第10話 病院建設

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 フジワラマンション敷地内配置図。


https://kakuyomu.jp/users/shiba-no-sakura/news/16816700425998497468


 ※ 近況ノートに飛びます。そこに添付してあります。


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「よし、こんなもんかな。まあ病院というよりは小さめの別棟みたいなもんだけど」


 俺はヘヤツクの画面を閉じながら、目の前に立ち並ぶ6つの部屋を見渡しそう口ずさんだ。


「すべての部屋の窓に陽が当たるのだ。別棟より快適に過ごせると思うぞ」


「そうです。外のお庭も広いですし、森に咲くお花もたくさん植えました。スーリオンさんたちも過ごしやすいと思います」


「なら良かった。まあスーリオン以外は狩りに行くだろうし、スーリオンとクロースのために作ったようなもんだけどな」


 マグルたちのことだ、少しでも俺たちに負担をかけないようにと狩りに行くのは目に見えている。日本人と感覚が近いからな。きっと魔物の肉や魔石やら何やらを持ってくるに違いない。


「フフフ、そうだな。しかし今後も涼介が治したいと思える魔族が現れるかもしれない。その時にここは使うだろうからな。病人が過ごしやすい造りにしておいて損はないだろう」


「ふふふ、きっとこれからもたくさん涼介さんは治療をすると思います」


「そうかな? いやまあ……そうかもな」


 笑みを浮かべながら確信したように言うションランとミレイアに、俺は否定しようとした。が、途中で自信がなくなり頭をかいてごまかした。


 そんな俺を二人は声を出して笑うのだった。



 マグルたちがスーリオンを呼びに帰った日から三日ほど経った夜。


 俺はシュンランとミレイアと共に、マンションの敷地の外に病院を建設していた。


 なぜ敷地の外に建てるのかというと、ここに入院予定のスーリオンたちを他のハンターたちの目に触れさせないためだ。


 彼らはカルラたち人族と違い、教会から魔族として扱われているうえに魔国でも地位が低いので教会で治療を受けることができない。そんな彼らダークエルフの四肢の欠損が治れば目立つ。だから人知れず治すために隔離した場所に病院を作った。


 四肢の欠損が治れば、彼らはBランクの狩場に戻れるようになる。そうなればもうここへは来なくなるだろう。つまりうちを利用している入居者が、彼らの四肢が治ったことを知ることは無いということだ。


 ただ、西街で同胞や知り合いなどにスーリオンが会った時は、そこはうまく誤魔化してもらうつもりだ。流浪の治癒術師がいたとかいないとかな。教会も全ての治癒のギフト持ちを押さえているわけじゃ無いみたいだし、全否定はされないだろう。多分。


 まあここで治ったということだけ知られなければいい。


 そうそう、病院の場所だが、神殿の入口の西側にあるオーナー用倉庫の隣の外壁に穴を開けてその外に建てた。もちろん周りは新たに作った外壁で囲んである。


 病院の見た目は小さめの倉庫の建物だけど、敷地自体は学校のグラウンドほどはある。これは入院している人たちに閉塞感を感じさせないためだ。


 同じ理由で倉庫の中に造った各部屋も窓際に配置し、どの部屋にも陽が入るようにしてある。


 部屋は全部で6部屋で、広めの1Rが5つと2LDKが1つだ。建物の中央にはソファーセットを置き、入院している人たちが集まってくつろげるようにしてある。建物の外にもテーブルと椅子が置いてあり、外の空気に触れながら庭を眺めることができる。


 食事は動ける人たちで自炊してもらう。材料はうちのオーナー用倉庫にハンターたちからのおすそ分けが山ほどあるので、そこから自由に持っていって貰う予定だ。カルラたちに分けても全然減らないんだよ。


 賃料据え置きで部屋を順次2000バージョンにアップグレードしているからな。風呂も大きくなり、有線でいろいろな音楽も聞けて皆喜んでくれている。その結果お礼の品が毎日山のように届くんだ。


 ちなみに1Kの部屋を1990バージョンから、2000バージョンにアップグレードする際に掛かる差額はDランク魔石60個だ。まあ60万だな。


 旧バージョンの新築の部屋が家具込みでEランク魔石が110個。Dランク魔石換算で55個で、最新の1Kの部屋が一から作ると家具込でDランク魔石90個が必要なので差額はこんなもんだろう。中古の部屋だしな。


 賃料を上げないのはお客様満足度稼ぎのためだ。それが本当にバージョンアップに関係があるかはわからない。が、部屋をいくら作ってもバージョンアップしなかったのに、中途半端な次期に突然バージョンアップしたことから、入居者の満足度が関係しているとしか考えられないんだよな。


 まあ俺も入居者が喜んでくれるのは嬉しいし、もう稼ぐ理由もなくなったから全部屋をバージョンアップさせていくつもりだ。こんな娯楽のない森の中じゃ、これくらいしか満足度を上げる方法が無いしな。



「うふふ、あとはスーリオンさんたちが来るのを待つだけですね」


「ああ、あと十日くらいかな? それまで……ん? 」


 病院の外に出てミレイアと話していると、背後に人の気配がしたので振り向いた。すると外壁の上でリーゼロットが驚いた表情でこちらを見ていた。


 俺と目があったリーゼロットは驚いた顔のままふわりと浮かび、俺たちの前に降り立った。


「驚いた。一昨日から新しい壁を造っているから何をしていたのかと思ったら、いつの間にこんな建物を建てたの? 今日の昼には無かったわよね? 」


「今建てたばかりだからな。それよりなぜここに? 」


「最近夜にここでなにかしてるみたいだから、今日もしてると思って来たのよ。それにしても今建てたって……中に部屋もあるわよね? いくらなんでもこんなに直ぐにできるものじゃないでしょうに……一体どうやって作ったのよ」


「企業秘密だ」


 俺は肩をすくめながらそう答えた。


「いいじゃない、教えてよ。誰にも言わないから。ね? 」


「リーゼロット。君はエルフにしては好奇心旺盛で気になったことは色々知りたいようだが、踏み入れてはいけない領域がある事を理解しろ。人には知られたくない事もあるのだ」


 いつものように俺に擦り寄り胸を押し付けて聞こうとしてきたリーゼロットに対し、シュンランが真剣な表情でそう注意をした。


「悪いなリーゼロット。どうやって建物や部屋を作っているかは教えられない。精霊に誓ったことで君が俺たちに敵対しないということは信用しているが、まだ君を完全には信頼していない。そんな君にマンションを作る方法を教えることはできない」


 最近はリーゼロットとは俺が勇者なんじゃないかとか、持っている武器の事を聞いてくることはなくなった。しつこくしたら嫌われると思ったんだろう。


 それでも毎日外壁の上や受付など、俺がいるところにやって来てはほぼ一日中一緒に世間話をしている。忙しい時なんかは、男だらけのパーティの新規客に設備の使い方を教えに行ってくれたりなど手伝ってくれている。


 彼女は明るくてさっぱりしていて、下ネタもいけることから正直話していて楽しい。そんな彼女を個人的には信頼しているが、精霊に誓ったのはリーゼロットだけで他のエルフは誓ってない。


 なによりも彼女は王宮に仕える身で、魔力こそ高いがまだ若くエルフの中では発言権が強いわけではないと聞いた。


 そういった立場の彼女を完全に信頼するのは難しい。いや、むしろ俺のことを知らない方が彼女のためだとさえ思っている。もしも俺が王国と敵対した際に、エルフの長老が王国に付くと言ったら板挟みになるだろうからな。


「そう……わかったわ。シュンランもリョウもごめんなさい。もう聞かないわ」


「悪く思わないでくれ。それと明日から敷地内での飛行を禁止させてくれ。見られたくない物もあるんだ」


 俺は悲しそうな顔でうつむくリーゼロットに、スーリオンたちの事を知られたくないので飛行をしないように頼んだ。


「わかったわ。リョウがそう言うのならもう飛ばない……それじゃあ帰るわね。邪魔してごめんなさい」


 リーゼロットは肩を落としながらそう言い、その場で宙に浮いて外壁を飛び越えていった。


 そんな寂しさがにじみ出ている彼女の後ろ姿を俺たちは無言で見送った。


「少し言い過ぎたかな? 」


 あんな悲しそうな表情のリーゼロットは初めて見た。いつも笑顔だったもんな……


「涼介は女に甘いからな。悪い子じゃないのだが押しの強いリーゼロットには、あれくらいが丁度いいのだ。気にすることはない」


「そうです。涼介さんは優しすぎるので、たまには厳しく言うことも必要です」


「う〜ん……まあそうかもな」


 自覚はある。特に美人にはなかなか厳しくできないんだよな。


 あ〜、もうリーゼロットは俺を避けるかも。あのパンチラも今日の昼が見納めだったか。


「しかし……フフッ、リーゼロットは涼介に突き放されたことが、よほどショックだったようだ。勇者であるかどうかを知るために近づいていると思ったが、それだけではないかもしれないな」


「あんなに毎日一緒にいましたし、潔癖で有名なエルフが涼介さんに身体を寄せてベッタリでしたからね。可能性はあると思います」


「え? どういうことだ? 」


 勇者であることを確認する以外の理由がある? 


 というかエルフって潔癖症だったのか? 


 そのエルフが俺にベッタリってことは……もしかしてもしかするのか? あのリーゼロットが?


「フフッ、まあ相手は寿命に比例して気の長いエルフだ。どうだろうな。それより病院は作り終えたのだ。そろそろ部屋に戻って風呂に入りたいぞ」


「今日は暑かったですからね。私も汗でベタベタしていて気持ち悪いので早くお風呂に入りたいです」


「確かにだいぶ暑くなったし、森の中なだけあって湿気がすごいよな。これだけ暑くなるとアイスとか食べたくなるな」


 もう7月だもんな。風呂上がりにバーゲンダッツとか食べたいなぁ。名前の割に高いけど美味いんだよなあのアイス。


「あいす? 何だそれは? 」


「聞いたことない食べ物ですね」


「そういえば話したことなかったな。よし、帰ったらアイスとはちょっと違うけど、冷たくて美味しい物を作ってあげるよ」


 かき氷ならすぐ作れるしな。シロップは森の果物に砂糖を溶かせばいいし。


「冷たい食べ物か。フフフ、それは楽しみだな」


「甘いものだったら嬉しいです」


「あはは、すごく甘いものだよ。じゃあ帰ろうか」


 そう言って俺は嬉しそうな顔をしている二人の手を繋ぎ、部屋へと戻るのだった。


 その後三人で一緒にお風呂に入り汗を流したんだけど、いつものようにムラムラして二人とまた汗をかいてしまった。


 そうしてスッキリしたあと風呂上がりに冷凍庫から氷を取り出し、新品の手袋をしながら生姜などをすりおろす際に使うおろし器を用意した。そしてワイングラスの上で氷をそれですりおろした。そして最後にミレイアに作ってもらった即席のシロップをグラスの上から掛けた。


 こうして出来上がったかき氷は二人に好評で、美味しい美味しいといって食べてくれた。当然お約束の頭がキーンとなっている姿を食いしん坊のミレイアが見せてくれたよ。目をキツくつぶって痛みに耐える彼女も可愛かった。


 そんなこんなで食べ終わった頃。ミレイアがサーシャとリーゼロットにおすそ分けをしてあげたいというので、もう二つ作ってあげて持っていってもらった。


 きっとリーゼロットが落ち込んでいると思ったんだろう。優しい子だからなミレイアは。


 それから数十分後に戻ってきたミレイアが、ニコニコ顔で二人とも喜んでくれたと言っていた。


 さらに話を聞いてみると、サーシャがあまりの美味しさに大興奮して作り方を聞いてきたそうだ。それで教えたらさっそく作り始めたらしい。その際におろし器は使わずにシルフに氷を削らせたのはさすがだと思ったよ。便利だよな精霊って。


 俺は明日サーシャはかき氷の食べ過ぎによる腹痛で弁当作りの手伝いを休むだろうなと思いつつ、二人にもうそろそろ寝ようと言ってそれぞれの部屋へと戻った。


 その際にミレイアの名を呼んで彼女の目を見つめた。


 俺の合図に気付いた彼女は恥ずかしそうな顔をして頷いてくれた。


 そして俺が部屋に戻り待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。俺が入っていいよと言うと、そこには黒いメイド服に身を包んだミレイアが立っていた。


 そんな彼女を俺は手招きして呼び寄せ、抱きしめた後キスをして立ったままご奉仕をお願いした。


 彼女はコクリと頷いて俺の部屋着のズボンに手をかけ、膝をついて口でご奉仕をしてくれた。その後もメイド服を着たまま俺の上に乗り、一生懸命腰を振ってご奉仕をしてくれた。


 俺はそんな彼女のエロい姿に大興奮しながら幸せな夜を過ごしたのだった。

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