第9話 ノアノッタ侯爵の野望

 

 ——アルメラ王国 王都 グレード・ノアノッタ侯爵 屋敷 ——



「まったく! 王ならず王妃様までなんという弱腰! 」


「同感ですな。何処の馬の骨とも知れぬ者を庇護するなど信じられませぬ。しかも我が国の領地に無断で砦を建てた者をです」


「西の国境の件ではあれほど強気になっていたというのに、たかが宿屋の店主一人にこれほど弱気な対応をするとは……ノアノッタ様はどうお考えか? 」


「皆の意見に同感だ。王国の領地に無断で建造物を建て、しかもそこで宿を経営している者の存在を認めるなどあってはならん」


 私は怒りを抑えつつ寄子であるボーエン伯爵ら3人にそう答えた。


 甘い甘いとは思っていたが、王ならずまさか王妃様までここまで甘いとは。



 先日上位貴族が謁見の間に集められ、王より滅びの森の中に突如現れた砦の説明があった。


 それによると砦と思っていた建物は、ハンター専用の宿屋を囲むただの壁であり脅威には及ばないこと。そして滅びの森から魔物を一掃するために、ハンターの後方支援をするというその宿屋の主の考えに共感し王国はこれを保護すること。よって一切手を出すことは許さぬと命令を受け、帝国に知られぬよう改めて箝口令かんこうれいが敷かれた。


 当然の如く謁見の間は紛糾した。甘いと。高い壁で囲まれた宿屋など砦とそう変わらぬではないかと。そんな物を無断で建てたのだから接収すべきだと。帝国がいつまでも気づかないままなはずがないと。


 当然だ。宿屋がある土地は帝国も領土を主張している土地だ。帝国が軍を派遣したら奪われてしまう。ならば我々が先に接収し、軍を駐留させ実効支配をすべきだ。問題は水と飛竜だが、我々もただ指を加えて使者の戻りを待っていたわけではない。配下の者が南街で以前から目をつけていた王国のハンターに濡れ衣を着せ投獄し、拷問の末に情報を聞き出している。


 それによればあの砦内の宿には、貴族が住むような部屋に見たこともない最新の魔道具があるらしい。それにより水の心配はないのだとか。正直信じられない内容だったが、複数のハンターが宿屋の主がかなり優秀な土のギフト持ちであり魔導技師でもあると言うので納得することにした。


 さらには宿屋は大きな岩山の中にもあり、そこには無理をすれば2千人ほど入れるらしい。敷地全体であれば万の兵が滞在することも可能だとか。


 それが本当であれば、南街に滞在させている軍以上の兵を配置できる。そうなれば帝国が手を出そうとしても難なく撃退できるだろう。そして規模を広げ南街以上の街にすることも可能だ。そのような魅力的な建物を我が国が接収しないはずはないと思っていた。


 しかし現実は手を出すなとの命令が下った。あの交戦的な王妃だけではなく、エルフの森を取り戻すために王国に味方しているエルフ族の族長である宰相までもが王の味方となり、武力にて占領すべしという者たちを無理やり押さえた。


 その後、宰相と王へ直訴をしたが聞き遂げられず、軍を派遣するつもりでいた私は寄子の伯爵たちを屋敷へと集めた。



「ではノアノッタ様。どうなされますか? 」


「王命である以上は目立った動きはできぬ。砦にはハンターギルドもあるらしいからな。表立って動けばギルドが邪魔してこよう」


 そう、ハンターの話ではギルドまであるらしい。信じられぬがそれならば色々と辻褄が合う。


「なんとギルドが!? しかし我が国にあるギルド本店からはあの砦にギルドの支店を置いたなどとの報告はありませんでしたぞ? 」


「恐らくだが、あの宿屋はギルドが運営しているのではないかと思う。それも魔国のだ。本店には竜王が圧力を掛けているのかもしれん。竜王が砦に訪問したことからそうではないかと思ってはいたが、宿屋の主が魔人と人族のハーフであること。その側近も竜人とサキュバスのハーフであり、ダークエルフが働いていることからほぼ確実であろう。王は魔国と何かしらの密約をしたのではないかと考えている」


 宿屋の店主は魔人の血が流れている者だった。その側近の女性たちも魔族の血が流れていることから、ほぼ間違いなく魔国のギルドが絡んでいるだろう。純粋な魔族を代表にしなかったのは、王国や帝国へ魔国自体は直接関与していないと説明するための保険なのかも知れぬ。


 魔国が絡んでいるのであるならば、王ならず王妃までも弱腰なことの説明が付く。やはり竜王と何かしらの密約をしたのであろう。


「魔国がギルドを隠れ蓑に我が国の領地に砦を建てたということですか……」


「魔国にもギルドにも舐められたものですな……」


「王も使者を送ったのであれば知らぬ訳ではありますまい。それでも黙認されるとは、なんという危機感の無さよ。嘆かわしい」


「同感だ。恐らくだが竜王もさすがに死が近づいておるのやも知れぬな。それにより下からの突き上げを抑えることができなくなったか……所詮は魔族よな」


 私の言葉に同席していた者たちは、“その可能性はありますな”と唸り声を上げた。


 長い間世界の仲介者だのと君臨していた竜王だが、所詮は魔族の長。未だ人魔戦争で負けた事を受け入れられぬデーモン族や吸血鬼族どもの突き上げに魔国が割れる事を避け、帝国と王国の両方を抑えることができる土地に砦を建てたのであろう。


 姑息なことに発覚した際に言い逃れができるようギルドを隠れ蓑にし、軍を配置する時間を稼いでいるのであろう。あんな場所に万の魔族を配置でもされれば、南街が取られるのは時間の問題だ。それを防ぐために砦に進軍しても帝国が横槍を入れるであろうし、遠征中に人族に恨みを持っている隣国の獣王国が侵略して来ないとも限らぬ。そうして多大な犠牲を払い砦を手に入れたとしても、次は帝国との本格的な戦争となろう。


 竜王が動いた以上、もう停戦の仲介者はいない。あの砦のおかげで世界は再び争うことになるだろうな。


 であるならば先手必勝。我が国が帝国よりも先にあの砦を先に手に入れ、防備を固めるべきであろう。


 なによりあそこに他国の支配する街ができれば南街の価値など半減する。そのうえ戦争ともなれば、私が南街に出資している商会や飲食店も壊滅的な打撃を受けるであろう。それは防がねばならん。


 恐らく他の貴族たちも帝国に知られる前に動こうとしているはず。先を越されればあの砦も周辺の領地も敵対派閥の者たちに奪われる。


 急がねばならん。ほかの貴族たちの動きもそうだが、13月になれば魔物が食料不足で凶暴になり、思わぬ邪魔が入りかねない。12月のうちに全てを終わらせる必要がある。


 そうと決まれば大義を掲げ寄子たちの協力を得るとするか。


「このままではあの砦を巡り世界は再び乱れよう。それを防ぐためには帝国より先にあの砦を手に入れ、防備を固めねばならん。王の命に背くことにはなるが、王が間違った道に進もうとしているのを正すのも臣下の務め。アルメラ王国の未来。いや、世界の平和のため。私は汚名を被ろうと思う」


「ノアノッタ侯爵様の国を想う気持ち。このボーデン、感服いたしました。どこまでもお供いたしましょう」


「私もです! アルメラ王国の未来のためにこの命を捧げましょう! 」


「私もですぞ! 」


「うむ。賛同してくれたことに感謝する。皆の国を想う気持ちには頭が下がる思いだ」


 砦を手に入れた後は、報いてやるとしよう。


「ですがノアノッタ様。軍を動かせば目立ちます。しかし他の貴族……いや帝国が動く前に砦を手に入れねばなりません。どうやって兵を送り込みましょう? 」


「それなのだが西の国境の紛争に出兵させていた我が息子が率いる騎士団と、少数の兵を南街に向かわせようと思う。さらに時をずらしてここにいる各家からも送り込み、砦の者たちが敷設した道で合流すればそれなりの数にはなろう」


 砦の存在を知ってから、西の国境に向かわせていた領軍は待機させてある。その者たちを騎士団の訓練及び、森の魔物の間引きをするということで向かわせれば怪しまれることはなかろう。


 砦といっても塀が高いだけの建物と聞いた。ギフト持ちの多い騎士団が複数あれば陥落させることは難しくなかろう。問題は砦に滞在中のハンターと従業員であるダークエルフだが、万が一ハンターたちが抵抗するなら王国のハンターたちに他国のハンターを押さえるように言えば内部で混乱するだろう。そもそも利用者のほとんどがDランクという話だ。そんな者たちが束になって掛かって来ようとも我が騎士団が苦戦するとも思えぬしな。


 ダークエルフに関しては、抵抗すれば魔国との戦争となると忠告すれば手を出せまい。あくまでもギルドが運営していることになっているのだろうからな。


「おお! それは良いお考えかと。我が息子も今回の帝国との紛争には参加しておったところです。騎士団と兵を急ぎ南街に向かわせましょう」


「我が家の跡取りと騎士団も期間を置いて向かわせましょう。寄子である子爵と男爵にも詳細は伏せ騎士を派遣させましょう」


「補給を担当していた我が家の騎士団は恐らく一番早く南街に着くでしょう。資材と食料を用意させ、先に森にて野営できる場所を用意させましょう」


「うむ。これも王国のためだ。慎重に、かつ迅速に動いてくれ。我が愛すべき祖国。アルメラ王国のために」


「「「ハッ! 我が祖国のために」」」


 これでいい。先に森に入ることが肝心だ。後から森に入ろうとしても王家に怪しまれて入り難くなる。普段、滅びの森の間引きをしている貴族など少ないのだからな。


 ククク、魔国のギルドだろうが我が国の領地に勝手に砦を建てた者が悪いのだ。いや、よくやったと褒めるべきか。我がノアノッタ侯爵家が、勇者が国を去って以来初めて王国の領土を奪還した家となるのだからな。


 間違いなく民は喜び讃えよう。その姿を見れば王もあの苛烈な王妃も処罰などできまい。


 それどころか領土奪還の功労者だ。サーシャ姫を息子の嫁にと求めれば首を縦に振る可能性は高い。サーシャ姫も嫌とは言うまい。姫はエルフの森を取り戻すことに躍起になっているのだからな。それを一歩前に進めた我が家に嫁に来ることを拒むとは思えぬ。


 そうなれば我が侯爵家も王家の血が入ることになる。手に入れた砦とその周辺の開発に成功すれば、公爵になるのも可能であろう。


 魔国には感謝せねばならぬな。帝国との紛争が不発に終わった今。我が一族が飛躍できる機会を与えてくれたのだから。



 ☆☆☆☆☆☆



「ミレイアは洞窟から出てくるオーガを叩いてくれ! クロースはその補助だ! 」


「はいっ! 『雷矢』! 」


「わかった! ノーム! 土の槍となって敵を撃て! 」


 俺の指示にミレイアとクロースは、巣である洞窟から出てくるオーガへと次々と攻撃を放った。俺も彼女たちが取りこぼしたオーガへとペングニルを投げてフォローしている。


 周囲にいたオーガはシュンランが神器である『青龍戟』を振るい、まるでバターを切るかのように次々と切って捨てている。


「ん? 新手か」


 洞窟から出てくるオーガにペングニルを放っていると、魔物探知機に後方からこちらに向かってくる5体のオーガと思わしき反応が表示された。


「リーゼロット! 後方から来るオーガを頼む! サーシャは俺の後ろから離れるな! 」


「任せてちょうだい! シルフお願い! 『シルフの鉄槌』! 」


 後方からシュンランの補助をしていたリーゼロットに指示をすると、彼女は後ろを向きオーガへと精霊魔法を放った。


 少しして『ウガァ! 』とオーガが押しつぶされる音が聞こえると彼女は続け様に精霊魔法を放ち、潰れて動けないオーガの喉元を風の刃で次々と切り裂いていった。


 さすがリーゼロットだと思いつつその光景を見ていると、洞窟から一際大きな咆哮が聞こえ俺は視線を洞窟へと戻した。そこにはオーガの死体を盾にしながら出てくる通常の個体より一回り大きなオーガが現れた。


「オーガキングだ! シュンラン、ミレイア! 二人でいけるか!? 」


「ああ! 今の私たちなら勝てる! 」


「はいっ! 私とシュンランさんで仕留めます! 」


 俺の問いかけにシュンランはオーガキングの元へとものすごい速度で走り出し、ミレイアは頭上に矢ではなく太い雷の槍を3本出現させていた。


 彼女たちがオーガキングと戦うのはこれで3度目だ。一度目は手も足も出ず完敗し両足を失い、二度目は俺の補助を受けて討伐した。あれから二人はさらにレベルを上げ、シュンランは神器を手に入れミレイアは雷のギフトの技術を磨いた。もう余裕で勝てるはずだ。


《グガアアアア! 》


 シュンランが近づくとオーガキングは盾にしていたオーガの死体を彼女に投げつけた。しかしシュンランはサイドステップでそれを軽々と避け間合いを詰める。そのタイミングで盾を失ったオーガへミレイアの3本の雷槍が襲いかかった。


《ガアアァァ! 》


 オーガは頭と胸に向かってきた2本の雷槍を避けたが、1本が右足へと突き刺さった。そして雷の副次効果によりオーガの身体が硬直した。


「ハアッ! 」


 そこに神速とも呼べるべき速度でシュンランの青龍戟が上段から襲いかかり、オーガの首を刈り取った。


「お見事! 」


 俺は呆気なくBランクのオーガキングを狩った二人を大きな声で称えた。


「やった……私たちだけでオーガを」


「はい。やりました……」


 二人は地面に落ちたオーガキングの首に視線を向けながら身を震わせていた。


 あの日、手も足も出ず自分たちを地獄に落とした相手をこれほど簡単に狩れるようになったんだ。色々思うところもあるんだろう。



 12月も半ばに入った頃。


 俺はシュンランとミレイアとクロース。そしてサーシャとリーゼロットを連れて森へと狩りに来ていた。


 最近は俺たちが狩りに行くというと、サーシャとリーゼロットたちがついて来たがるようになった。以前みたいに夜に行くわけじゃなくなったからな。彼女たちもついて行きたいと言いやすくなったんだろう。


 王女を連れて森になんて行けるかってずっと断っていたんだけど、こっそりついてきた上にオーガとかに襲われていたから仕方なく同行を許した。ほんとわがまま姫で困る。


 二人ともシュンランが神器である青龍戟を使っていることに驚いていたな。国宝をよく貸してくれたわね。それもリョウスケが使わないのにって。


 シュンランのレベルアップに反応しないかなとか色々実験を兼ねているんだけど、そんなことは言えずに俺が使いこなせないからと適当に言って誤魔化した。納得はしていなかったけど。



「それにしてもすごい動きね。サーシャの出番がなかったわね」


 後方のオーガを片付けたリーゼロットが寒いわねとボソリと口にしたあと俺の腕に自分の腕を絡め、シュンランへと視線を向け感心した表情でそう言った。すると彼女の隣にいたサーシャも俺に身を寄せ、頷きながら口を開いた。


「ほんとよ。いくら竜人族の血が入ってるからってあの動きは異常だわ。昔竜人族の精鋭部隊の戦いを見たことあるけど、シュンランほど速い竜人はいなかったと思う。神器の威力よりもそっちの方が驚きよ。それにミレイアのギフトもそう。私のギフト無しであれだけ強力なギフトを連続して発動してよく精神力が尽きないわね。ここに来るまでに結構な数の魔物と戦って疲労しているはずなのに……」


「まあハーフだからな。飛べなかったりブレスを吐けない分、成長しやすい部分が竜人やサキュバスとは違うんだろう」


 レベルアップしたなど言うことなどできないから、ハーフだから速度や精神力が高いんじゃないかといって誤魔化した。


 サーシャのギフトを掛けてもらえば良かったかな。でもオーガキングの巣を見つけちゃったからな。シュンランたちの力だけで勝たせてやりたかったから断ったんだよな。


 そうそう、そのサーシャのギフトだが、『王国の守護者』というアルメラ王家のみに伝わる特殊なギフトらしい。どんな能力かと言うと、半径10メートルにいる味方の身体能力と精神力を1.2倍にする物らしいんだ。これは現在アルメラ王とサーシャ。そして弟の次期王である王子が受け継いでいるらしい。


 なんでも勇者の伴侶であった王国の戦妃もこのギフト持ちで、万に及ぶ軍の身体能力と精神力を一度の発動で3倍にしただけではなく、精神力を全回復させることができたらしい。


 うん、まあレベルアップによってギフトが強化されたり派生したんだろうなきっと。


 しかし身体能力が3倍になる上に精神力も全回復とか……欲しい。でもそこまでの能力にするにはレベルアップが必須だ。そのためには王女であるサーシャと……


 まあサーシャとそんな関係になるのなんて無理だな。最近のサーシャの行動から王妃はくっつけたがっているように思えるけど、それこそ罠だろう。


 『王国の守護者』は魅力的だけど、諦めるしかないな。



「う〜寒っ! リョウスケ。そっちの魔石の回収を……ん? なにを残念そうな顔をしているのだ? 」


「い、いやなんでもない」


 シュンランたちと魔石の回収をしていたクロースに声を掛けられた俺は、若干声を上ずらせながらそう答えた。


「そうか……って、あーーっ! そこの泥棒エルフ! 私のリョウスケの腕に絡みついて無い胸を押し付けるな! 痛がってるだろ! 」


「なんですって! ちゃんとリョウを喜ばせるだけの膨らみはあるわよ! 貴女と違って本物の胸がね」


 また始まった。こうなるから連れてくるのが嫌だったんだ。


「私の胸は本物だ! まな板だからって僻むな! いいから離れろ! 」


「嫌よ。リョウだってずっとこうしていたいでしょ? 」


「あ、いや……」


 俺はリーゼロットの手を掴まれ、むき出しの太ももに誘導されたことで言い淀んでしまった。


 寒いと言ってるのになんで太ももはむき出しなんだよ。クロースも対抗してショートパンツ姿にコートだし。でも冷たくて柔らかいな。この上にはリーゼロットの秘密の場所が……


「リョスケ! そんなまな板女の太ももより私の方がいいぞ! 今夜も風呂場で私の胸で挟んでやるからな」


 あっ! このバカ女! 


「なっ!? なんですって! 」


「ク、クロース。リョウスケと一緒にお風呂に入ってるの!? 」


 クロースの暴露にリーゼロットとサーシャが目を見開いて驚いている。


 あれほど言うなと言ったのに!


「ふふふ、一緒にお風呂に入っているだけじゃないぞ。一昨日は私の胸と口でリョウスケを絶ちょ——」


「だあぁぁぁ! クロース! あっちのオーガの魔石の回収を一緒にしよう! リーゼロットとサーシャも後方のオーガの魔石を回収してくれ! 俺は側面のを回収する! 」


 俺はクロースの口を手で塞ぎ、彼女を引きずりながらリーゼロットたちに指示をしてその場を離れた。


 くっ……一昨日つい我慢できずに風呂場でクロースの乳と口で奉仕してもらってしまった。こうなることは分かっていたのに俺の馬鹿! でも我慢できなかったんだ。毎回見た目だけはいい女のクロースの胸で背中を洗われていれば、そりゃ我慢も限界になる。実際白い乳のミレイアと、褐色の乳のクロースのダブルパイズリはすごく気持ちよかった……


 ハァ……こうやって俺は身を崩していくんだろうな。


 その後、サーシャとリーゼロットに形だけの婚約じゃなかったのかと根掘り葉掘り聞かれ、背中を流してもらっているだけだと押し切った。途中でクロースがやけに勝ち誇った顔をしていたからチョップして黙らせた。


 もうクロースと一緒に風呂には入らないぞ。風呂だからって流されるままになっては駄目だ。強い意志で拒絶するんだ。



 しかし翌日。俺は全裸で入ってきたクロースを追い返すことができず、再びクロースと一緒に風呂に入ることになるのだった。

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