第7話 本オープン



 本オープン当日の昼頃。


 俺は1階の石扉のすぐ横にある広い1Rの管理人室で、シュンランとミレイアと一緒に昼食をとっていた。


 テーブルには俺が開発(パクリ)して名付けた『クロクマバーガー』とサラダが三人分置かれている。


 クロクマバーガーは、焼いたクロワッサンに火熊の肉を挟んだものだ。クロワッサンと火熊だからクロクマだ。それが各皿に三つ置かれている。


 え? クロワッサンは食べてからでないと、カバンに追加されないんじゃなかったかって? 


 そう、確かに今までは一人が食べてから次のクロワッサンをカバンから取り出して、肉や山菜を挟んで次の人が食べていた。


 でもこの間。たまには焼いたパンも食べたいなと思って焼いたら、テーブルの横に吊るしていたカバンにもう一個クロワッサンが現れた。


 あの時はミレイアが気付いて俺に見せてくれてさ、そりゃもう『ええ!?』って感じでビックリした。


 そして新しく現れたクロワッサンも焼いてみたら、またカバンにパンが現れた。どうやら焼いたら食べたことになるみたいだ。


 食べたという判定基準かはイマイチわからないけど、恐らく熱によっての変質かなんかじゃないかと思う。食べたら胃酸で溶かされて変質するからとかそんな感じかも。


 もっと早く気づいていれば、毎朝面倒ことしなくて済んだのにな。


 そんなクロクマバーガーとサラダを三人で談笑しながらを食べ終わると、隣に座るミレイアがタオルで俺の口もとを拭いてくれた。


 なんというか子供扱いされてるみたいで恥ずかしいんだけど、ニコニコしながら拭うミレイアを見てるとやめてくれとも言えず毎回好きなようにさせている。


 そしてみんなで果実水を飲んでのんびりしていると、テーブルに置いていた魔物探知機の端に数十個の青い点が現れた。


「お? 来たみたいだよ。あと30分もすればここに着くと思う」


「そうか。いよいよ本オープンだな」


 シュンランは飲んでいた果実水を置き、笑みを浮かべている。ミレイアも嬉しそうだ。


「来られたのはレフさんでしょうか? カルラさんでしょうか? 」


「50人以上いるから多分カルラさんだと思う」


 人族のパーティは獣人の倍近くいるからな。獣人は基本5人か6人パーティ+荷物持ちが1人か2人だ。いくらレフさんがたくさん連れてくると言っていたとしても、流石に7パーティは連れて来れないだろう。


「ふふふ、賑やかになりそうですね。では食器を片付けて受付の準備をしますね」


 ミレイアはそう言ってニコニコしながらお盆にパンとサラダの皿を乗せていき、手すりをつたいながらキッチンへと向かっていった。


「フフフ、ミレイアは楽しそうだな」


「またカルラさんたちと色々話せるのが嬉しいんじゃないかな。シュンランもそうだろ? 」


 前回は真面目そうな荷物持ちの女性と意気投合していたし。


「そうだな。ベラもそうだが、カルラのパーティにも気の合う者がいるしな。さて、私はミレイアを手伝ってくる。涼介は先に外に行っていてくれ」


「ああ、鍵とお釣りの確認をしておくよ。二人も外は寒いから厚着をして出るようにな」


 俺はシュンランにそう言ったあと玄関で靴を履き外に出た。


 今日は知らない人がたくさん来るからな。二人には厚着をしてもらわないと。特にミレイアは、知らない男の視線を感じながら受付をやるのは苦痛だろうからな。俺も他の男にミレイアがエロい目でみられるのは嫌だし。


 そんなことを考えながら管理人室を出た俺は、すぐ目の前に設置した入居受付用の机の前に立った。


 これはパソコン机を2つ並べたものだ。この机は引き出しもたくさん付いているし、反対側から足もとも見えない。これなら人の視線を気にすることなく、シュンランたちも入居受付ができるだろう。


 俺は一番手前のミレイアの机の引き出しを開け、皮袋に入っているお釣り用の小銀貨と銀貨を確認した。そして次に隣の机の引き出しを開け、1Rの各部屋の鍵がちゃんと入っているかも確認した。


 部屋の鍵には木製の札に部屋番号が彫られている。シュンランとミレイアにより花の彫刻も彫られており、可愛い札に仕上がっている。


 お釣りと鍵を確認したあとは、神殿の石扉を開けた。今日はレフさんとカルラさんが来る日なので、壁の東門は開けっ放しにしてあるし橋も朝から架けっぱなしだ。


 石扉を開け終えると、洗い物を終えた二人が管理人室から出てきて受付の机についた。


 そのタイミングで、東門から満面の笑みを浮かべたカルラさんの姿が見えた。


「おーい! リョウスケー! 連れてきたぞーー! 」


「あはは、相変わらず元気な人だな」


 俺は手をブンブン振り、こっちに向かってくるカルラさんに小さく手を振り返しながらそう呟いた。


 カルラさんの後ろには、同じく笑みを浮かべている棘の戦女の女性たちと、驚いた表情で敷地内をキョロキョロ見ている人族のハンターたちが続いていた。


「フフッ、どうやらたくさん連れてきてくれたようだな」


「ここに来れるお客様はみなさんDランク(ブロンズランク)以上になりますから、きっと長期滞在してくれると思います」


 シュンランもミレイアも、たくさんお客さんが来て嬉しそうだ。


 みんなで作ったマンションだからな。俺が狩りに行っている間。二人は家事をしながら部屋のプレート作りに門作りに、鍵の木札作りに宿帳の作成や消耗品の整理に管理と毎日忙しくしていた。


 たくさんのお客さんに利用してもらい、満足してもらえたなら頑張った甲斐があるというものだ。


「確かにミレイアの言うとおり、Dランクの魔物ならいくらでもいるしね。魔物の素材を持ち帰れるギリギリの量になるまで滞在してくれると思うよ」


 神殿の周囲は女神のチュートリアル用の結界。といっても恐らく強い魔物が近寄りたくなくなる程度の物だと思うが、そういうのが張られていてEやFランクの魔物しかいない。


 しかし1時間も離れれば、北以外はDランクの魔物だらけだ。今後たとえ満室になるほどハンターが来たとしても、狩り場に困ることはないだろう。


 ベラさんたちはCランクの魔物がいる北に行くだろうしな。北西なら俺は手をつけていないから、すぐに魔物を見つけられるはずだ。


 ちなみに群れのボス以外のBランクの魔物は、飛行系を除きさらに北に10日ほど行くといるようだ。さすがの俺もオーガキングみたいなのが、群れでうろついてるような所に行くつもりはない。まだ力不足だし、シュンランたちを置いて10日もマンションを空けられるわけがないし。


 そんなことを考えていると、カルラさんたちが神殿入口にたどり着いた。


「やっと着いた! 石畳の道がいつの間にかできててビックリしたぜ! アレも涼介がやったのか? よくこの短期間で作れたな。うん! よくやったリョウスケ! これで次から荷車を引いてこれるぜ! 」


「あはは、道はがんばって作りました。皆さんに長く滞在していただきたかったので」


 ベラさんに肩をバンバン叩かれながら、俺の目線は彼女の革鎧の胸元から見える白い谷間に釘付けになっていた。


 前より胸もとが大きく開いてないか? しかしなんというボリューム。挟まれたい、是非とも挟まれてみたい。


「へへへ、リョウスケのおかげでCランク(シルバーランク)になったからな。依頼も高額なのを受けてきたし、二週間はいれるぜ! 」


「それは良かったです。是非今後ともここを拠点にしてください」


「もう拠点だって! いや、ここがアタシたちの家だな! 」


「もうカルラったら、子供みたいにはしゃいで……リョウスケさん10日ぶりです。南街で休暇中だった評判の良いDランクのパーティを、3パーティほど連れてきました」


「サラさんありがとうございます。お客さんを連れてきてくれて感謝します。そちらの皆さんもようこそ『滅びの森のフジワラマンション』へ。当マンションの従業員一同。皆様のお越しを心より歓迎いたします」


 最初あった時とは違い穏やかな表情のサラさんにお礼を言ったあと、その後ろにいる30人ほどの男女に俺とシュンランたちは頭を下げて迎えた。


 マンション名が俺の名前なのはスルーしてくれ。良いのが思いつかなかったんだ。


 しかしさすがカルラさんたちが連れてきたパーティなだけあって女性が多い。男なんて荷物持ちを含めても10人くらいしかいないぞ?


 新規のお客さんを見てそんなことを考えていると、カルラさんの後ろにいた20代半ばくらいのセミロングの金髪の女性が口を開いた。


「あ、ああ……こちらこそ世話になるよ。しかし聞いてはいたけど、こんな所に宿……あっと、まんしょんて言うんだっけ? そんなものを本当に作るとはね。あの壁はアンタが作ったのか? 」


「ええ、ギフトで作りました」


「ギフトって大地のかい……アンタとんでもないギフト使いだね。しかも魔導技師でもあるんだって? カルラとサラから話は聞いてはいるよ。でも本当に用を足すのが楽しくなるトイレや、貴族が入るような風呂に保冷や温風の魔道具なんてのがあるのかい? 」


「ええ、きっと見たこともない設備がたくさんあると思いますよ」


 俺は半信半疑といった感じの女性に、自身ありげに答えた。


「見たこともない設備ねぇ……」


「まだ疑ってんのかよ。リョウスケ、一度部屋を見せてやったらどうだ? アタシが案内して来てやるからよ」


「うーん……そうですね。でしたらカルラさんお願いできますか? 」


 俺はカルラさんの言葉に甘えることにして、シュンランから数部屋の鍵をもらい彼女に渡した。


「あいよ! みんなで案内してくる! ついでに設備の説明もしておくから、サラは入居手続きをしといてくれよ。早く風呂に入りてえんだ」


「ええ、わかったわ」


「んじゃ行くか! イシシシ! みんなの驚く顔が目に浮かぶぜ」


 カルラさんはそう言って皆を連れて階段を降りていった。


 本当に楽しそうだなカルラさんは。


「それじゃあサラさん。ミレイアの所で入居の手続きをお願いします」


「ええ、それじゃあミレイア。お願いできるかしら」


「はい、サラさん。まずは最初に皆さんのハンター証を提示していただくのですが、棘の戦女の皆さんはよく知っている方なので免除させていただきます。差別禁止やハンターの方へ迷惑をかけないなど、マンション利用時のの注意事項も説明も皆さんなら問題ないので省略させていただきます。お部屋は前回と同じでよろしいでしょうか? 滞在期間はどのくらいになされますか? 」


「ありがとうございます。今回は前回利用させてもらった1Rを6部屋と、女性用の大部屋をお願いします。滞在期間は2週間でお願いします」


 ミレイアはサラさんの話を聞きながら、紙を束ねて作った台帳に鉛筆で記入していった。この紙と鉛筆は防災避難セットに入っていた物だ。


 どうやら今回カルラさんのパーティは、1Rに二人入居するようだ。半額ということと前回かなり稼いだこともあり、12名の戦士全員が1Rに住むみたいだ。


 手続きの途中で大部屋を借りる5人の荷物持ちの子を1Rに入れても良いかと聞かれたので、寝泊まりする以外は部屋の出入りは自由だから問題ないと答えた。そしたらホッとした顔をしていたよ。


 ちなみに定員30名の大部屋は、男性用と女性用がある。3つは男性用で、1つは女性用だ。


 そして部屋を決めた後は会計となった。


 通常1Rは1泊銀貨1枚(1万円)だ。二人入居なら小銀貨5枚(五千円)が割増になる。


 カルラさんのパーティはそれが6部屋で合計銀貨9枚になるが、彼女たちは半額対象パーティなので銀貨4枚と小銀貨5枚となる。


 それプラス小銀貨1枚の大部屋が5人分で小銀貨5枚。これは半額対象外なので、1Rと大部屋合わせて合計1泊銀貨5枚となる。


 それら全ての部屋を2週間14日借りてもらうので、全部で銀貨70枚(もしくは金貨7枚)が部屋の賃料だ。


 さらに1Rはこれに退去時の清掃費用として1部屋小銀貨5枚が掛かる。6部屋借りるカルラさんたちは、清掃費用として銀貨3枚がプラスされる。全部で銀貨73枚。73万円ってとこだな。


「では金貨7枚に銀貨3枚となります。現金と魔石どちらでお支払いされますか? 魔石でお支払いいただける場合は、本日のご宿泊はサービスさせていただきます」


「え? いいのですか? 魔石はもともと前回魔石で払って欲しいと聞いていたので用意してあります。ですがただでさえ半額にしていただいているのに、そこまでサービスして頂けるなんて」


「気にしないでください。魔石払いをしていただいた方がこちらも助かるので」


 こっちとしてもかさばらない魔石で払って欲しいからな。


 実は間取り図のギフトの裏技で、例えば2LDKの間取り図を作った時に、実行ボタンさえ押さなければいくらでも魔石が入ることがわかったんだ。


 そして実行ボタンを押して部屋を創造しても、余った魔石が次の間取り図作成画面に引き継がれることも。さらには間取り図の作成を途中でキャンセルしたら、入れた魔石が吐き出されることも。


 だったら荷物にならない魔石がいいに決まっている。現金は重いし荷物になるから、ここを引き払って逃げるようなことになった時に邪魔になる。魔石を貯めるだけ貯めて、街で一気に換金した方が安全だ。


 それでも現金が貯まったら、ここでハンターが持っている魔石を換金してやればいいしな。


 ちなみに魔石の換金率は以下の通りだ。


 Fランク魔石ー銅貨5枚(五百円) 

 Eランク魔石ー小銀貨5枚(五千円)

 Dランク魔石ー銀貨1枚(1万円)

 Cランク魔石ー銀貨5枚(5万円) 

 Bランク魔石ー金貨1枚(10万円)  

 Aランク魔石ー白金貨1枚(100万円) 


 Fランク魔石が異常に安いのは、無属性の魔石だかららしい。これは他の色付きの地水火風の属性の魔石と違い、使い道があまりない魔石なんだそうだ。Eランク以上からは何かしらの属性が付いているから価格が跳ね上がるそうだ。


 まあ角兎とか素材が高く売れるから、Fランクのハンターでもなんとか生活はできる。Eランクでやっと普通の生活ってとこで、貯蓄する余裕ができるのはDランクからのようだ。Cランクになればかなり豪勢な生活ができるそうだ。素材の価格が跳ね上がるからだろうな。



「ありがとうございます。初日の滞在費が無料になるのは助かります。ではCランク魔石でお支払いします」


「はい。Cランク魔石15個、確かにいただきました。では隣で1Rのお部屋の鍵をお受け取りください」


 サラさんはミレイアの指示通りシュンランの机に移動し、彼女から鍵の取り扱いの説明を受けてから1R6部屋分の鍵と大部屋の鍵を受け取った。


 大部屋の鍵は女性用にしか付けていない。貴重品は持ち歩くか、管理人室で預かることもできる。常に誰かが住んでいるだろうから清掃もうちではしない。その代わり各パーティで一人清掃担当を出してもらう。


 清掃担当者は床の清掃にトイレやシャワー室の清掃をしてもらい、シャワー室のシャンプーやトイレの紙が切れたら管理人室に取りに来てもらう。抜き打ちで室内検査をするので、部屋があまりに汚かったらその時の利用者は全員が次に利用する際は割増料金になる。


 街の大部屋並に安いからな。これくらいはして欲しい。


 シュンランから部屋と倉庫の鍵を受け取ったサラさんは、外は冷えるのでカルラさんが戻ってくるまでエアコンで暖かくなっている管理人室に誘った。


 そして4人でお茶をして30分ほど談笑していると、カルラさんが外から呼ぶ声がした。


 案内が終わったかと皆で管理人室から出ると、カルラさんが楽しそうな顔をして待っていた。


「終わったぜリョウスケ! いやぁ面白かった! みんなぶったまげてたぜ! な? アタシの言った通りだったろ? 」


「ほんと驚いた。部屋は綺麗で清潔だし、それになんだい? あのとんでもない魔導具は……リョウスケだっけ? 疑って悪かったね。アンタとんでもない魔導技師だわ」


「ありがとうございます。靴を脱いで入ることは大丈夫そうですか? 」


 俺は先ほどの態度を謝る金髪のセミロングの女性に、靴を脱いで部屋に入ることに抵抗はないか確認した。レフさんたちは最初めんどくさがってたからな。


「あんなに綺麗な部屋だし納得だね。入り口も広いし部屋用の履き物もあったし問題ないね」


「それは良かったです。それでお部屋はどうします? 」


「そうだね……ワンルームという部屋を借りたいけど、一週間単位で前払いだとちょっと厳しいね。残念だけど今回は大部屋にするよ。あのシャワーというお湯が出る筒にいい匂いのする石鹸と、不思議なトイレに部屋を暖かくする魔導具もあるしね。大部屋でも街の1泊銀貨3枚の宿より上等だから個室じゃなくても十分さ」


「そうですか……他のパーティの皆さんも? 」


「ああ、うちもそうなるな。風呂ってのに入ってみたかったけどな」


「残念だけど今回はうちもそうなるわ。でも女性だけの大部屋なら安心だしね」


 俺が他のパーティの人にも確認すると、リーダーらしき20代後半くらいのイケメンの男性と、20代後半の大柄な女性がそう答えた。


 うーん……各パーティで1部屋くらいは1Rを借りてくれると思ったんだけどな。人族のパーティは人数が多い分、思ったより余裕がないんだな。


 なら仕方ない、サービスするか。


「でしたらカルラさんのご紹介ですし、オープン記念ということで特別に各パーティに1Rを1部屋一週間無料でお貸しします。皆さんで日替わりで使ってみてください。是非1Rの住み心地を体験して、お知り合いに当マンションの魅力をお伝えください」


 このままだとレフさんたちが来ても部屋は余るだろうしな。だったら宣伝費だと思って無料で貸した方がいい。


「え!? いいのかい!? 」


「それは嬉しいな。なんて気前がいい店主なんだ」


「やった! みんな! あの部屋に住めるってよ! 」


「「「「「きゃあぁぁ♪ 」」」」」


「お風呂よ! 貴族様みたいに部屋でお風呂に入れるわ! 」


「あのシャンプーというのを早く試したい! カルラの髪がサラサラなんだもん。私も早く使ってみたい」


「ははは、遠慮なくお使いください。ではミレイアが入居の受付をいたしますので、こちらでお手続きをお願いします」


 俺は喜び大騒ぎする集団に、ミレイアのところで受付をするように促した。


「ああ、わかった! うちから頼むよ! 」


「なかなかやるなリョウスケ。んじゃアタシたちは先に下に行ってるわ! みんな! 風呂に入ってあったまろうぜ! 」


「「「「「はいっ♪ 」」」」」


 カルラさんはサラさんの腕を取り、パーティメンバーたちを引き連れ階段へと走っていった。


 いやぁ彼女たちが設備の説明をしてくれて助かった。まあそれでも夜に呼び出されるんだろうけど。


「で、では当マンションの説明をさせていただきます……」


 それからミレイアが荷物持ちを含め全部で35人のハンターたちを相手に、テンパりながらも受付をしていくのだった。


 そしてやっと受付が終わり、管理人室で疲れた顔をしているミレイアの肩を揉んであげてたりして陽も落ちようとする頃。


 レフさんが30人近くの獣人の男女たちを引き連れ、マンションへとやってきた。


 どうやら4パーティも連れてきてくれたようで、そのうちの1パーティはCランクパーティだった。


 そして残りの3パーティはオーク討伐部隊にいた人たちで、あの時に石のドームを作ったことと治癒水を譲ったことのお礼を言われた。


 その後はシュンランと面識のある狐耳の女性を筆頭に、皆がシュンランとミレイアが無事だったことを祝福してくれた。


 そんな彼ら4パーティと荷物持ちを含めた28人は、とりあえず一週間滞在してどれだけ稼げるか様子を見ると言っていた。


 それで部屋をどうするか迷っている彼らに、内覧を提案したら是非見たいと返事が返ってきた。それならとレフさんたちには入居受付をしてもらい、今度は俺が案内した。


 その結果、Cランクパーティの5人は全員が1Rを借りたいと言ってくれた。さすがシルバーランクなだけあってリッチだ。


 Dランクパーティの皆は、想定通り1部屋だけ1Rを借りてくれて残りは大部屋だった。そこでカルラさんの連れてきてくれたお客さんと不公平にならないよう、Cランパーティも含め全部のパーティに1Rを1部屋無料で貸すことにした。


 もちろんみんな喜んでくれたよ。


 レフさんたちも今回は荷物持ちの子がミリーとコニーの部屋に同居するらしく、二人入居の1Rを3部屋と一人入居の部屋1部屋を借りてくれることになった。前回滞在した時の稼ぎがかなり良くて、これでも収入が今までよりも増えるそうだ。


 借りる部屋を決めた後は受付を今度はシュンランにしてもらい、ミレイアが鍵の受け渡しを担当した。獣人のハンターということで、顔見知りが多かったから二人ともやりやすそうだった。


 そして全員に鍵を渡し終え、入居受付を終えたのだった。ミリーなんて部屋の鍵を頭上に掲げて、風呂ニャ! って言ってスキップしながら階段を降りていっていた。


 なんだかんだて28部屋中20部屋が埋まった。


 魔石も先払いで大量に手に入ったので、すぐにまた部屋を増やせる。あとは新規のお客さんの滞在中の稼ぎと満足度を見てから、1階にも部屋を作るか考えようと思う。


 その辺はまたシュンランとミレイアと相談だな。


 こうして俺たちは、フジワラマンションのオープン初日のお客さんを無事迎えたのだった。


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