されていましたが、どこで聞きつけたのかフジワラの街へ向かい聖地奪還の拠点にしようとして返り討ちにあったようです」


「なるほどな。それでそのローラというシスターは殺されたのか?」


 枢機卿の娘が殺されたのであれば、教会にあの街のことを知られる可能性があるな。


「いえ、捕らえられた後にリョウスケと和解し、街の中で教会を作ったようです」


「教会を? そのことは王国の教会本部には?」


「知らされていないようです。なんでも真聖光教という新しい宗派を立ち上げたとか」


「真聖光教? 新しい宗派ということは女神フローディアを崇拝しているのか?」


「そのようです。普通のシスターを聖女に祭り上げ、聖光教とは別の教えをしていくとか」


「なんと無謀な……教会本部に知られればどうなるかわかっていないのか?」


 教会本部が知れば目の色を変えて潰しに来るぞ?


「今のところフジワラの街にいるハンターのみしか知らないようです」


「そうか。だがそれも時間の問題だと思うのだが……いや、そんなことよりも今はそのリョウスケとかいう男のことの方が重要だな。20代の青年ということだが、どのような男か詳しく話せ」


「はい。見た目は黒髪の魔人のハーフです。ハンターランクはゴールド(Bランク)で性格は比較的温厚なようです。しかし竜人のハーフとサキュバスのハーフ。それにダークエルフの女と恋仲にあるようで、かなりの女好きであることは確かかと。強さに関しては投げた後に手元に戻ってくるという変わった形の魔槍を主武器とし、それを使い飛竜を単独で倒していました」


「なんと! 投げても戻ってくる魔槍だと!? しかも飛竜をも倒せる威力があるとは……その魔槍もリョウスケとい男が造ったのか?」


「恐らく」


「うーむ……」


 帝国でも風の刃を発する魔剣や、投げた後にある程度進路を変える魔槍はある。だが戻ってくるような能力がある魔槍など、とうてい造ることはできない。それほどの魔槍を造れる技師が本当に存在するのか? 確か父親が凄腕の魔導技師と言っていたな。だがフジワラなどという家名など聞いたことがない。優秀な技師は帝国でも王国でも一代限りの貴族になることはあるが、これほどの魔道具を造れる技師ならば私が知らないはずがない。


 しかし密偵の話が本当であれば実際に存在している。考えられるとすれば、リョウスケという男が魔人のハーフであることか。父親が魔人の女と子を作り街にいられなくなり、どこか辺境の地で隠遁していた? そこで技師としての能力が開花したのかもしれない。だが王国に高度な魔道具は流通していない。王城でも見たことがない。


 ならばそのリョウスケが父親の研究を引き継ぎ、最近になって完成させた可能性がある。そしてあの砦を建てることを条件に王国と取引をしたのかもしれない。それならばサーシャ姫があの砦にいる理由も納得できるか。恐らく女好きのリョウスケの嫁にし完全に取り込もうとしているのだろう。だがそこまで話が進んでいるのでれば、王国がリョウスケの持つ高度な魔導技術をものにするのは時間の問題ということか。


 王国が我が国に隠れて砦を建てるための、ただの飾りの男だと思っていたのだがな。とんでもない実力者だったというわけか。あと気になるのは……


「ダークエルフが里ごと移住しているということだが、魔国とその街は関係しているのか?」


「恐らくは無関係かと。ダークエルフは最近デーモン族の領地から逃げ出したと聞いておりますので、住むところを失い流れ着いたのでは無いかと思います」


「そういえばそうだったな。しかしダークエルフが里ごとか……厄介ではあるな。他に報告すべきことはないか?」


「一つだけあります。そのリョウスケという男ですが、どうも最近になって滅びの森の奥地でダークエルフを連れて何かをしているようです」


「む? お前にしてははっきりしない物言いだな。その何かとはなんだ?」


「申し訳ございません。調べようと一定の距離まで近づくと、どういうわけかすぐに警戒していたダークエルフがやってくるので確認できませんでした。ただ、小さな爆発音が連続で森の中で響いていることから、何かをしているのは確実かと」


「小さな爆発音? そのリョウスケという男もダークエルフも土系統のギフトと精霊使いであろう? となれば魔剣か何かの実験か?」


 まさか火球を発する魔剣を造ったのではないだろうな?


「恐らくそうではないかとは思ってはいるのですが、中々近づくことができず。また、ハンターたちの誰も知らないようで、現状ではなんらかの魔道具の実験をしているのでは無いかと推測することしかできません」


「なんとか近づいて確認しろ。そしてできることならその魔剣を手に入れろ」


「はい。必ずや」


「うむ。では引き続き潜入調査を続けよ。私はフジワラの街のことを陛下に報告をする。そうだな、潜入させる人員は大幅に増やせ。恐らく近いうちに軍を派遣することになるだろう。その時の内部撹乱要因として腕利きの者を潜入させよ」


 私がそう告げると密偵は頭を下げ静かに部屋から出て行った。


「ふう……これは予想外であったな」


 まさか帝国を凌ぐほどの魔道具があの砦にあるとはな。


 リョウスケ・フジワラか。是非とも帝国に欲しいな。


 王国が彼の技術をものにする前に、我が国であの砦とリョウスケという魔導技師を手に入れる必要がある。


 これは早急に陛下に報告する必要があるな。そして軍を派遣してもらわねば。


 問題なのはあの砦が滅びの森の中にあるということか。だが森に入り1日も歩けば砦までの道は舗装されていると聞く。ならば1万は送ることはできるだろう。1万の兵と攻城兵器があれば、いくらダークエルフがいようとも陥とすことは容易だろう。リョウスケという男にしても、いくら強力な魔槍を持っていようとも所詮は一人。砦を包囲された状態で一斉に攻め込まれればどうにもできまい。


 王国を攻め滅ぼすために口実と拠点を手に入れるために調べさせたが、まさかこれほどの収穫があるとはな。陛下がお喜びになる姿が目に浮かぶ。



 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎



「さーしゃ……さま……おい……しい……です」


「でしょ? 次は四ツ矢サイダーね。口の中がパチパチするから驚かないでね?」


「ぱち……ぱち……です……か?」


「ふふふ、そうよ。最初はびっくりするけど、一度飲んだら癖になるから! さあゆっくり飲んで」


「はい……あひゃっ……」


「あはははは! 驚いたでしょ? 」


「は……はい……なん……だか……ふしぎ……です……でも……あまく……て……おい……しい」


「でしょでしょ!? じゃあ次は私の超おすすめの……ジャジャーン! 処女コーク!」


「しょ……しょじょ……です……か? その……」


「ねー! 変な名前よね。でもすごく美味しいの! 黒いけど泥水とかじゃないから安心して。これも口の中がシュワーってするからゆっくりね」



「ふふっ、サーシャったらあんなにはしゃいじゃって」


「本当に楽しそうだよな。サーシャもラティも」


 しかし失敗したな。クロースにバージンコークのバージンの意味を聞かれたから教えたんだが、いつの間にか処女コークとしてサーシャに伝わってしまった。間違いじゃない。間違いじゃ無いんだが……


 俺はなんとも言えない気持ちになりながら、真っ赤な顔をしながらサーシャからバージンコークを受け取っているラティを眺めていた。



 ラティが入院して一週間ほどが経過し、俺はラティのお見舞いのために病院へと来ていた。


 お見舞いに来るのは俺だけじゃない。この病院にはここのところ毎日サーシャとリーゼロットがお見舞いに来ている。キッカケはラティが入院した翌日に同じ王女としてサーシャが挨拶に来た時に、ラティの痩せ細った姿を見てサーシャがかなりのショックを受けたそようで、それからは毎日お見舞いに来てるみたいだ。


 それで数日前から自販機でジュースを買ってお土産にして、こうして毎日試飲会を開いてるようだ。これがなかなか楽しいらしく、ラティがサーシャが来るのを楽しみにしていると第二王妃でラティの母であるメレサさんが言っていた。獣王なんか久しぶりに娘の笑顔が見れたって目に涙を浮かべてたよ。


 こういう時に明るい性格のサーシャがいて助かる。たまにリーゼロットと二人で漫才みたいなのを始めてるらしいし。


 ただ、うちのクロースがお見舞いに来ると、リーゼロットと喧嘩ばかりして騒がしくてダークエルフの看護師さんに追い出されるらしい。クロースだけ追い出されるのはダークエルフの看護師さんもよくわかってると思う。


 シュンランとミレイアもお見舞いに来るそうだが、シュンランとは剣や戦いの話。ミレイアとは彼女が作った甘いお菓子を食べながら料理談義をしているらしい。王城にいる時とは違い、毎日誰かしらがお見舞いに来てくれるからラティも嬉しいそうだ。


 ちなみにラティの母親のメレサさんは病院に宿泊している。侍女たちも別室で宿泊し、24時間体制でラティの側で介護をしている。獣王は第二フジワラマンションで軍団長のキリルさんたちと住んでおり、毎日ラティの顔を見に行ってる。まあ病院から帰ると酒場で毎日飲んでるけど。それでも獣王だってバレない。それどころか獣人たちは獣王の息子が獣王だと思ってるフシがある。政務や式典関係は第一王子がやってるから当然だってメレサさんが呆れていた。


 獣王は王位を継いでもよくハンターとして滅びの森に出掛けていたらしく、ラティが病気になってからは王城にはほとんどいなかったらしい。その獣王の代役を務めたのが、20歳になる第一王子のようだ。第二王子も優秀らしく、二人で獣王不在の獣王国を支えているそうだ。


 王位継承争いとかないのかと聞いたら、第一王子は獅子人族で第二王子は猫人族だからないと言われた。どうも代々王位継承をするのは獅子人族と決まっているようだ。それとこれは知らなかったんだけど、獣人種は獅子人族や猫人族との間に子ができた場合、半々の確率でどちらかの種族になるらしい。そのため同じ母親から生まれた兄弟でも獅子人族の兄と猫人族の弟となるそうだ。ラティは母親が白狼人族だから母親の種族を受け継いだということか。


 そんなことを考えているとサーシャの元気な声が病室に響き渡った。


「はい。今日の試飲はこれでおしまい! 明日はそうね……私が不味いと思ったジュースを持ってくるわ」


「まずい……のです……か?」


 サーシャの言葉にラティが嫌そうな顔をする。


「ふふっ、そんな嫌な顔しないで。ちゃんと美味しいのもひとつ持ってくるから。あっ! あとパソコンを持ってくるわ! ぷよぷに……はちょっと反射神経とか体力使うから、そうね。上海というゲームをしましょう! いいわよねリョウスケ?」


「あ、うん。まあ別にいいけど」


 最近我が家ではぷよぷにだけではなく、麻雀牌を山積みにして同じ絵柄の牌を抜いていく上海というゲームも人気だ。ぷよぷにをやっていなかったシュンランも、絵柄や文字が魔国の物に雰囲気が似ているということもあって結構遊んでいる。


「ぱそ……こん……に……しゃん……はい……ですか?」


「そうよパソコンていうゲームがいっぱい入ってる魔道具。その中に上海というゲームもあるの。マウスを使えばそんなに腕の筋力は必要ないから大丈夫。だからそれで一緒に遊びましょ。楽しいわよ?」


「はい……やって……みたい……です……たの……しみ……です」


「ふふっ、簡単なゲームだからすぐ覚えられるわ。覚えたら私と勝負よ!」


「はい……まけ……ません……」


「そういうわけだからリョウスケ。1台追加ね! あ、私がいない時もメレサ様と侍女たちと練習したいだろうから2台お願い」


「はは、わかったよ。買っておく」


 俺はサーシャのお願いを快く引き受けた。


 まあ確かにマウスを使えばラティでも遊べるだろう。



 そして翌日。サーシャは俺が設定を終えた2台のノートパソコンを持ってラティの元に向かい、夕方までゲームをしていたそうだ。その際に持って行った不味いジュースは負けた方が飲むという罰ゲーム用に使われ、ラティがほとんどを飲むはめになったらしい。さすがサーシャ。勝負事になると容赦ないな。


 ラティはそれが悔しくて、母親と侍女。さらには獣王と軍団長のキリルまで巻き込んでゲームの練習をしているようだ。獣王は頭を使うゲームは苦手だと言って毎回負けているらしいが、それでも毎日ラティの対戦相手をしているらしい。娘が喜ぶ姿を見るのが嬉しいんだと一緒に飲んだ時に言っていた。


 そんな努力もあり一週間もしないうちに、サーシャとラティの勝率は五分五分にまでなったらしい。サーシャはこのままだと負け越すかもしれないと言って、今はシュンランとミレイアとリーゼロットを相手にポーカーとブラックジャックゲームの練習をしている。クロースはルールを覚えるのが面倒になって逃げた。


 このゲームもパソコンに入っているゲームだ。サーシャはこれで私の全勝間違いなしとか言ってたど、皆がラティを元気付けるためにサーシャが色んな遊びを用意していることを知ってる。でもそれをサーシャに言っても認めないだろう。好奇心旺盛で明るくて優しいけど、実はものすごく恥ずかしがりの王女。それがサーシャだと知ってるから。



 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎



「ようこそフジワラの街へ。この街の責任者の藤原涼介です。彼女たちは副責任者のシュンランとミレイアです」


 ダークエルフ街区の広場に集まったダークエルフたちを前にそう言って挨拶をすると、両隣に立っていたシュンランとミレイアが軽く頭を下げた。


 目の前には3日前から少しずつ集まったダークエルフが600人ほど立っている。


 彼らは魔国から西街を経由して100人ごとに分かれて滅びの森を移動してきていた。そんな彼らが全員集まったので広場で挨拶をしているところだ。


「勇者様。ご丁寧な挨拶痛み入りますじゃ。デーモン族の圧政から解放していただいた上に我らを受け入れてくださったばかりか、これほどの立派な家と食料。それに衣服まで用意してくださった御恩。我ら2つの里は勇者様のお役に立つことで返しするつもりですじゃ」


 2つの里の代表の長老が俺たちの挨拶に対してそう答えた。


「恩を感じる必要はありません。宿代は皆さんの働きで払っていただきますから。宿の管理に酒造に燻製作り。そして道作りに警備など色々とやってもらいます。そして何よりみなさんに求めるのはこの街を防衛する戦力です。ハルラス長老の元で一つとなり、帝国や教会などこの街を狙うであろう勢力から守ってもらえることを期待しています」


「もちろんですじゃ。700年前に勇者様の慈悲を拒否し、敵対した我らへと再び手を差し伸べてくださった勇者様のため。我ら一同ハルラスの元で最後の一人になるまで戦いこの地をお守りすることを誓いますじゃ」


 長老がそう言うと子供以外全てのダークエルフがその場で膝をつき頭を下げた。


「あーいやそこまでは……と、とりあえず挨拶はこの辺にして歓迎の宴会をしましょう! ハルラス長老にクロース! あとは頼んだ!」


 俺はあまりに重い雰囲気に耐えられなくなり、スーリオンと一緒に控えていたハルラス長老とクロースに丸投げした。


「わかった! 私は勇者リョウスケの婚約者のクロースだ! 同胞の皆を歓迎する! さあ料理と酒を用意してある! 好きなだけ食べて飲んでくれ!」


「皆の者。遠路はるばるよく来た。ここは非常に住みやすい土地だ。まずは旅の疲れを癒してくれ」


 クロースとハルラス長老そう声をかけると跪いていた者たちは立ち上がり、料理と酒が用意されている場所へと向かって行った。皆が大量に用意された料理と、見たこともない酒を前に笑みを浮かべている。


 そして宴会が始まり、俺はシュンランとミレイアを連れて新たに合流した二つの里の長老とその家族へ挨拶をして回った。


 この二つの里にはあらかじめ、ハルラス長老が治めるスーリオンの里に吸収されることは了承してもらっている。というよりも、もともとダークエルフは一つの里だった。しかしその長老だった人の家の血は絶えており、誰がトップになっても問題がないという下地があった。それならと俺はハルラス長老をトップにして、他の里の長老はその補佐という形を取ることにしたわけだ。


「しかしいきなりダークエルフの数が3倍になったな」


「フフフ、宿の利用客より多くなってしまったな」


「言われてみればそうですね。敷地も同じくらいの広さになりましたし」


 確かにシュンランとミレイアの言う通りだな。まあダークエルフは兵士であり生産職でもあるから客より多くても問題ないんだけど。


「でもこれで人手が増えたから、街を拡張してマンションも増やすつもりだ。なにより街の防衛戦力が増えたのは嬉しい」


 ハンターには帝国のスパイが混じってるしな。この間なんて機関銃の訓練の帰り道に襲撃されたし。まあ以前から訓練している場所に入り込もうとしていた者がいるのはわかっていたし、襲撃された時も魔物探知機で点滅しまくった点が20ほど向かってくるのがわかってたから、そのまま機関銃で迎え撃ったら呆気なく全滅したけど。どれも見覚えのある客で帝国のハンターだった。生き残った者を捕らえようとしたが、その場で自害したことからよほど訓練されらスパイだったんだと思う。


 そういうわけでハンターを防衛戦力として計算するのは危険だ。どの国の所属でもないダークエルフが一番信用できる。


「確かに防衛戦力は充実したな。しかしマンションを増やすということは第三フジワラマンションを建てるのか?」


「そうだな。建てようと思う」


 5階建てのマンションに比べれば、別館の方が安く建てられるし最終的には部屋数も稼げる。けどバージョンアップを狙うなら5階建てマンションを増やした方がいい気がする。


 やはり部屋数や利用者数と同じくらい、お客様満足度がバージョンアップに影響していると思うからだ。それなら最新の設備のあるマンションを建てた方が満足度は上がるはずだ。


 もう少し貯めれば手持ちの資金だけであと2棟はいけるしな。Cランク魔物がいる狩場も最近は人が多くなってきたし、別館より高くても借りてくれるハンターはいるはずだ。


 今度は一階に店舗を入れてもいいかもな。住人は買い物が便利になるから満足度が上がるはずだ。ダークエルフたちの住居もさすがにマンションは建てれないが、内装をバージョンアップさせていこう。


「そうか。また私たちの街が大きくなるな」


「ふふっ、最初は地下神殿だけだったのにあっという間に大きくなっていきますね」


「そうだな。いつの間にか大きくなっちゃったな」


 最初は二人の治療費を稼ぐために始めた商売だったけど、いつの間にかここまで大きくなってしまった。


「おーいリョウスケ! シュンランにミレイアも! こっちに来て一緒に飲むのだ!」


 三人で話していると遠くからクロースの呼ぶ声がした。


 どうやら新しく来た里の女性たちと一緒に飲んでいるようだ。


「フフフ、いつも元気だなクロースは」


「はい。本当にクロースさんは元気いっぱいです」


「元気すぎるんだよなクロースは。まあ俺たちの街の新たな住人と親交を深めに行くとするか」


 そう言って俺はシュンランとミレイアを連れてクロースの元へと向かうのだった。


 その後新しく合流した二つの里の族長の孫娘を紹介され、俺の嫁にと言い出したところでクロースがダークエルフ枠はもう埋まってるとか大騒ぎしてその話はうやむやになった。


 シュンランに残念だったなとからかわれたが、俺は初めてクロースに感謝していた。確かにクロースに負けず劣らずのナイスバディの美女たちだったが、俺にはシュンランとミレイアとクロースがいれば十分だ。


 その日の夜は不安になったのかクロースが『私で満足できてるだろ?』と口にしながら、どこで覚えてきたのかものすごい腰の動きで俺の身体を何度も求めてきた。そんなクロースを可愛いと思いつつも、俺はエルフの秘薬をこっそり飲むのだった。

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