おまけ

ドアを開け仕事部屋へ足を踏み入れるとイーゼルに1枚のキャンパスが立てかけられていた。足を進めそのキャンパスを手に取る。そこに描かれていたのは、暖かな太陽と澄み渡る青空、一面を覆うひまわり畑と風に飛ばされて宙を舞う麦わら帽子。それとそれを追う男性。


「あの日の想い出」


後ろからそう言われ顔だけで振り返る。


「ってタイトルにしようと思うんだけどどう?」

「いいんじゃない?――この人ってさ」


俺は麦わら帽子を追う男性を指差した。


「そう描き足したの。これで更によくなった。完成ってやつね」

「ちなみにこれって誰?」

「さぁ?」


わざとらしく肩をすくめながらそう答える夏希。


「それより早く行こっ」


そう言うとオーバーオール姿の彼女は片手に麦わら帽子を持ったまま部屋を出て行った。


「まぁいっか」


俺もそう呟くとイーゼルにキャンパスを戻し彼女の後を追った。



                                  END1

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愛の成分表 佐武ろく @satake_roku

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