第24話 ダークエ◯フ
門を潜りこちらへと向かってくるダークエルフの一行は、ここへ初めて来た他のハンターたちと同じく敷地内を驚いた表情で見渡しながら歩いてる。
ここから見る限りダークエルフは全部で5人。男性が4人に女性が一人のようだ。先頭の男性は片腕が無いように見える。
「ん? あの荷物を運んでいる茶色の動物……なんか変じゃないか? 」
俺はダークエルフたちが引き連れている、2体の牛のような生き物に違和感を覚えた。
なんだ? 何というか無機質な……
「ああ、あれは土の精霊魔法で作った土人形だ。ダークエルフは土で作った人形を戦闘や運搬に使うんだ」
「え!? 精霊魔法ってそんなに自由度があんのか! 凄いな……」
よく見ると足が義足っぽいダークエルフもいる。でもぎこちなくはあるが、杖なしでもちゃんと歩けている。恐らくあの義足も精霊が動かしているんだろう。
さすが意思のある精霊を操るだけはあるか。ギフトより遥かに自由度があるな。でもさすがに義腕までは難しいか。それにいくら歩けるといってもあの義足が戦闘時にどこまで動くかだよな。
ああ、だからBランク以上の者ばかりと言われるダークエルフが、このCランクの魔物ばかりのエリアに来たのかもな。
そんな風にダークエルフが来た目的を考察していると、彼らがマンションの入口にたどり着いた。
「驚いた……まさかこれほどの規模の物だったとはな。貴公が宿屋の主のリョウスケだな? 」
「いらっしゃいませ。はい。私がこの宿屋。マンションのオーナーの涼介です。本日はご宿泊でしょうか? 」
なぜか俺の名前を知っている隻腕のダークエルフの男性と、隣にいる女性の容姿に少し驚きつつもそう答えた。
これがダークエルフ……イメージ通りだな。
目の前で驚いたと言いながらも、表情をまったく変えない俺と同じくらいの歳に見える男性は、褐色の肌でダークグレーの髪をオールバックにしている超絶イケメンだ。
そしてその隣にいる20歳くらいの女性は、銀色の綺麗な髪を後ろでアップにまとめており、顔は切長の目にすっと伸びた鼻筋に見事な逆三角形の輪郭と恐ろしく整っている。
それに革鎧越しでもわかるほど胸が大きい。ミレイアほどは無いが、間違いなくD以上はあると思う。そのうえ尻も大きく腰はキュッと引き締まっていて、創作物などに出てくるダークエルフの女性そのままだった。
全体的に冷たい印象を受ける女性だが恐ろしく美人だ。健康的な褐色の肌にグラマーな身体をした美女とか……これは堪らないな。
「そうだ。西の森で野営をしていたら、あのバガンを打ち倒した者がいると聞いてな。その者がこの滅びの森で宿屋をやっているというので興味が湧いて来てみたが……まさかこんな所に小さな砦とも呼べるほどの物ができていたとはな。大地のギフトの相当な使い手とは聞いていたが、これは予想以上だ。それに先ほどから聞こえるこの音……楽団まで雇っているのか? 」
「そうでしたか。私はこういった土木工事は得意なんですよ。ああ、この音楽は魔道具です。音を記憶して再現するものなんです」
俺は有線放送のことをこの世界の人間でもわかるように説明した。
「音を記憶する魔道具……そんなものが……優秀な魔導技師であるというのも本当のことだったか」
そうダークエルフの男性が呟くと、隣にいた女性が口を開いた。
「フンッ、バガンを倒したことを否定しないのだな。本当に魔人と人族のハーフの貴様が竜人族の、しかもあのバガンを打ち倒したというのか? たとえこれほどの規模の砦を一人で作れるほどの優秀な大地のギフト使いだとしても、それで竜人族に勝てるとは思えん」
あらら、思いっきり見下してくれてるな。
まあ信じられないのはわかるけど、ここでぼかした言い方をしたらこの冷たい目と声でボロクソ言われそうだ。俺がドMならご褒美なんだろうけど、あいにくとそうじゃないんでな。
「疑うならあの辺にバガンの腕と足が埋まってますので確認しますか? ああ、でももう虫に食われてわからないか……角はどこに埋めたっけな……」
俺は疑うダークエルフの女性に、敷地の奥を指さしてそう言った。
角はバガンたちが帰ったあと適当に埋めたからな……どの辺か覚えてないんだよな。
「なっ!? バガンの腕と足を斬ったというのか!? しかも竜人族にとって大切な角もだと!? 嘘を言うのも大概に……いや、そこまで言うならば確かめてやろう。ノーム、頼む…………え? ある!? そ、そんな……この男が本当にバガンを……」
ダークエルフの女性は俺の言葉に驚き疑いつつも、地面に向けて何か話しかけた。そして少しして信じられないというような表情を俺に向けた。
なんだ? 掘り起こしてもいないのにわかるのか? あ、ノームって確か土の精霊の名前だったな。てことはさっきのは精霊に確認しに行かせたのか。そんなことまでできるのか……
「ククク、これは愉快だ。まさか本当だったとはな。リョウスケ殿。妹が失礼した」
隻腕の男性が口元を少しだけ緩めて笑ったあと、そう言って軽く頭を下げた。
「いえ、気にしないでください。しかし精霊魔法って凄いですね。地中にあるものまでわかるなんて」
「バガンの物ならな。奴とは因縁があってな……だが角まで失ったのならばもう表に出てくることはあるまい。リョウスケ殿には感謝せねばな」
「そうでしたか。いえ、実は私も間接的にですが因縁があったんです。ですので感謝されるには及びません」
あの馬鹿王子はあっちこっちで問題を起こしていたらしいからな。もしかしたらこの男の失った腕も奴が関わっているのかもしれない。
「そうか貴公も……フッ、ますます興味が湧いてきた。確か1週間単位での宿泊が義務付けられていると聞いた。大部屋が快適な割に異常に安いとも。その大部屋を1週間借りたいのだが空きはあるか? 」
「はい。空きはありますが、大部屋でよろしいのですか? 1Rのお部屋の内覧もできますが……」
いくら五体不満足とはいえ、これほどの精霊魔法を使える者たちだ。さすがにDランクの魔物を狩るというわけでは無いだろう。1Rに空きがあることだし、是非そっちを借りて欲しい。
「いや不要だ。我らは余裕がないのでな。極力宿代は抑えるようにしている」
「そうですか。これは失礼しました。大部屋も街の高級宿屋よりも住み心地が良いと言っていただいております。きっとご満足いただけるかと。ではご入居手続きの前に、いくつか当マンションでのルールを説明させていただきます」
俺は高い部屋を勧めたことを詫び、マンションのルールを説明した。
その間ダークエルフの女性が俺を観察するような目でずっと見ていたが、反応したらめんどくさそうな気がしたので気づかないフリをした。
そして注意事項の説明が終わり、ダークエルフたちも理解してくれたのでシュンランとミレイアのところで受付をしてもらえるよう誘導した。
その時に隻腕の男性がスーリオン。妹だという女性がクロースということがわかった。そしてやはり彼らはBランクのパーティだった。しかし怪我によってもう何年も西街の近くでCランクの魔物を狩り生計を立てているらしい。
「これが貸倉庫と女性専用の大部屋の鍵だ。男性の大部屋には鍵はない。金品などは貸倉庫に入れておくように」
「うむ。専用の倉庫を無料で貸してもらえるのは助かる」
ミレイアによる受付が終わりシュンランから鍵を受け取ったスーリオンは、そう言って後ろにいた仲間の男性に倉庫の鍵を渡した。鍵を渡された男性は土の牛を引き連れ倉庫へと向かっていった。
そしてスーリオンはクロースと残り二人の仲間を引き連れ、地下へと続く大部屋へと向かおうとした。
その時。
「強く生きよ。困ったことがあれば力になろう」
机に隠れているシュンランとミレイアの足もとに視線を送りながら、そう言葉を投げ掛けた。
「気持ちは嬉しいが、こんな身体でも私たちは幸せだ。涼介がいるからな」
「困るようなことはありません。涼介さんがそうならないようにしてくれていますから。ですがお気遣いありがとうございます」
「フッ、そうか……余計なことだったな」
シュンランとミレイアの言葉に、スーリオンは優しい眼差しを向けながらそう答えた。
だがスーリオンの隣にいたクロースは、俺がいる方へと振り向いて再び信じられないといった表情を向けた。
「クロース何をしている。行くぞ」
「あ、はい兄上……」
しかしスーリオンに促され、地下へと続く階段へと向かっていった。
なんだ? 何か驚くようなことがあったか?
でも机に隠れて見えないうえに膝掛けで隠しているのによく分かったな。ここにくる前に誰かからシュンランたちの足のことを聞いたのかね? それにしてはスーリオン以外は知らなかったっぽかったな。多分精霊が教えたのかもな。
なんか気難しそうな印象の男だったけど、シュンランたちを気遣ってくれるなんていい人だな。魔国の人間ということで少し身構えたが、マンションのルールも文句も言わず納得してくれたし帝国の客より好印象だ。
こういうお客さんなら大歓迎だ。ここは今後のためにも営業しておくか。
そう考えた俺はスーリオンの後を追い、1Rをサービスで1週間無料で貸すと伝えた。
しかしスーリオンは自分たちだけ特別扱いは受けられないと断ってきた。そんな彼に、なら女性である妹に使わせてあげれば良いと言って強引に鍵を渡したのだった。
無料で部屋を貸すと言って断られたのは初めてだ。
俺はそんな真面目なスーリオンを気に入ったのだった。
そしてその日の夜遅く。
「あっ……涼介……なんだか脱がせる手つきがやらしいぞ」
「そうかな? いつも通りだよ」
俺は脱衣所でお互いに膝をついた姿勢で、シュンランとキスをしながら彼女のシャツを脱がせた。
「涼介さんもうこんなに元気に……もう少し我慢していてくださいね」
俺の横では先に脱がせてあげたミレイアが、全裸で俺のズボンを下ろしながらそう言ったあと、パンツの上からペニグルに軽くキスをした。
「おふっ……さあシュンラン、下も脱ごう」
俺は股間に感じる刺激にムラムラとしながらシュンランの紐パンに手を掛け、その結び目を解いた。
それと同時にミレイアの手が俺のパンツに掛けられ、そのまま下へと下された。
そしてスッポンポンとなった彼女たちを一人ずつ抱き上げて浴室へと運び、これから楽しい洗いっこの時間だと股間を膨らませていたその時。
ピンポーン
部屋の呼び鈴が聞こえてきた。
「涼介、誰か来たようだ。恐らく今日入居したダークエルフだろう」
「こんな時間にか……大部屋なら他の利用者が教えてくれるはずなんだけどなぁ」
クロースが泊まることになった1Rならわかるけど、女性利用者はダリアの管理人室に行くことになっている。ということは今日入居したダークエルフの男たちがやってきたのだろう。
俺はこれから良いところだったのにと思いながら、素っ裸のままでリビングに向かい新設したテレビモニター付きインターホンの前に立った。
するとそこには銀色の髪を下ろした、ダークエルフの女性の顔が映し出されていた。
そう、クロースだ。
え? なんでこっちに来たんだ? 部屋の設備を説明する時にダリアが伝え忘れていたのか?
「はい、何かありましたか? 」
俺はとりあえず要件を聞こうとインターホンの通話のボタンを押した。
『私だ、クロースだ。その……良い部屋を貸してくれたことの礼をしに来た』
「そんな礼だなんて。他のお客さんにも以前やったことのあるサービスです。気にしないでください」
なんだ。わざわざ礼を言いに来たのか。スーリオンといい律儀な兄妹だな。
でも今は勘弁して欲しい。これからシュンランたちと3人でお楽しみタイムなんだ。
『そうだったのか、だが礼の品を渡してくるよう兄上に言われたのだ。ドアを開けてくれ』
「……お風呂に入るところだったので少しお待ちください」
俺は泣く泣く脱衣所に戻ってバスローブを羽織った。
そして玄関のドアを開けると、シャツと黒皮のショートパンツ姿のクロースが立っていた。
くっ……なんというムチムチした身体だ。背も170くらいありそうだしスタイル良すぎだろ。
俺はショートパンツから伸びる長い足と、シャツを大きく突き上げる胸を見て生唾を飲み込んだ。よく見ると胸の先端のぽっちも見える。
そんな俺の視線に気付いたのか、クロースはゾッとするような冷たい視線を俺に向け口を開いた。
「フンッ……私の身体に欲情しているのか? 貴様も他のオスと同じか」
「あ、失礼しました。とてもスタイルが良いので見惚れていました」
俺はつい見惚れてしまっていたことを素直に詫びた。
こんな薄着でやってきて見るなとか理不尽すぎる……
「兄上以外の男に褒められても嬉しくなどない。まあいい、まずは部屋の礼を言おう。今まで住んだことなないほどの素晴らしい部屋だった。あれほどの物を作れるなど、正直貴様の能力をみくびっていた。これは礼の品だ」
クロースはそう言って俺に小さな壺を渡した。
「これは? 」
「里に伝わる塗り薬だ。それを塗ると痒みが収まる。四肢を失った者は定期的に痒みが出るようだからな。兄上にも私が塗ってあげている。人族の街にあるものより効果が高いから塗ってやるといい」
「あ、ありがとうございます。助かります」
これは嬉しいな。クロースの言った通りシュンランとミレイアの足は定期的に痒みが出る。街で買ってきてもらった薬を塗っているが、そこまで効果は高くなかった。二人とも喜ぶだろうな。
スーリオンが彼女にこれを持っていくように言ったのか。なんという気の利く男なんだ。
「それで……貴様は受付にいた女たちとその……一緒に住んでいるらしいな? 」
「ええ、二人とも私の恋人なんです」
なんだ? 急に恥ずかしそうな口調になったぞ?
「部屋を案内してくれたダリアという女から、二人がオーガキングの群れに襲われ巣に連れていかれそうになった所を貴様が助けたと聞いた。それ以降ずっと一緒に住んでいるともな」
「はい、そうですがそれが何か? 」
この女性は何が聞きたいんだ? 俺がライフラインを人質に無理やり家で囲ってるとか言いがかりでもつけるつもりか?
そう内心でうんざりしていると、クロースは腕を胸元で組み顔を横に背けながら口を開いた。
「つ、つまりお前たちはもう……その……お、男と女の関係になっているというわけだな」
「ま、まあお互い好き合っていれば自然とそうなるんじゃないですか? 」
俺は答えにくいことをストレートで聞いてくるクロースに、遠回しに肯定した。
「!? つ、つまり貴様は足が無く身動きの取れない女を毎日好き放題弄んでいるのか!? 腕も縛り逃げれない状態にして、まるで物のように好き放題貪っているのだろう! 貴様がいなければ生きていけないからな。彼女たちは言うことを聞くしか……ハァハァ……ない。そんな彼女たちに貴様はその股間のモノから出る……ゴクッ……は、白濁の液体まみれにして愉悦に浸っているのだろう! そして自分だけ満足した貴様は彼女たちを放置して、トイレにも行かせずその場で……ハァハァ……も、漏らさせているのではないか? い、今も二人を白濁まみれにして……ハァハァ……んっ……している最中なのだろう! 」
俺の返答にクロースは、とんでもない事を口走りながら徐々に顔を紅潮させていった。そして組んでいた腕を解いて右手で胸を揉み始め、残る左手も股間に伸ばしモゾモゾと動かし始めた。
「え? え? ちょ、何を言って……」
俺はいきなり目の前で自慰を始めたクロースに混乱した。
な、なんだこの女……勝手に思い込んで興奮していきなり自慰を始めるとか……変態だ……この女はとんでもない変態だ!
「か、勘違いするな……貴様に興味などな……い……んくっ……ハァハァ……私は兄上のように勇敢で強い男以外に興味など……そんな男にならどのような恥辱を受けても悦び……い、いや! ただ貴様におもちゃにされている彼女たちの姿に興味……心配なのだ……わ、私に彼女たちが白濁まみ……無事なのか確認させろ! 縛られ鞭打たれて傷だらけで放置されている彼女たちを鑑賞……治療してやらねば! 」
「ご、誤解です! そんなこと俺はしてませんから! きょ、今日のところはもうこれで! 」
俺は言葉の節々に本音を紛れ込ませ、勝手に興奮して漏らしているんじゃないかってくらい太ももをびしょ濡れにさせているクロースの姿を前に、色気よりも恐怖を覚えドアを閉めようとした。
「あっ! 貴様逃げる気か! 」
「わっ! ちょっ! 足を退けてください! 」
しかしクロースは閉まろうとするドアに足を挟み阻んだ。
クロース《変態》からは逃げられない!
「な、中に入れろ! 彼女たちのあられも無い姿をこの目に焼き付……確認しなければ! 」
「や、やめてください! そんなことしてませんから! か、帰ってください! 」
俺はドアをこじ開けて中に入ろうとするクロースに必死に抵抗した。だがクロースは精霊魔法を使ったのか突然岩を出現させてドアに挟み、強引に中に入ろうとしてきた。
俺はもうこうなったら力づくて押し返すしかないなと、彼女を突き飛ばそうとしたその時。
「クロース! 何をしている! 」
地下の階段からスーリオンが現れクロースの名を呼んだ。
「あ、兄上!? な、なんでもありません」
兄の声が聞こえた途端にクロースはドアから離れ、乱れた服を整えながらそう答えた。
「帰りが遅いから心配して来てみれば……礼を言いに行ったはずのお前がなぜリョウスケ殿と押し問答をしているのだ! 」
「その……この男が身動きの取れない女を凌辱して……」
「してません。勝手に妄想して決めつけて。失礼ですよ」
俺は妄想を真実かのように言おうとしているクロースの言葉を遮り、怒り気味にそう言った。
「またか……リョウスケ殿申し訳ない。妹はこう見えてまだ17でな……色々と男女の知識を覚えてそれを拗らせてしまっているようなのだ。いつもは女性のハンターに言い寄っているのだが……まさか男を相手にこのような恥ずかしい真似をするとは……」
「17!? そ、そうだったんですか……色々と興味が湧く年頃ですからね。暴走することがあってもまあ仕方ない年代だと思います」
マジか! この身体で17かよ。その歳で男に囲まれてりゃ色々耳年増になって拗らせることもあるか。思春期だもんな。
「そう言ってもらえると助かる。今後は迷惑をかけないよう、言って聞かせるし目も離さないようにしよう。クロース、もうリョウスケ殿に迷惑をかけるな。これ以上一族の恥を晒すようであれば、里に戻さねばならなくなるぞ」
「さ、里に!? 嫌です! 兄上と離れるなんて嫌です! 」
「ならばリョウスケ殿に詫びて許しを得るのだ」
「……はい。リョウスケ殿……す、すまなかった」
「クロースさんが思っているようなことはしてませんから。それだけわかってもらえればいいです」
俺は兄に言われてイヤイヤ謝っている様子のクロースに、念を押すようにそう言った。
兄のいうことにはこんなに素直に聞くんだな。もしかしてブラコンなのか?
「リョウスケ殿、妹が迷惑を掛けた。では我らはこれで……クロース、部屋へ戻るぞ」
「はい、兄上」
クロースはシュンとした表情で、しかし俺の後ろにある部屋をチラチラと見ながらそれはもう名残惜しそうに部屋へと戻っていった。
「ふぅ……とんでもない女だったな……」
妄想してそれを思い込んで……しかも陵辱されている妄想とか……マゾの才能があるんだろうな。
超絶美人でムチムチの身体をしたダークエルフがMとか……本当ならご褒美なんだろうけど、あんな思い込みが激しくいきなり自慰を始めるような変態はゴメンだ。
あ〜、マジで怖かった。
困った顔をしているスーリオンがかわいそうだったから、一応年頃なら仕方ないとは言っておいたけどさ。いったいどう拗らせたらあんなになるんだよ。
俺はやっと閉めることができたドアを閉めながら、もう二度と関わりたくないと思っていた。
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